第10話
19歳のお誕生日
遼くんと思い出の遊園地へ行った
あの時と同じように私達は
観覧車に乗った
「遼くん、私ね、毎年お誕生日にママからのお手紙をもらうの」
「ママ...って」
「そう、もういないんだけどね、
亡くなる前に書いておいてくれたものらしいの。
今朝、6通目のお手紙をもらった」
「そっか」
「ママのお手紙には1つずつ願い事を書いてあるの。
ずっと、私はその通りにやってきたんだ」
「偉いじゃん。
愛美のお母さんは愛美が素敵な女性になるように、願いを込めてその手紙を書いたんだろうな」
「なれてるのかな...
私はママが思ったような人に...」
「それはさ、きっと...
なれてるとかなれてないとか、そんなことより、愛美がしっかりとその願いを叶えようと頑張ってる姿をお母さんが空から見てくれてるんだよ」
観覧車が頂上に着いた時、
遼くんが空を指差して微笑んだ
「うん、きっと、そうだね」
夕焼け空はとっても温かく私達を包んでくれているようで、私もニッコリ微笑んだ
そんな私の肩を抱き寄せて、瞼に遼くんの唇が触れた
「遼くん、クスクス、ママ...見てるよ」
いたずらっぽく言うと彼は余裕な顔つきで答えた
「それは大丈夫」
空をオレンジ色に染めていたお日様が水平線に沈んでしまい、辺りは一気に薄暗くなった
「あっ...」
「ほらね、見えないよ」
ゆっくり重ねられた唇は離れる度に
焦るように再び重ねられる
「愛美、
お誕生日おめでとう」
彼の肩越しに見える夜景が眩い程に目に映る
降りていくゴンドラの速度がもう少しゆっくりになればいいのにと思ってた
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