#7 うみでせいしゅんのにはくみっか

第27話 ~ばろい くっぱいにっく~ (二度目の水着)

 更衣室から出てビーチに向かうと、先に来ていた夏々ちゃんらしき人物を見つける。


「うみだぁぁ!」

 夏々ちゃんは体を伸ばして海に向かって声を上げている。

 彼女の水着は、紺色に白いハートマークの柄が入った大人しめだけど可愛いビキニ。

(シンプルだけど可愛いかも……)


「布だぁぁ!」

 夏々ちゃんの水着を見ていると、後ろから誰かに抱き着かれて慎ましい胸をぷよぷよと触られる。


「その言い方はやめて……!」

 文乃が揉む私の水着は、肩掛けの無いオフショルダーの白と水色のビキニ。

 確かに生地は布に近く、フリフリも付いている。

 下にもフリフリが付いていてスカートのようになっている。


「そ、それにフリフリだし!エロいみたいな言い方――!?」

 勢い良くそのフリフリスカートを捲られる。

 舞い上がったスカートの中からは、サイズが小さくて布面積が狭い水色のビキニパンツが見える。


「えいっ!ちゃーんとパン――ぶわっ!?」

 文乃はスカートをつまみ、しゃがんでおもむろにお尻の辺りを覗いてくる。


 抗うために自分もしゃがむ。

「そのセリフもやめてっ!」


「今日も仲良しねぇー」

 いつの間にか目の前に来ていた夏々ちゃん。

 二つのまな板によるまな板の板挟み。


「胸を見て残念そうな顔をするのはやめようか?」

 しゃがんだまま夏々ちゃんに両頬をつねられる。


「三人とも縮こまって何してるの……?」

 恵美ちゃんが立ったまま、こちらを呆れた目で見ている。


 水着は……白いビキニに黒いパレオのスカーフを腰に巻いている。

 そこだけ見れば確かに大人しい。

 だけどその黒パレオ……絶妙に透けている。

(まさか……)


「めぐちゃんそれ……わざと透けさせてるの?」

 文乃が踏み切った質問をする。

 確かに逆の色なら大したことは無いが、これだと穿いてないみたいに見えて凄くエロい。


「べ、別に私が決めたんじゃ……どっちが良いか瑠璃ちゃんに聞いただけで……」

 恵美ちゃんは恥ずかしそうにそっぽを向いて言い訳する。


「だって逆の色だと前と同じかなぁと思って~」

 瑠璃ちゃんの話から考えるに、恵美ちゃんは逆の色かで悩んでいたのだろう。

(まあそれはそれで透明スカートに見えるから……)


 気になる瑠璃ちゃんの水着は……

 ピンクや赤の花柄のトップの水着に、下は空色デニムのショートパンツのように見える。

「あれ、瑠璃ちゃん入らないの?」

 私は気になってしまい、単刀直入に聞いてみた。


「ううん、これ水着なんだよ~」

 確かにそれはデニムでもジーンズでもなく、空色のズボン型の水着だった。


「ほぇぇ、そんなのあるんだぁ~いいなぁ……」

 デニムのショートパンツを穿くことの多い夏々ちゃんは羨ましがっている。


「こ、腰回りがね~」

 瑠璃ちゃんは自分のお尻をつまむも、腰から上を見る限り太っているようには全く見えない。

(それは良い悩みだ……!)


 私はこっそり近付いて彼女のお尻を手で下から持ち上げる。

「へぇ~~これは確かにショートパンツじゃないと大変ねぇ~~」

 ズボン水着でもお尻部分はぴったり貼り付いている。


「ひゃっ……!?も~~!シャルちゃんったらぁ~」

 怒っていても止めようとしてこないので、こちらも程々にしてやめることにした。


 文乃はこっちを見て!と言わんばかりに目を輝かせてくる。赤いマイクロビキニを着て。

(親達もいるのによくこんなの着てこれたわね……)

