005――GODZILLA 星を喰う者(アニメ映画)

あらすじ

 「人類はゴジラに勝てない」メカゴジラの敗北によって人類はゴジラに打ち勝つ手段を失った。自らゴジラへ挑む最前線に立ちながらユウコを救うためにメカゴジラとの融合を拒絶し、敗北を招いてしまったハルオは苦悩していた。しかし仲間であり、異星人エクシフであるメトフィエスはそれを否定する。「君が神――ギドラを崇め、その身を捧げれば」と。同時にフツワの地下洞窟生活を送る生き残ったメンバーたちはゴジラへの絶望からエクシフの信仰、彼らが崇める神――ギドラを信仰し始める者たちが続出し、メトフィエスの元に人々は集まっていく。もはやハルオはゴジラを打倒する英雄ではなく、祭壇への供物でしかなかった。そしてすべての準備が揃った時、メトフィエスが動き始める。



概要

 アニメーションとして制作されたゴジラ三部作の最終章。

 監督は『シドニアの騎士』でも監督を務めた静野孔文と『BLAME!』で監督を務めた瀬下寛之の二人。原案・脚本・シリーズ構成は『魔法少女まどか☆マギカ』ではシリーズ構成と脚本、特撮系列では『仮面ライダー鎧武』で脚本を務めた虚淵玄。制作は『シドニアの騎士』『亜人』『BLAME!』のポリゴン・ピクチュアズ。


 ゴジラ、特撮、アニメが好きな人間としては絶対にフォローしておきたかった今作。もちろん前二作もしっかりと劇場で観させてもらったが、いままでのゴジラ映画とはまた違う攻めどころをいく作品で非常に見ていて興味深かった。

 そのうえで今作を見た感想としては意見が真っ二つに分かれるものだと思う。


 まず今作はゴジラ映画というよりはSF的な設定と哲学的な部分、さらにハルオの葛藤に重きが置かれており、純粋な怪獣映画を楽しみたい人からすれば少しズレた感じを覚えるだろう。

 前二作はゴジラを倒すという目的が明確化されていたし、紆余曲折はあれどハルオたち人間側にもそれを可能、もしくはその望みを抱けるような物理的な手段とそれに基づいた戦術があった。しかし前作で最大の切り札であったメカゴジラシティの崩壊によって、人類側にはもはやゴジラに対抗できる術がなくなっている。その時点から物語が始まるのだから、そこから考えれば今作が前二作とかなり気色が違ってくることがお分りいただけるだろう。

 そしてゴジラを倒す物理的な手段の喪失という空白に入り込んでくるものこそ、ギドラという別次元の存在であり、それに付随するハルオの「ゴジラを倒すために自らの命まで捧げられるか」という葛藤なのである。


 しかしこのギドラという存在が今作ではネックになっている。まず本編でギドラは三つ首の部分しか登場せず、特撮でお馴染みのあの金色に輝く胴体や翼は登場しないのである。実際には3Dモデリングの時点で胴体や翼を含めたギドラの全身は描かれているのだが、長年ゴジラのライバルとして登場してきたキングギドラのイメージを持つ人間としては非常に似ても似つかない造形には少し違和感を抱いた。パンプレットで見たギドラの全身像も非常にクオリティが高かったので個人的には是非とも全身を現して欲しかったものである。


 そして物語面ではこのギドラに噛みつかれエネルギーを奪われるゴジラの戦いと今作のラスボスとも言えるメトフィエスと彼に取り込まれそうになるハルオの戦いがリンクして語られるのだが、そのリンクが少しわかりにくく感じた。両者の戦いが繋がっているのは理解できる。実際ハルオがメトフィエスに取り込まれればゴジラはギドラに敗北し、ギドラは星を喰い尽くすことになるのは作中内で説明されていたが、そのリンクが論理や設定という形での解説のベールに包まれてしまって感情的にうまく入ってこず、物語としてストンと頭に落としこめないのである。

 さらに言えばラストのハルオの選択も理解はできるが納得がしにくく、あれだけ「生きて繋ぐことこそ本当の勝利」だということを前面に押し出しているのなら、これから先を生きる者たちを見届け、託していって欲しかったところで、(それを捨てるという選択もあるだろうが)そこが感情的には納得できない部分であった。


 もちろんこの意見の差異はこれまでに触れてきた作品やその人が作品をどう見るかというスタンスによる違いだけで、面白いというところは変わりないはずである。

 個人的に観てもハルオへの追い込みやそれによる葛藤の深みがあるので、作品を見る上では非常に感情移入してみることができるし、全三部作を合わせていえば非常に完成度の高い物語になっている。

 これだけの内容の作品群を一年で三作すべて公開するというのはなかなかにハードなことではないだろうか。



ストーリーライン

フェーズ1

 ・ユウコが脳死状態であることを告げられるハルオ

 ・生き残ったメンバーの多くがメトフィエスのエクシフの信仰を崇め始める

 ・メトフィエスがハルオに「神(ギドラ)がゴジラを倒す」と自らの目的を語る


第1プロットポイント

 ・メトフィエスに利用され続けることを危惧したマーティン博士の勧めで一時的にミアナの元で生活するハルオ


フェーズ2

 ・ハルオが自分を助けてくれたのがミアナではなくマイナであることに気づく

 ・ミアナがメトフィエスと対峙し、テレパス能力があることを暴くがギドラの幻影を見せられ捕まる

 ・ハルオが悪夢から目覚め、共に眠っていたマイナの言葉からミアナの危機とメトフィエスが何か企んでいることを悟る

 ・メトフィエスたちの策略によって儀式が行われ、取り込んだメンバーを糧にギドラが現れる

 ・ギドラによってアラトラム号が破壊される

 ・ゴジラが地球に現れたギドラに熱線を放つが通じず噛みつかれ、エネルギーを吸い取られる

 ・ハルオがメトフィエスと対峙するが取り込まれかける

 ・ゴジラが体内放射を試みるが、その熱すらもギドラに吸収される

 ・マイナとマーティン博士がモスラの力を借りてハルオに語りかける


第2プロットポイント

 ・ハルオがメトフィエスの洗脳から脱し、彼の右目の石を破壊。同時にギドラがこちら側の物理法則に捕らわれた隙を突いてゴジラがギドラを倒す


フェーズ3

 ・ハルオたちがフツワとの共同生活を送り始める

 ・マーティン博士がヴァルチャーの起動に成功し、同時にハルオがメトフィエスの幻聴を聞く

 ・ハルオがユウコと共にヴァルチャーで飛びたち、ゴジラに特攻を仕掛ける

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