第6話 2回戦 勝利のための犠牲
6話-1章 得たもの
モール東側、吹き抜けをつらぬく
それらが交差する空中広場。
望美と巻宮はそこにいた。
「ここが次の試合会場ですわね」
「…うん、そうみたい」
手元に表示させたメールと周りを見比べ、2人は場所が正しいことを確認する。
しかしまだ、対戦相手とおぼしき人物の姿はなかった。
代わりに、先ほどの広場で見た何人かの観客の姿が見えた。
気のせいでなければ、皆こちらを見ながら何かを話しているように見える。
「どうやら、先ほどの対戦を見ていた方々が望美さんの対戦を見に来ているようですね」
『人気者ですね~、マスター』
巻宮の予想を聞いて、ニヤニヤと笑うドロシー。
第1試合に集まった星見ココロのファン、その何人かが望美に興味を持ってついてきていたのだろう。
「いやいや、クロユニ好きの人が多いってだけだよ、きっと」
気恥ずかしさを誤魔化すように、顔を赤くした望美は手を横に振りながらそう言った。
「まあ、大人気のゲームですから。大会の事を知って見たくなっただけかもしれませんわねぇ」
口元を抑えて、そう言う巻宮。
そのセリフとは別のところに本心があるのは明白だった。
「……あっ、あの人が対戦相手かなっ?」
居たたまれなくなった望美は視線をさまよわせ、
望美たちの方に歩いてくるその人物は、地味な印象の少年だった。
短めの黒髪で眼鏡をかけ、やや痩せ気味で地味な服装。
カードショップを訪れれば、必ず一人は見かけるような見た目の少年だ。
こちらの様子に気づいたのか、彼は歩調を変えずに自らのデッキホルダーを指さした。
「大正解、見たいですわね…」
対戦者同士が視線をかわす時、それは次の試合の開始の合図だ。
● ● ● ● ● ●
「僕は
淡々とした口調で彼、ヤイチはそう言った。
「はいっ、玉希望美です!!よろしくお願いします」
緊張しながら望美は挨拶を返す。
しかし、
「ああ…、"《オズ》を手に入れた初心者"か…」
「…えっ?」
急に苦々しい表情になるヤイチ。
初めて出会った相手にそんな顔をされる覚えのない望美は、訳が分からず戸惑う。
「まあいいや…、さっさと準備しなよ。もう戦いは始まっているんだからさ」
そんな望美を無視して端末の操作を始めるヤイチ。
取り付く島もない彼の様子に戸惑いながら、望美も端末を操作する。
―――――――― ニューロビジョン「接続完了」 ――――――――
―――――――― 〈クロス・ユニバース〉「起動開始」――――――――
望美の隣にドロシーが、ヤイチの隣には炎の塊が現れる。
「僕のパートナーはレベル0の《鬼火》。さあ…、さっさと始めなよ」
「は、はい…、わ、わたしのターン」
こうして心の準備をする間もなく、第2試合はなし崩し的に開始された。
----------------------《1ターン目》----------------------
〈玉希 望美〉● 〈須王 ヤイチ〉
ドロシーLv1 鬼火Lv0
Lp 1000 Lp 1000
魔力0→4 魔力0
手札5 手札5
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『なんなんですかっ、あの人は』
ヤイチの態度に眉をひそめるドロシー。
そんな彼女の態度に、望美も同感だった。
が、今はそれを考えている時ではないのだ。
意識を無理やり試合に切り替えた望美は、手札から1枚のカードを掴む。
「わたしは《砂塵のノーマ》を召喚!!」
宣言と共に、眼鏡をかけた金髪の精霊がフィールドに姿を現す。
そして望美はさらに1枚、別の手札を手に取る。
「続けて、《追影のシェイド》を自身の効果で召喚します!! 」
《ノーマ》の影の中から、暗い
「1ターン目から全開ですわねっ」
ココロとの対戦でも見せた連続召喚に、あらためて感心する巻宮。
先程の対戦を見ていた周りの観客たちも、期待通りのものを見れたことで盛り上がる。
返しのターンへの守りをかためた望美は、ターンの終了を宣言した。
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《砂塵のノーマ》
Lv1/攻撃力0/防御力100
タイプ:地,精霊
●:1度だけ、同じタイプのユニット1体の破壊を無効にできる。
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《追影のシェイド》
Lv1/攻撃0/防御100
タイプ:幻想,精霊
カードの効果でのみ召喚できる。
●:Lv1ユニットが召喚された時、自身を手札から召喚する。
●:1ターンに1度、自分・相手ターン中に発動できる。
同じタイプのユニット1体のLvと攻撃力をターン終了時まで得る。
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「さあ、僕のターンだ」
ヤイチが宣言と共にカードをドローする。
----------------------《2ターン目》----------------------
〈玉希 望美〉 〈須王 ヤイチ〉●
ドロシーLv1 鬼火Lv0
Lp 1000 Lp 1000
魔力2 魔力0→5
手札3 手札5→6
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---------------------《フィールド》-----------------------
〈玉希 望美〉
ドロシー Lv1/100/100
《砂塵のノーマ》 Lv1/攻0/防100
《追影のシェイド》 Lv1/攻0/防100
〈須王 ヤイチ〉
鬼火 Lv0/50/0
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「最初に使うのは《新たな図面》…、デッキから建造物カードを手札に加える」
レベル0アイテムの効果で、ヤイチはデッキのカードを1枚選択する。
「手札に加えたのはレベル7…、そのままじゃあ使えない」
だけど、と続けながら、ヤイチはさらに1枚のカードを掴んで場に出す。
「この《奇跡の図面》の効果で、手札1枚とライフをコストにすれば魔力を踏み倒すことができるんだぜ」
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《奇跡の図面》
Lv0 通常アイテム
●:手札1枚を捨て札にし、Lpを半分払って使用する。
1度だけ、「建造物」カードに魔力を払わなくてもよい。
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『まずいよ、マスター!!』
「まさか、1ターン目から!?」
その驚愕の効果に驚く望美たち。
巻宮や観客たちも次の展開を予感し、固唾をのむ。
ヤイチはニヤリと笑うと、先ほど手札に加えたカードをその手に掴んだ。
「さあ…、その雄々しく重厚な姿を現せっ…!!レベル7《
地響きが鳴り、モールが揺れる。
吹き抜けの下、空中回廊群の隙間より、"巨大な物体"がその姿を現す。
その巨体を重厚な装甲で覆い、その上面には本体の全長を超える程の巨大砲身がそびえる。
それは、宙に浮く"巨大な機動砲台"の姿だった。
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