どぅろぐがーるず!
涼太かぶき
#1 あたらしいともだち
第1話~どきどきの入学式~
誰もが何度かは経験する入学式。
ここ、
(や、やっぱりみんな私の事気になって凄い見られてる気がするかも……)
彼女、シャルロッテ・ドレミンは自身の小さな膝につけた手をぎゅっと握る。
周りの視線に緊張を感じて、目だけをキョロキョロとさせている。
銀髪ミディアムヘアで後ろへ流した双方のお下げ髪は、小さな体躯と共に細かに震えている。
私はシャルロッテ・ドレミン。
ロシア出身のお母さんと日本在住のお父さんの娘で、日本では珍しい?ロシア人ハーフというやつです。
何で私がこんなに緊張しているのかというと……周りの視線に耐えられず、上がり症だから。
昔から日本離れした苗字と名前にはコンプレックスを持っていたけど……
こんなにも周りからチラチラと見られたりすると凄く恥ずかしい……!
(早く式終われ~!お願いだから終わってくださいぃぃ!何でもじまずがらぁぁ!)
シャルロッテは軽く涙を浮かべながら、目をぎゅっと瞑り、司会の上級生へ懇願する。
彼女の小さな体躯から、周りからは可愛がられる経験が多かった。
もしそんな彼女が、日本のアニメや漫画等のオタク文化、サブカル文化にはまっていたとしたら?当然その本心は周りに打ち明けられないだろう。
――「本年度入学式をこれにて終了します。各自生徒は先生の指示に従って動いてください」――
「はぁ~」
彼女は小さな溜息を漏らす。
「ふぁぁーー……?」
隣の眠たそうな女子と目が合う。彼女はにっこりと緩やかな笑みを見せる。
髪型は茶髪のショートボブで、前髪はパッツンだがその左右はしっかりとピンで留められている。
そして何より笑顔が眩しすぎた。
(このオーラは……!?極稀にいる、にっこり笑顔が似合って幸せオーラを発する人……!ま、眩しい!)
「長かったよね~」
不意に話しかけられ、シャルロッテは戸惑ってしまう。
(あわわわ……!待て待て!落ち着け落ち着け私!)
「う、うん長かったね~……は、
シャルロッテは落ち着くよう意識したが……目を泳がせていたりと焦った素振りだった。
(どこからどう見ても挙動不審だぁぁ!絶対嫌われたよぉ……)
「うん!シャルちゃん?でいいのかなぁ?よろしくね~!」
シャルロッテの目の前には、春佳さんの天使のような笑みが広がっている。
(あぁ~天使だぁ~~私の事も気にしてなさそうだし……ひとまず安心かな!)
シャルロッテは出だしは上々と思いながら、小さくガッツポーズを取っていた。
入学式の座席で彼女とすぐ横であったため、な行の生徒はこのクラスにはいなかった。
(つまり……!私の後ろには春佳さんが座っている!後ろから見られるのは嫌だけど……本物の友達になってくれるなら問題なし!)
シャルロッテは今まで心を許し合える程の友達を作れたことが無い。
ロシアの親戚の所に遊びに行っても近所の子とは言葉もうまく伝わらず、日本では相変わらず引っ込み思案で中々打ち解ける事が難しかったのだ。
「先生はこれからプリント取ってきますからちょっと待っててくださいね!」
黒髪ストレートで美人な女性が、このクラスの生徒を現在いる教室まで案内した。担任?の先生だろうか?
その後の教室はガヤガヤと話し声で賑わっていた。
(でもちょっと待って?私ってあまり自分から人に話しかけたこと無いのにうまくいくのかな……?)
「ねぇねぇシャルちゃん」
背後から春佳さんに肩を指でちょんちょんとつつかれ振り返る。
「な、なに?春佳しゃ……」
「うふふ。引っ掛かった」
振り返ると私の頬に彼女の指がぶつかる。日本ではよくあるいたずらのようなものだ。
またしても彼女は無邪気な笑顔を浮かべる。
だけど私は硬直してしまう。このいたずら行為は、兄にやられる事が多い。それには無性に腹が立って噛みつく事がほとんどだ。
(でもこの笑顔……可愛すぎてむしろ噛みつっ……だめだだめだ)
「え、えへへ。やったなぁー」
(この反応が正解だろ!そうだろぉ?)