 と言ってもそんなに布面積が狭すぎるという物でもない。極一般的なマイクロビキニだ。

 と言ってもマイクロはマイクロなので肌の出るとこは出ている。


 ちなみにお母さん達は、先に海の家でのんびりとご飯を食べている。


「おねえちゃーん、空気入れ買ってきたよー!」

 璃晦ちゃんと兄が、ビーチボールやシャチやビーチボートに使う空気入れを買ってやってくる。


(シャチは入れなくて良いですけど)

 よくよく考えたらあんなもん使ってるから発情の原因になるんだ。

 なので私が前以て電池を抜いて文乃を説得した。


「じゃあ私着替えてきますー」

 璃晦ちゃんは私達に声をかけると、更衣室の方へ向かっていく。


「あーい」

 夏々ちゃんが軽く返事をする。


 白いぶかぶかシャツにベージュのショートパンツ。

 普段着の下にマイクロビキニを仕込んで私の着替えを覗いていた誰かさんとは違うみたい。


 兄は元々水着の上にシャツを着るリア充みたいなスタイルだったので、着替える必要は無いようだ。

「ど、どうして睨まれてるのかなぁ……?」

 苦笑いしてこちらを見てくる。



 その後は四地点程レジャーシートを開いてビーチ玩具の空気入れや、パラソルの設置も終える。


「お待たせしました……ってお手伝い出来なくてすみません……!すぐ手伝いますね!」

 璃晦ちゃんが更衣室から戻ってきた。

 オレンジや黄色を基調とした花柄のフリフリ水着。サイドテールも相まって可愛さ要素が強い。


「いーのいーの。だって空気入れとか色々買ってきてもらっちゃったし」

 その通りでアイスボックス用の氷やら飲み物を買ってきてもらってしまった。

 勿論兄のお財布で。


「えい!」

 キンキンに冷えた痛い感触が背中に走る。


 振り向くと……文乃が小さな胸と小さすぎないマイクロビキニで買った氷袋を、私の背中に押し付けている。


「ん!」

 私は兄に向かって指を差す。


「すまんな」

 兄は璃晦ちゃんの小さな両肩を掴んで盾にする。

「ふゃっ!?」

 彼女はびっくりして小さな悲鳴を上げる。


『バギッボギッ』

 氷の割れる音がする。

「さ、サワッテナイヨー」

 兄はパッと璃晦ちゃんの肩から手を離す。


「ザック……」

 文乃はぷるぷると震えている。可哀想に……


(最低ね……やることだけしておいて他の子にボディタッチだなんて……)

 私はとても小さな声で独り言をしたつもりが、文乃にだけは聞こえていたようだ。

 虚ろな目でこちらを振り向いた。


「誰から聞いたの……?」

 せっかく文乃のターゲットを逸らせたと思ったのに墓穴を踏んでしまった。

(やっば……)


「ん……」

 もう一度兄の方へ指を指す。


「シャルちゃん!パラソル手伝っ――ひゃあ!?」

 恵美ちゃんは一人でパラソルを組んでいたのだが、うまくいかないのか声をかけられた。


 そっちへ振り向くと……

 恵美ちゃんが立ったまま左足を上げて変なポーズを取っている。

(な、なんか……卑猥)

