第23話~に すくるばいと~(隠しちゃいけないこと)
八月もまだ中旬。
宿題を皆と終わらせて、余裕なシャルロッテはだらだらと自室で過ごしていた。
「ふへへ……」
冷房の効いた部屋、ベッドに横になる彼女はスマホを見つめてにんまりと笑う。
スマホゲームの期間限定ガチャで手に入れた推しキャラ。赤髪ツインテールの女の子。
『ガチャン』
唐突にドアが開く。
「ふひぇっ!?」
「あれ?お邪魔しちゃった?」
なんとそれは夏々ちゃんだった。
「え、なんでここに」
何故友達が自分の自室に入ってきたのか。テンパった私は訳が分からなくなってしまった。
「るりるりと一緒に来ていいよって言ったのシャルちゃんじゃん……!」
頬をぷんすかと膨らませて拗ねた彼女。
凄く可愛いけど緊急事態だからかどわっと汗が出てくる。
「ちょ、ちょっと冷房入れすぎ……何度にしてるの?というかなんで毛布……?」
そう。私は今、下着姿で毛布を被っている。
「え、えへへ……冷房かけて布団被るの気持ちいいしぃ……」
普通を装ったが、心臓はバクバクと悲鳴を上げている。
「もー不健康だよ!」
軽く私をあしらう夏々ちゃんはにやりと笑って近付いてくる。
「よ、用があるなら今行くからリビングでっ……!?」
なんとか逃げ切ろうと出した必死の策。
でも彼女はニヤニヤしたまま、私に抱き着いてくる。
「彼氏さんとはどうなの?最近」
「へっ!?か、かか……彼氏!?」
何故そのことを夏々ちゃんが知っているのか……まあつまりは、またあの女を絞らなければならない。
「まさかシャルちゃんがちっちゃい男の子好みだったとは」
「べ、別に彼氏じゃなくてまだ友達だし……!」
私は友達だと強がる。
でも、浩平君とは共通の趣味を持つ友達として……お試しカップルとして、仲良くゲームするまでになった。
まだちょっぴり気恥ずかしくて緊張しちゃうけど……
「へへぇ……うまくいってる顔ねぇ?」
そう言いながら彼女は頬っぺたをぷにぷにと触ってくる。
彼女のスキンシップは抱き着いてきてもここまでだ。奴とは違う。
「あ、あの……それで急にどしたの?」
私は彼女にある理由を問う。
思い出せば全日……SNSアプリでスタンプばかり送りあっていた彼女から突然、相談したいから明日訪ねていいかと聞かれたのだ。
「あーー……リビングで待ってる」
何かを思い出したかの口振りでしょぼんとした表情。
彼女は深刻な顔のまま、部屋から出ていってしまった。
リビングにて――
「あ、あのね!めぐみんを助けてあげてほしいの!」
立ったまま深々と頭を下げる彼女。
「も、勿論助けてあげたいけど……」
事情を聞いた私は戸惑ってしまう。
「どしたらいいのかなぁ……」
瑠璃ちゃんも目を閉じて考え込んでいる。
事情というのは……
独り暮らしをしていた恵美ちゃん。
彼女はバイトを掛け持つ程生活難であったのだ。
その理由は……
高校入学前。福岡に帰りたくないとの事で親と喧嘩してしまい、半ば絶縁のような状況で独り暮らしを始めたこと。
仕送りも無いまま学費と生活費をなんとかバイトで補っていたものの、最近どうやら様子がおかしいらしい。
でも、今まで一切気付かなかった。沢山皆で遊んだし少しばかり余裕があるのかとてっきり思っていた。
(も、もしかして……よ、夜のお仕事!?)
