008――女生徒(小説)

あらすじ

 あさ、目をさますときの気持ちは、面白い。目を覚ました少女は朝のまどろみの中で思う。他にもいろいろなことを思う。自分のこと、他人のこと、周りの景色のこと。身支度をしながら、電車に乗りながら、友人と話しながら、夕食を作りながら少女はそういった様々なことを考える。これはそんな平凡でなんでもない少女の一日。



概要

 太宰治の短編を集めた短編集の表題作。

 今回は初の文学作品ということですが、実はやる前から文学作品に三幕構成が有効なのかという疑問がありました。ですが悩むよりまずはやってみようということで分解してみたわけですが、結論としては女学生の一日を淡々と書いたこの作品に関しては三幕構成はあまり当てはまりませんでした(一応下では分けていますが正直アテにはなってません)。なので今回は作品を読んだ上での感想を重視して書かせていただきます。


 さて、今作を読んだ個人的感想としては面白かったです。

 文学作品なのでエンタメ小説のような緩急で読者を引き込んだり、謎やサスペンスでドキドキさせるということはありませんが、どうでもいいことに嫌気がさしたり、些細なことに苛立ってムカついたり、ちょっとしたことに気分をうきうきさせてなんだかそれがバカなことに思えて後悔したりと、青春時代、誰しもが一度は思ったりやってしまったりしたことが情緒を持って女生徒の視点で語られるので男性ながら読んでいて共感できました。


 そしてそんな情緒ある語り口で共感を覚えさせつつも、時々毒のある含みが混ぜられているのも作者の心持ちが現れているように感じます。太宰治といえば『人間失格』『斜陽』といった教科書にも載るほどの代表作に比べればマイナーな作品かもしれませんが、ファンでなくとも共感はできる内容なので本屋で見たときは是非手にとってみてください。表紙の絵も綺麗なので(笑)。



ストーリーライン

フェーズ1

 ・主人公が朝の身支度をする(その中で朝起きることや自分自身について一人語る)

 ・主人公が電車で学校へと登校する

 ・主人公の学校での様子


第1プロットポイント

 ・放課後、同級生と一緒に髪を切ってもらい、共に語らった後、バスに乗る


フェーズ2

 ・バスから降りて帰り道をはじめて田舎にやってきた人のように振る舞いながら帰る

 ・帰宅し、手を洗いながら北海道の姉を思う

 ・夕食の準備をし、客人と共に食べる

第2プロットポイント

 ・母親が客人を送っていき、ポストに入っていた手紙から同じ年の失明した青年を思う

フェーズ3

 ・風呂に入り、上がってから父親と散歩したことを思い出す

 ・帰ってきた母親から観たかった映画を観に行っていいと言われて喜ぶ主人公

 ・洗濯をしながら物思いに耽る

 ・布団に入り主人公が眠る

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