「ぱ、パラソルの芯の部分に引っ掛かっちゃって……」


 よく見てみると……彼女のビキニのパレオではなくパンツの左お尻の部分がパラソルに引っ張られていた。


「あ!今助けるね……!文乃も手伝って!」

 行く時に文乃にも声をかけて数メートル先のパラソルの元へ。


「あー……引っ掛かっちゃってる。持ち上げないとこれ無理そう……」

 それは見事に引っ張られていて、無理に外すとほつれたり生地が切れたりしてしまいそうだった。


「ちょ……誰か持ち上げてあげて!」

 私は助けを求めるも……

「あ!力仕事なら……」

 兄がいち早く反応する。


 私と恵美ちゃんはどちらも兄を睨んで威圧する。

「力……仕事?」

「す、すみません……」

 年下であるはずの恵美ちゃんに兄は気圧されている。


 気付いた夏々ちゃんが浮き輪やらビーチ玩具に空気を入れるのを止める。

「あーあーめぐみんったら……一人でやらないで待っててって言ったのに~」

 直ぐにやってきて、彼女を背中でおぶって持ち上げる。


「う、うん……ごめん」

 恵美ちゃんは何かせずにはいられなかったのだろう。

 普段バイトを頑張ってこなす彼女を見ていれば分かる。とても優しい。


「気を付け……ぐっ!うぅっ!」

 夏々ちゃんが持ち上げるのに苦戦する声が聞こえる。重いとは決して言わない……


 私は丁寧に引っ掛かった部分の布を持ち上げると、取り外すことに成功する。

「良かった……取れたよ~!」

 私が二人に伝えると……


「はぁ……良かった」

 恵美ちゃんは安堵で一気に力を抜いた。

「ぐふふぁっ!?」

 下にいた夏々ちゃんはそのまま倒れて押し潰されてしまう。


「ひゃあっ!?」

 恵美ちゃんも悲鳴を上げる。


 私も気になって恵美ちゃんの体をよく見てみる。

 ウエストらへんはパレオに隠れてても分かる。そんなに変わってない。


「ん?」

(お尻がちょっときつそう……?)

 どう見てもパンツはキツキツでパレオは少しだけ張っていた。


「もしかして……」

 私がヒップの異変を感じて話しかけると彼女の体はピクッと震える。


「わ、私?あー最近忙しくて運動あんましてなくてさ~」

 押し潰されたままの夏々ちゃんが頑張って声を上げる。


(な、なるほど……やっぱりそうなんだ)

「ほ、ほら……!手貸すよ!準備終わったらビーチボールで遊ぼっか……!」

 私は恵美ちゃんの手を取って立ち上がらせる。そして運動の提案をした。


「あ、ありがとう……!」

 恵美ちゃんが返事をする中、私は最近の彼女を考える。

(そう言えば……バイトで出されたお茶菓子とか洋菓子残すの勿体ないって二人で食べてたっけ……)


「ん?口になんかついてる?」

 じーっと恵美ちゃんの口元を見ていたので、彼女は不思議に顔をかしげる。


「お菓子……持って帰れたらいいね」

 私はごまかす為にその話をこそこそ声でする。

「うっ……うん。そうだね……運動も――ひゃっ!?」

 恵美ちゃんもこそこそ声で答えていると、突然彼女の胸が後ろから持ち上げられる。


「ふふーん、このナイスボデーの原因はあのママさんのお菓子かぁ~」

 夏々ちゃんが彼女の耳元でこそこそと呟きながら、水着ごと胸を揉みしだく。


「ちょ、やめなさいってば……!」

 恵美ちゃんも周りの目を気にしているが、あわあわしている瑠璃ちゃん以外こちらを見ていない。


 私も彼女のお腹をつついてみる。

『ぷにっ』

 太ってはいないが、程々にむっちりしていて弾力がある。


「シャ、シャルちゃん……!?」

 恵美ちゃんは小さく声を上げ、二人は驚いている。


 だが、知りたかった。

 ナイスプロポーション且つこんな魅力的な体になるにはどうしたら良いのか。

「参考までに……だってぺったんこだし……」

 こちらも小さな声で答える。


「だ、大丈夫だよ……!だってまだ高校一年生だもん……!」

 瑠璃ちゃんが横から慰めてくれるも、それは慰めにならない。


「瑠璃ちゃん……!優しさは分かるけど、ちょっと体脂肪チェックしますよ~!」

 私は彼女の腹部を掴んでふにふにと揉む。


「ひぇっ!?く、くすぐったいよぉ……」

 彼女はぷるぷると震えながら必死に声をこらえている。

 案の定、彼女はそこまで気にしていないのか恵美ちゃん位ぷにぷにだった。


「わぁ……私、シャルちゃんの何かに火を点けちゃった?」

 夏々ちゃんですら驚いているが、久々に瑠璃ちゃんへくすぐりスキンシップをすることしか今は考えられない。


「しばらく見ないうちに……あんま変わってないけど」

 私も彼女の体をよく見てみるも、大して変わっていない。

 ダイエットするすると言っていてもまだやっていないようだ。


「ふぇ!?変わってない……かな?」

 瑠璃ちゃんはその言葉に敏感に反応する。

 どうやらダイエットを始めていたらしい?

