深緑の泉
水浅葱
第1話 プロローグ
深い深い森の中、少年が走る。
粗末な服は少年の暮らしを思わせ、身体中の傷と火傷は災いに巻き込まれたと一目で分かった。
人が立ち入る事が無い森。その最深部に隠された国があるという。
その国の更に奥にある泉に行けば何でも願いを叶えてくれる奇跡を授かれると聞いた。
聞いた時はお伽噺だと鼻で笑ったが、今少年はそれを目指していた。
「ちくしょう」
流れる血は乾いて肌にこびりついて、皮膚をひっぱり痛い。
「んがっ」
少年は生きたい、ではなく、
「死んでたまるか」
と絶叫した。
こんなところで、こんなままで。
そんな想いだけ抱えて燃えていく街を脱出した。
世界は何もかも裏切る。
この世は生まれが全てを決める。
生まれた時に持たされた持ち札で決まる。
その出鱈目な賭けに自分は初手から負けて負けて負け続けていたが諦めてはいなかった。
この手に握らされた持ち札がどれだけ貧弱で不公平でも。
自分から放棄などせず、最後まで勝負を挑み続けて握るのだ。
奇跡でも何でもいい。法螺話でも俺は、掴むんだ。
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