「えへへ~」
(うんうんニコニコ笑顔可愛い可愛い。全然許せる~)
「ぐぅぅぅ。ん……ふがぁぁ」
「ふぇっ?」
「ん?」
突如、春佳さんの後ろから大きないびきが聞こえた。私達はびっくりして彼女の後ろの席を見てみると……
橙色髪で長さはミディアムヘア位だと思えるサイドテールの娘が、むにゃむにゃ言ったりいびきをかきながら机に突っ伏している。
(リボンが派手……!)
その娘は更にアメリカカラーのリボンを付けていた。
「ちょっと……!
更に後ろから彼女を起こす小声が聞こえた。
その人の髪は黒髪に近い紺色でストレートロングヘア。前髪は私達から見て右から左に流れてピンで留められている。
(まるで清楚系美人……!真面目そうだなぁ)
「ふにゃあ……?な、なんだよぉめぐみぃん……」
「なんだよぉじゃないわよ!せめていびきかくのはやめなさい……!しかももうすぐ先生が帰って、ってまた寝ようとしないでってば!」
どうやら二人の雰囲気は入学前からの知り合いだと雰囲気で分かった。
そして先程から三つ後ろの席のめぐみさん?とはチラチラと目が合うんだけど。き、気のせいだよね……?
「あのぉ……寝不足なの?」
春佳さんがほんわかした雰囲気で最初の一言を切り出した。
(勇気もある!か、かっこいい!)
「ご、ごめんね……!この娘いつもこんな感じで……」
めぐみさんは代わって謝ろうとするが、眠っていた本人がその言葉を切った。
「うんうん。そうじゃないんだけど無性に眠くてぇ~ふぁぁ~」
「そうだよねぇ~私もさっきの式うとうとしちゃって~」
春佳さんはさぞ美しい笑みを浮かべているのだろう。後ろの二人を見るとぽかんと口を開けていて、彼女に見とれているのが分かる。
「あっごめんごめん。あたしは
「私は春佳瑠璃っていうの。よろしくね~」
橙色の髪の娘、夏々さんに続き春佳さんも自己紹介をした。
(あっこれって私達もしなきゃだよね?ど、どどどうしよう何て言ったら良いのかな……)
「ほらほらめぐみん」
夏々さんは後ろを振り向き、めぐみさんに自己紹介を仰ぐ。
「あっ。えーっと私は
恵美さんは戸惑ったのか若干声が裏返っていた。
私が焦っていると真面目そうな彼女も自己紹介を終えた。
そして三人が皆こちらを向く。
「え、えーっと。わ、私はシャルロッテ・ドレミン。よろしくお願いしみゃす」
(さ、最後で噛んだ奴ぅ。ぜ、絶対恥ずかしい奴ぅぅ)
私が急いで口元を隠すと、三人ともただただ微笑んでいた。
(む、無言の微笑みやめぇてぇぇ。凄い恥ずかしい……)
数秒沈黙が続くと夏々さんがその沈黙を破った。
「可愛いなぁ。これはいじりがいがありそうだ」
「ふ、ふぇっ!?」
いじられるという言葉にちょっと驚いてしまう。今まで友達間で、そういう経験があまり無かったからだ。
「冗談だよ~夏々さんは可愛い娘にそんなちょっかいは出しません!」
「ほんとかしら……」
夏々さんは胸を張ってそう断言するが、恵美さんの疑いの言葉に不安を隠せなかった。
その後担任の女性の先生、佐々木先生は教室に戻ってきた。
苦痛の自己紹介の時間も終えて……プリント配布と説明を聞いた後、すぐ下校だった。
学校紹介等々は後日からとの事だった。
「ねね。二人はこの後、時間ある?」
下校時間、四人で廊下を歩いていると夏々さんが私達に話しかけてきた。
「私は大丈夫だよぉ。シャルちゃんは?」
「もちろん大丈夫だよー」
(帰っても暇な兄さんがちょっかいかけてくるだけだし)
「よっしゃ!そしたらハイデリア行こう!」
(安くて美味しいファミレス!夏々さんナイス!)
「あれ?でもめぐみん大丈夫なん?今日って……」
一応彼女は恵美さんにも確認を取る。何か大事な予定があったのかな?
「大丈夫大丈夫!長くならないなら行けるよ」
「よし!即行でっ!?」
その了承の言葉に夏々さんは駆け出そうとするが恵美さんに肩を掴まれる。よ、
「急かさんとっ……!」
「はぁーい」
(あ、あれはもしや!可愛い方便のあの博多弁!?)
私がじっと恵美さんを見つめていると、彼女と目が合った。それに気付いたのか急いで口元を恥ずかしそうに押さえていた。
(これは間違いない……!)
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