「運動内容は?」

 詳しく聞く。


「え……えっと、シャルちゃんのお母さんのランニングマシーンを少し借りたよ……!」

 両手を振ってアピールをしているけど、それは本当なのかな?


「食べるには食べてるし……帰ったら私も使ってみようかなぁ」

 ちょっと怪しいので適当に誤魔化しつつ探ってみる。


「だめだよ……!」

「なんで」

 焦って否定するので食い付いてみる。


「だ、だって汗が……一応拭いたけど……」

 確かに彼女はそこそこ汗をかく。いい香りがするから尚更そこが私達を惑わせる。


「気にしない気にしないよ。あれお兄ちゃんだって使ってるし」

 おそらくお母さんが言っていない本当のことを答える。


「にゃ!?なんでよぉ~お母さんそんなこと言ってなかったのに~~!」

 瑠璃ちゃんは目を丸くした後、しゃがんでぽかぽかと私の太ももを叩く。


 そのおかげで正面にお母さんが立っていることに気付く。

「携帯代★」

 私を恐怖させる破壊力満天の言葉が聞こえる。


 ポニーテールに白いハット帽。クロスデザインの黄色いビキニ。去年と同じ感じだ。


「じょ、冗談だよ?瑠璃ちゃん……!だってお兄ちゃんが使う必要なんて……」

 私がそこまで言うと……カップルのお二人さんも寄ってくる。


「え、僕?あのランニングマシーンのこと?ちゃんと拭いて……」

 話を曖昧にしか理解できていない兄が、ランニングマシーンを使ってることを言おうとしてくる。


「アレは部屋に捨てないで自分で処理しようね?ザックちゃん?」

 お母さんもお母さんでとんでもないことを本人に注意する。


「わ、わかります……!気を付けます!」

 兄は急に敬語になる。

(お兄ちゃん……)


「だからあれほど言ったのに……」

 文乃も本人に注意したのだぞとアピールする。


「そもそもそういうのは……」

 後から来たお父さんも口を挟んでくる。


 文乃と兄が……ちょっと想像してしまう。

「うっ、最低……」

 私は猛烈に気色悪くなってそう呟く。元天敵同士が交尾している姿なんて想像しても何も美化されない。


「全くその通りですぅ……」

「もっと罵ってぇ~」

 兄に続いて文乃も土下座をする。

(なんで家でするかなぁ……しかも私の隣の部屋……)

 その手は私に絡み付いてくる。


「まあまあ、ザック君も大変だろうし、その時は私が何とかするよ」

 なんと文乃のお父さんも水着姿でやってくる白髪にサングラスが似合っている。


「うーん……まあ気を付けてよね」

 この人がそう言うなら私は甘くなるしかない気がした。

 こっちの家もそちらが世間体を隠しきれる位安心できるという意味でそこまで言われちゃうと……


「ありがとうパパ、シャルルぅ」

 文乃も礼を言うが自ら父親に対する礼が少なすぎる。

 でもその一言だけで満更なさそうだ。

(一人娘だから……)


「ありがとうございます!頑張ります!」

 兄も礼を言う。


(お礼言えば性行為して良いって……あり得ないんだけど)


「優しくしてあげてね……?文ちゃん結構傷付きやすいから~~」

 文乃ママも水着姿でやってき――

 パーカーと麦わら帽子で誤魔化しているが布面積キッツキツの黒い水着……

(親子変な所しか似ないなぁ……)