「そ、その……ちゃんとしたバイトだよね?悪い事とかしてない……よね?」
彼女の身を心配した私は夏々ちゃんに問う。
「うん。でも、家賃だって払いきれてるのかも分からないし……このままじゃ……」
俯く夏々ちゃんは今にも泣きそうな顔をしている。
東京の家賃と生活費諸々。ただでさえここら近所は色々と揃っていて家賃が高い。
「ってことは……今まで夏々ちゃんは家事とか手伝ってあげてたの?」
今度は瑠璃ちゃんが心配そうな声で質問をする。
「うん……!でも、明日から帰りが遅くなるかもしれないって……」
「ちなみに今帰ってる時間は……?」
私はその言葉に焦って彼女を問い質す。
「十一時位……」
彼女は辛そうにそう答えた……
顎に指を当てて予想してみる。
彼女を完全に見なかった六時半から十時半。
フル三十日四時間で十万程度……
ここら近所の家賃は六万程度。
だが前金等を用意できなかったのなら、借りていた家は家族で住んでいたそのままのもの。
つまり……生活費に回すお金が無い。ならば家賃を滞納する事になる。
沈黙を振り切り、彼女の肩を掴む。
「ちょ、ちょっと!もっと早く相談してよ!」
彼女が危険な仕事に手を出す寸前である。何故そんなになるまで黙っていたのか、憤りを感じてしまう。
「だ、だって……!皆には、内緒にしてって……うぐっ、ひぐっ……しないとぉ、もう帰ってこないっでぇ……」
声を荒げたせいか彼女は涙をぼろぼろと溢して膝から崩れ落ちる。
「ああぅ……ご、ごめんね?泣かないで?」
我に帰って慰める。
(夏々ちゃんに当たるなんて……少し冷静にならなきゃ……)
「夏々ちゃんのお母さんとかは……?」
瑠璃ちゃんも彼女を支えるようにしゃがんで、質問をする。
「…………いくら説得しても、うぐっ、うぅ……あんたがそこまで、するごとないっで……」
泣き止めない彼女を瑠璃ちゃんが抱き締め、背中を撫でてあげている。
(か、考えろ私……)
頭を抱えてひたすら考える。
良いバイトのツテなんてあっただろうか……
文乃の家に行った時の記憶がふと甦る。
『もー最近忙しくて肩凝っちゃうぅ』
ダイナマイトボディのアメリカ出身の奥様がぼやいていた言葉。
「あ!」
最高の手があった。
「か、家事のお手伝いって募集してます?」
二人を家に残し、私一人で文乃の家にお邪魔している。
目の前にはおっきなおっぱい……
いや文乃ママ……文乃のお母さんがエプロン姿で立っている。
白いカチューシャと綺麗な金髪ストレートヘアが今日もお美しい……
(立って見るとやっぱりやばい……それに比べ私の胸……)
「あ~確かに欲しいかも~。シャルちゃんもお小遣い欲しくなっちゃったかな?うふふ、可愛いからいてくれるだけでも良いのよ~?」
(それはだめだ。バブみに溺れる)
にっこり微笑む人妻をママと勘違いしてしまいそうになる。
運良く文乃は兄とデート中。交渉するなら今しかなかった。
「わ、私じゃなくて……!私と文乃の友達が、今生活苦しいみたいなの……」
「なるほど。えーっと、誰かしら……」
納得してくれるも顎に人差し指を当ててポカンとしている。
「ほ、ほら!あの黒髪の真面目そうな!お兄ちゃん奪っちゃう感じの……!」
わざとらしく違う条件もちらつかせてみる。
「あ~あの子ね!た、確かに……文ちゃんの恋敵なら……うーーん」
でも悩んでいる様子からあともう一押しって感じだ。
「きっと何でもしてくれるよ!そ、それに明日から夜中働くかもって……」
(もうこの際何が何でも!)
「そ、それはいけないわ!高校生でそれはダメよ!」
文乃ママは頬を膨らませてぷんすかとしている。
(ま、まずった……?)
「ふふっ……シャルちゃんはやっぱり優しいのね。何とかお父さんを説得してみるわ」
「本当!ありがとう文乃ママ!」
嬉しさで年甲斐もなくぴょんぴょんと跳ねてしまう。
『ぎゅむぅぅぅ』
大きなおっぱいに挟まれて頭がふわふわする。
「違うわ。ママ、でしょ?」
「は、はい……ママ」
口はおっぱいに操られ、正直に答えてしまう。
(やっぱりこの人苦手ぇ……)
「せっかくだから電話終わるまでゆっくりしてって……?」
「うん……」
やっぱり気に入られているみたいだ。しかも立場上すぐ帰ることは出来ない……
文乃ママは廊下で夫に電話をかけている。
やっぱり気になってこっそり聞いてしまう。
「あなた……!お願い!今日は久しぶりにシてあげるから……!」
文乃ママは電話越しに、ウインクしながら唇に指を当てている。
聞いてるだけで、見てるだけで顔が真っ赤になる。顔を両手で隠すが目は離せない。
(え、えっちすぎるよ文乃ママ……!)
「え?それはもうぽよんぽよんのぐっちゃぐちゃのとろっとろよ~」
どんなことかを聞き返されたのだろう。文乃ママは妖艶な表情で答える。
(えっっっっっど……!)
「ありがとうあなた……!ええ、シャルちゃんとそのお友達。良いじゃな~いあの黒髪で真面目そうな子よ?ここでちゃんとしておかないとザック君取られちゃうかもしれないわよ~?」
文乃ママはしっかりと兄の条件も話してくれる。
(ん?)
「うふふ……じゃあ今夜をお楽しみに、お仕事頑張ってね?あ・な・た……」
最後はハートマークが付いていた。妖艶過ぎる。大人過ぎる。エロ過ぎる!
(私もあんな風になりたい……)
自分の胸を見る。悲しい気持ちになってきた。
「あらぁ~お顔真っ赤にしちゃって~シャルちゃんのえっち……!」
気付いたらおっぱ……文乃ママは目の前にいた。
「ひゃんっ……!悪気はあったかも……ご、ごめんなさい」
「かわいい~浩ちゃんがメロメロなのも分かっちゃうわ~」
うふふと微笑む文乃ママの前では本当に調子が狂う……
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