10話ー4章 憧れた姿




● ● ● ●




小さい頃から、姉は私の憧れだった。


綺麗で、カッコ良くて、賢くて。


私の、そして皆のヒーローだった。


その近くに、私はずっといた。


間近で見て、彼女のことを理解していた。


していたと、思っていた。


だけど、いつの間にか、理解できなくなっていた。


カードゲームに興じる姉を、私は離れて見ていた。


姉は、変わってしまった。



……………。


………本当にそうだろうか?



変ったのは私の方なんじゃないのだろうか?


だって、姉は今でも変らず皆のヒーローだ。


テレビに映る、姉の姿。


他の人から憧れられる、姉の姿。


病院で病気の子にカードを教える、姉の姿。


姉はみんなの憧れだ。




私は、姉が理解できなくなった。


理解したいのに、できなくなっていた。


憧れているのに、憧れることができなくなっていた。




● ● ● ●




「《オズ》と《ドロシー》で同時攻撃!!」


望美のターン。


《テミス》を破壊するため、望美は同時攻撃を宣言する。


2人の魔術師の放った魔力球が1つになり《テミス》を襲う。



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《オズ》  攻撃力700

《ドロシー》攻撃力100


         合計攻撃力800


 VS 


《テミス》防御力700

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「させない、《一閃いっせん》!!」


眩しい光が、攻撃を防ぐ。



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《一閃》

Lv0 通常スペル

タイプ:光

●:自分のタイプ「光」ユニットへの攻撃を無効にする。

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しかし、望美たちの攻めは止まらない。


「それなら《アシッド・ストーム》を詠唱。カード効果で破壊します!!」


「っ、《マジック・コート》!!」


望美のスペルでの追撃に、美命が応じる。



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《アシッド・ストーム》

Lv3 通常スペル

タイプ:風、水、雷

●:フィールドに存在するアイテム、および

タイプ「機械」ユニットを全て破壊する。

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《マジック・コート》

Lv0 通常スペル

●:手札1枚を捨て札にする。

「機械」カード1枚は、このターン効果では破壊されない。

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《テミス》を酸の嵐が襲い、それを魔法のコーティングで防ぎきる。


攻め手を全て交わされた望美は、《ノーマ》の召喚で守りを固めてターンを終えた。



2人の間で交わされる、手に汗握る攻防。



その中で、美命は強く奥歯を噛みしめる。


―――負けたくない!!


それは、初めての感情。


負けたって、勝ったって、なんにも得るものは無いというのに。


理由は分からない。


ただ、湧き上がる感情のままに、美命はカードをドローした。




----------------------《7ターン目》----------------------


  〈玉希 望美〉   〈天糸 美命〉●

  ドロシー Lv1    ミデン Lv0


  Lp 500       Lp 200

  魔力0        魔力2→5

  手札1        手札0→1


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---------------------《フィールド》-----------------------

〈玉希 望美〉 

ドロシー Lv1/100/100

《オズ》 Lv7/攻700/防600

《ノーマ》Lv1/攻0/防100


〈天糸 美命〉

ミデン Lv0/0/0

《テミス》Lv10/攻300/防700


《連鎖召喚》 永続スペル

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ギリギリの戦いはいつの間にか、未菜や玖々理だけでなく周囲の通行人たちをも釘付けにしていた。


そして、2人の戦いは声援に包まる。


望美に、美命に、あるいは両方に。


そんな熱気の中、美命は少しだけ、ほんの少しだけ笑う。


「ちょっとだけ、楽しい戦いでした。……でも、これで終わりです」


彼女に最後に残された、1枚の手札。


少しだけ名残惜しそうに、それを天にかざす。


そして、宣言した。


「レベル10の《テミス》をリターンし、このカードを召喚します!!」



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〈天糸 美命〉魔力 5→15

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「えっ!?……あの《テミス》をリターン!?」


『ま、まさか!!』


予想外のことに望美が驚き、次の展開を予期したドロシーは身構える。


新たに生まれた魔力の玉が全て天に消え、さらに美命の手元からも2つ消える。


「え?え?これって?」


「ついに来るわね……、美命の真の切り札が!!」


ついていけない未菜に、全てを知る玖々理。


観客たちも皆ざわめく中、"それ"は現れる。



天より降り注ぐまばゆき光。


その中に見えるは美しき機械人形。いや、天使。


刻々と時を告げる音を鳴らしながら、巨大な時計板を背負った"彼女"は舞い降りる。


美しき長い黒髪。


風になびく外套。


死神を思わせる巨大な鎌。


最後の時を告げる美しき機械天使が、今ここに降臨した。






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《刻天機 クロノ・アルク》

Lv12/攻撃0/防御0

タイプ:幻想,天使,機械,神話

●:???

●:???

●:???

●:???

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