 つんつんと二の腕をつつかれる。

 構ってと言わんばかりの瑠璃ちゃんが後ろからつついていた。


「どうしたの~?ワンちゃん?」

 可愛くてついからかってしまう。

「ワンちゃんじゃない~!ビーチボール出来たよ……!」

 いつの間にか三人が色々と用意を終わらせてくれていた。


「あ、ごめん」

 私はすっとんきょうな返事をして、そのまま謝ってしまう。

「えへへ~」

 何でこのワンちゃんは照れているのか分からないけど、元々力仕事を任せていた二人にはちょっと申し訳なかった。


 助けたには助けたけど、あんまり手伝ってなかった。

 私は瑠璃ちゃんを一目見て、二人の方を向く。

「なんで無視するの~!そこは褒めてよ~!」

 この子はそれがやりたったのだろうか……


「あ、ありがとう……」

 でも手伝ってくれたことは確かだしお礼を言う。

「よし!遊ぼう!」

 そしたら満足したのか張り切っている。


(まあ、やっと遊べるし……)

「ねーねー、サンオイル塗って上げましょうか?」

 文乃がサンオイル片手に後ろから引っ付いてくる。


 そんな反応、そのシチュエーション。私が予想できていないとでも思ったのだろうか。

「あー、もう更衣室で塗ったわよ」

 軽い感じで答える。


「え……!」

 文乃は硬直している。色が抜けていくような絶望感が伝わってくる。


「え、逆にあんたその白い肌で塗ってないなんて……焼きに来てるの?」

 彼女の母親譲りの綺麗な白い肌。

 自分も人のことは言えないけど、前以て塗っておくのはいつものこと。


「って、でもプールの時は塗ってたよね。更衣室出た後だったけど」

 私は思い出しているも、彼女の色が戻る様子はない。


「ふ、文乃サーン?」

 反応がない。


「塗ってないなら僕が……元気出せって」

 兄も心配して元気付けるも反応がない。


(この感じ……スマホゲームの限定ガチャに間に合わなかった時の私みたい……)

