第7話 つながれた少女

7話ー1章 第3回戦へ




「ちっくしょー、負けちまったぜっ」


木場はそう言って、悔しがった。


3回戦の会場に向かう望美と巻宮は、木場たちと合流していた。


「ふふっ、望美さんはまだ勝ち残っていましてよっ」


巻宮が得意げに言う。


「なんで、ミヤミヤが威張ってんのよ…」


呆れたようにそういうのは晴香だ。


『マスターも、次で負けないようにしないとですね』


「うん、気を引き締めていかないと…」


1回戦のココロさん、2回戦の須王君、どちらも強かった。


ギリギリの勝負、一歩間違えれば負けていただろう。


本当に運が良かった。


「で、木場さんはどんな相手に負けてしまいましたの?」


巻宮の素朴な疑問。


それに木場が答える。


「それが、………ボコボコに負けちまって」


「途中まで亮が勝ってたのに、いつの間に!!……って感じだったねぇ」


何がなんだか、といった様子の晴香。


「どんな相手だったんです?」


次に当たるかもしれない相手に、望美は興味をひかれた。


木場は頭を掻きながら、バツが悪そうな顔で答える。


「小さな女の子だったよ…。名前はたしか"天糸あまいと美命みこと"ちゃん、だったかな?」


「えっ…!!」


望美は驚く。


天糸、その苗字みょうじに望美は聞き覚えがあった。


望美の憧れ、"天糸あまいと玖々理くくり"さんと同じ―――。




● ● ● ●




"天糸あまいと美命みこと"。


マスタークラス3位の"天糸あまいと玖々理くくり"の妹にして、現ブロンズランク2位。


ランキング登録から、たったの2か月で上位に食い込んだ天才少女。


ネットで検索すると、そんな情報が沢山ヒットした。


『強すぎる』、『勝ってたはずなのに負けていた』、そんな話が各種SNSにあふれていた。


全てを見ることはできなかったが、分かったことが1つ。


彼女は望美の憧れの人の妹で、とにかく強い、ということだった。





次の会場に皆で向かいながらネットで調べた情報を総合すると、そう言うことだった。


「実際、すごく強かったぜ……」


思い出すように、木場はそう言った。


「強いというだけでは、どう強かったのか分かりませんわ」


「うーん、一気に攻め切らないと痛い目を見る、って感じかな……」


木場は頭を掻きながら、困ったように答えた。


『なんだろう?ゆっくりと布陣を整えるタイプなのかな?』


「えっと、それって―――?」


望美が疑問を口にしようとした、その時―――



「さあ、着きましたわよ!!」



と、巻宮が望美たちに声をかけた。


そこは、モール1階の中央に位置する大広場。


頭上は大きな吹き抜けになっていて、回廊もなく開放感のある場所だった。


「…………」


その中央に、1人の少女が立っていた。




「………………あの子だ…。……天糸…美命」




「「『えっ…!?」」』


木場の呟きに、望美たちは驚く。


ということは、彼女が次の対戦相手ということだった。



「……………?」



その少女に、望美は何か既視感きしかんを感じた。


ネットの情報にもなかったその姿に、見覚えがある気がしたのだ。


その年齢に似合わない、長い黒髪の間から見える凛々りりしくも影がある顔、それをどこかで……。


「――――――、あっ…!!」


一瞬の間をおいて、気が付いた。




それもそのはず、彼女は大会に向かう途中で見かけた、あの少女だった。




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