 客観的に見ると、確かに心配してしまう。


「ふ、二人で塗ってあげるから……!ほら!ま、また明日もあるんだし?」

 私は余計なことを言った。間違いなく言った。目を逸らしながら後悔してももう遅い。


「よし……!」

 小声で彼女は呟くと、小さくガッツポーズを取る。


「ほ、本気か……?」

 兄にまで突っ込まれた。

 こいつには唯一言われたくなったシリーズの一つ。

 去年もその前も家族で海に来ては、塗ったのに塗ってあげるのしつこい念押しを私は思い出す。


「お兄ちゃん、塗ったか知らないけど塗ってあげるよ」

 私は淡々とした声色で兄を威圧する。


「いや、だいじょ……」

 兄の目の泳ぎ方とキョドり方から、直ぐに気付いたのは分かる。


「塗って、あげるよ」

 だが、腕を掴んで逃がしてやらない。


 文乃にはそんな仕返しなんて必要はない。

 でもこの変態クソ兄貴には、同じことは同じ範囲で収まる程度にでも返してやらないと気が済まない。


「いいじゃんいいじゃん!」

 文乃もノリノリだ。単に彼女として兄をからかえるのが楽しいのだろう。


「み、皆も待ってるし……」

 兄は断る雰囲気を出す。


「ええ!だから速攻で終わらす!」


 まず兄から塗り潰すことが決定した。

 私と文乃はサンオイルを手に取り……


「い、いやいやいや……!僕は塗る必要ないし!す、すみませんすみません!謝るからぁぁぁ」

 なんか騒いでいるけど、とりあえず背中を塗りたくってくすぐる。


「ひぃっ!ちょっと……!」

 兄は動揺の声を上げて後ろに振り向こうとするも……


「やったぁ!前任された~!」

 文乃は自分の小さな胸部にサンオイルを塗りたくると、兄にくっついて皮膚でオイルを塗りつける。


「へっ、ざまぁ。これこそ公開処兄こうかいしょけいってやつだね……」

 うまいことを言ったと思いながらも、背中をくすぐって腕もサッと塗り尽くした。


 今度は足の膝裏をくすぐりながら塗る。


「あぁぁぁぁ」

 兄は情けない声をだしながら崩れ落ちる。


 そして顔は文乃の柔らかくもスマートなお腹を擦る。


「ひゃっ……🖤これで顔も濡れたね~」

 文乃も兄の頭を撫でている。


「はい、後は自分で伸ばして。次文乃ね。はいレジャーシートに横になる」

 ビーチパラソルのあるレジャーシートに横になるように促す。

 ちゃっちゃと済まして皆と遊ぶと考えると、悩むこともなくすぐに済みそうだ。


「はーい」

 文乃はレジャーシートにうつ伏せになり、マイクロビキニの紐を引っ張って上手に外す。


「私右側ね。お兄ちゃん左」

 私はさっと文乃の右側に膝を突いて塗りたくっていく。


「あ、アッハイ」

 私の早さに驚いているのか兄はキョドって返事をする。


(変なネタ思い出すからやめてよね……)

 私もその答え方にちょっとびっくりする。


 不意に彼女の背中を指でなぞってしまった時……

「ふぁ~~ひゃっ🖤されるとされるでこんな気持ちいいんだぁ……」

 文乃は軽い喘ぎ声を上げながらも、とても気持ちよさそうにしている。


「何言ってんのよ。お母さんにも召し使いさんにもこうやって塗ってもらったんでしょ?」

 背中と首と腕をサッと塗り、お尻回りを塗りながら問いかける。


「ひにゃっ……🖤してもらったけどぉ……小さい頃だったしぃ」

 でもこれも彼女にとってはマッサージのような感覚なんだろう。

(気持ちいいならまあいっか)


 あっという間に足まで塗り終わる。

 兄もほぼ同時に塗り終わる。


(あれ……?なんか膨らんでない?)

 兄の水着に影が濃いとこがあるが、水着特有のやつと思うことにした。


「ほら前だよ」

 私は彼女に仰向けになるように急かす。

「もうはやーい」

 文句を言う文乃。でも満更でもなさそう。


 サンオイルを手に取りながら目をやると……

「あ」

 マイクロビキニの上部分が外れている気がしたけど手で塗って適当にごまかす。

(たぶん影が濃くなって黒い光になってるよね……!)


「あっ、ひゃんっ🖤もう早いってばぁ🖤」

 早すぎて感じているような気もするけど気にしない。


「うぅ……」

 兄は恥ずかしながらも彼女の体をサンオイルで塗りたくっていく。


「あっ🖤ちょっとザックってばぁ……そこばっかりだめぇ……🖤」

 兄は胸の感触に理性を揺られながらも、空いた左手で色んなところも塗っていく。


 足も塗り、兄を待っている間。

「日焼け止めもね。はい、目瞑って口閉じてー」

「ん!」

 日焼け止めを彼女の顔に塗りたくる。


 あっという間に塗り終わり、彼女にマイクロビキニの上を着けて結ぶのを手伝う。


 そして私達も皆の元に向かう。

 四人は水を掛け合ったりして遊んでいる。


「つめたっ……」

 兄は外の暑さからの冷たい海に驚く。


 足を動かしてパチャパチャすると、冷たくて気持ちいい。

「あははっ、気持ちい~」


「お!きたきた!」

 夏々ちゃんがシャチのビーチ玩具の上に乗り、手を振っている。

(いや……知ってるよね?)


 前回のプールて文乃の理性が効かなくなった時、彼女が焦っていたのを思い出す。


「いっっ!」

 兄が急に右足を手で押さえ、声を上げる。


 周囲が静まる。

「ぷ、刺された?」

 笑いながら聞く。


「刺されたよ」

 少し困り顔の兄は不機嫌そうに答える。


「全くぅぅ!?」

 足にビリリと痛みが走って手で押さえる。

 普通に痛かった。

 一年振りの感覚。


「まったくぅぅぅ~~」

 兄は真似して煽ってくる。


「むぅぶばばっ!?」

「ぶはっ!?」

 急に私達に水がかかり、驚く。


「へへへ」

 瑠璃ちゃんはニヤニヤしながらこちらを見ている。


「お兄ちゃん?」

「あぁ」

 兄に問い、返ってきたのは一返事。


「え……?ぶびゃぁっ!?ぶふわっ!?」

 同時に彼女へ水をかけ、更にもう一度同時追撃。


「けほっけほっ……もぉぉ……!」

 彼女は噎せると少し怒ったような口調で答えてくる。

(あ、子供みたいにおもいっきしかけちゃったけど化粧とかしてたら大丈夫なのかな……)


「大丈夫?」

 一応心配してみる。


「鼻に入ったぁ~……」

 そんな心配はいらなかったようだ。


 だから私達はそのまま彼女の両側を通り過ぎようとする。

「ちょっとまった……!」

 私だけはお腹をしっかりと掴まれる、彼女に押さえられる。


「なに」

 大体予想はついている。

「シャルちゃんにもこの痛みを……!」

 そのまま彼女は私を押し倒してくる。


 けどまだ浅い海水。私がバランスを崩してお尻を突いたところで、首から上はちゃんと海面から出ている。


「あぶぶぶぷくぷくぷく……」

 瑠璃ちゃんはそのまま浅い海に沈んでいる。

(自滅する可愛いワンちゃんだなぁ……)


 彼女は私の腰を掴んで水から上がる。

「ぷはぁ~!ねぇねぇ、水の中綺麗だよ~」


「ほんとね」

 恵美ちゃんも近寄ってくる。


「なんかあったー?」

 夏々ちゃんもシャチを文乃に渡したのか、そのまま歩いてくる。


「あれ、濁ってる……?」

 透明だったはずの水の中がぼやけている……


「あ、フリフリが……」

 私は水着のフリフリのスカートだけが脱げかけていたことに気付いて穿き直す。


「へへへ」

 瑠璃ちゃんは嬉しそうに笑う。じゃれているのだろう。


「えい」

 私はジト目で彼女に軽くチョップする。

『コテン』


「いたた……えへへ」

 瑠璃ちゃんはちょっと痛がると嬉しそうに笑う。

(叩かれて笑ってる!?)


 だが文乃の変態的な笑いではない。

 なのでもう一度。

『コテン』


「え……?いたい……よ?」

 苦笑いしながら困惑している。


「はっ!」

 夏々ちゃんも声をあげつつも、優しくチョップする。

『コテン』

「え、ちょっとなんで……いたた……」

 瑠璃ちゃんは更に困惑しながら頭を押さえるも……


「じゃー私も……うふふ」

『コテン』

 今度は恵美ちゃんが、彼女の押さえる手の上からチョップする。


「め、恵美ちゃんまでぇ……ふぇぇん……」

 瑠璃ちゃんは泣きそうな顔をしたので、今度はほっぺたをもみくちゃに撫で回してみる。


「シャりゅちゃみゅ!?むぅ~~にゃでまわしゃないでぇ~~」

 柔らかい頬を強く撫で回しているせいか、うまく喋れないところも含めてかわいい。


「へへっ」

 夏々ちゃんは悪い笑みを浮かべると、地面のわかめを取って瑠璃ちゃんの体に擦り付ける。


「ひゃっ!?ひょ……!にゅめにゅめしにゅぅ~~!」

 瑠璃ちゃんは驚いてくすぐったそうにピクピク動くも、うまく喋れないのは変わらない。


「じゃあ私は……」

 恵美ちゃんも悪い笑みに変わろうとした時……


「ちょ、ちょっとそこのお方……」

 か弱い文乃の声が夏々ちゃんの後ろの方から聞こえてきたので、びっくりして彼女の頬を押し潰してしまう。


「ぶにゅぅ~!」

 頬を押し潰された瑠璃ちゃんは少し怒った顔をする。最高に写真に納めておきたかった擬人化たこさんだ。


「どしたの?文乃ちゃん?」

 恵美ちゃんがどうかしたのか聞いている。


「脱げた……」

 私はそこでニヤリと微笑んだ。

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