5話ー3章 登場!!アイドル天使
「ここ、だよね…?」
上が吹き抜けになった1階にある広場。
手元に表示した画面に書かれた場所を確認したながら、望美はキョロキョロと周りを見る。
『ここの壁に第3西広場って書いてあるし、ここで大丈夫そうだねぇ』
ドロシーの言う通り、ここが1回戦の会場で間違いないようだった。
「大会の参加者や観客がホール中に散らばったからか、人がいないのが不安ですわね」
巻宮の言葉に、不安感の正体はそのためかと望美は心の中で納得する。
ここは大きな広場にも関わらず、今は人の姿がまばらで少し寂しい場所に見える。
実際、望美と巻宮以外には3人しかいない。
ちなみに、晴香は木場の応援に行ったので、ここにはいなかった。
「さて、お相手の方はどなたですかね?」
そう言って、巻宮が周囲の人を見る。
すると、対戦相手はすぐに見つかった。
デッキホルダーを手に持った可愛らしい少女がこちらを見ていたからだ。
「どっちがワタシの対戦相手なのかな、かな?」
望美たちの腰に巻かれたデッキホルダーを見ながら、その少女が声をかけてきてくれた。
その子は、フワフワとしたピンクのワンピース姿の可愛らしい少女だ。
長い金髪を後ろで2つに結び、被ったマリンキャップのツバの下から眩しいまでの笑顔がのぞいている。
花がある、とはこういう子のことを言うのかな、と何となく望美は感じた。
「あ、相手は、わたしです…」
望美はオズオズと手を上げ答える。
「お、キミの方かぁ♪」
そういって、その子は望美の顔をジーと見つめる。
マジマジと見られるのが恥ずかしくて、望美はつい視線を外してしまう。
しばらく見つめた後、その子はニコリと笑って言った。
「じゃあ、早速やろっか?」
「は、はい!!」
広場の中心、少しの距離を開けて望美とその子は対峙する。
「あっ、自己紹介まだだったねっ? ワタシは"
「えっ…!?」
その名前に望美は聞き覚えがある気がした。
それも、つい最近聞いた気がする。
ふと横に目を向けると、ドロシーが目を真ん丸にしていた。
『ま、まさか。本物の"
それは巻宮も同じだった。
「ほ、本物ですの…!?」
2人とも、まるで幽霊を見たかのような驚きようだった。
…………、あっっ!!
数瞬遅れて、望美も思い出す。
その名を聞いたことがあって当然だった。
ほんの数日前のドロシーのセリフが頭で再生される。
――超人気アイドルユニット、"シャイニードロー"をご存じない!?―――
そうだ、目の前にいるのはそのセンターを務める少女――。
"星見ココロ"、その人だった。
「そうそう。一応オフだから、あんまり騒がないでいてくれると嬉しいなっ☆」
そう言って、彼女はイタズラっぽく笑った。
● ● ● ● ● ●
―――――――― ニューロビジョン「接続完了」 ――――――――
―――――――― 〈クロス・ユニバース〉「起動開始」――――――――
対峙する2人の視界にシステムメッセージが流れる。
それと同時に星見ココロの隣にパートナーとなるユニットが姿を現す。
「ワタシのパートナーはこの子、《
ココロの宣言と共に、アイドルの様な衣装を着た天使が姿を現す。
ヒラヒラとフリルの付いた赤いワンピースタイプの衣装を身にまとい、その手には天使の羽根をイメージさせる意匠のマイクが握られていた。
『きた、きたーッ!!ココロちゃんのパートナー、《フィセラ》だぁ!!』
その興奮気味な叫びは無視して、望美は自分のパートナーとしてドロシーを見せる。
ドロシーの出現に合わせて、5枚の手札が出現して右手首に魔力の腕輪が現れる。
「さあ、ワタシのターンからいっくよぉ」
----------------------《1ターン目》----------------------
〈玉希 望美〉 〈星見 ココロ〉●
ドロシー Lv1 フィセラ Lv1
Lp 1000 Lp 1000
魔力0 魔力0→4
手札5 手札5
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ココロは手札を見ると、その1枚選び宣言する。
「まずはこのカード、永続アイテム《スターライト・ステージ》!!」
それと同時に、ココロと《フィセラ》を中心としたライブステージが出現し、スポットライトが1人と1体を照らす。
「その効果で《フィセラ》ちゃんのレベルが2アップするよ」
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《スターライト・ステージ》
Lv2 永続アイテム
タイプ:光、建造物
●:ターンプレイヤーの「歌」ユニットのLvは2アップする。
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《歌唱天使 フィセラ》Lv1→3
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輝くスポットライトの中、ココロはさらに手札1枚を天にかざす。
「《フィセラ》の効果発動ぅ!!手札1枚をデッキの歌カードと交換するね」
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《歌唱天使 フィセラ》
Lv1/攻撃力100/防御力100
タイプ:光,天使,歌
●:1ターンに1度、手札1枚を捨て札にして発動できる。
デッキまたはお互いの捨て山からタイプ「歌」スペル1枚を手札に加える。
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傍らの天使の全身が光ると、ココロが天にかざしたそのカードはその姿を消し、別のカードがその手の中に現れる。
そして、現れたそのカードをすぐさま使う。
「さあ、奏でるよ!!響け、《祝福の歌》!!」
その宣言と同時に、華々しい音楽が流れ始め、合わせてステージのライトが盛り上げるように光を放つ。
続くように、《フィセラ》がマイクをかまえると歌い始める。
歌詞は聞いたこともないような言語のもので、その意味は分からない。
しかし、その歌声は聞く者を癒すような、美しく可愛らしいものだ。
いや、その歌声は《フィセラ》のものだけではなかった。
星見ココロもまた一緒に歌っていたのだ。
『まさか、ココロちゃんの生歌を聞けるなんて!!感激ぃ~』
ドロシー程ではないが、望美もまたその歌声に、胸の辺りをわしづかまれるような感覚を覚える。
ハッキリとは言い表せない。
だがしかし、それには確かに心に響く何か"力のようなもの"を感じたのだ。
「歌声は素晴らしいですが、《祝福の歌》の効果はただのライフ回復。問題はありませんわ、望美さん」
観戦している巻宮も同じくその歌声には圧倒されてはいたが、戦況を冷静に見ることが出来ていた。
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《祝福の歌》
Lv0 通常スペル
タイプ:歌
●:タイプ「歌」ユニットの数×100のLpを回復する。
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〈星見 ココロ〉Lp1000→1100
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そう、確かにカードの演出に合わせたパフォーマンスは凄いもののゲーム内容としては僅かなライフを得ただけ。
試合そのものへの影響は微々たるものなのだ。
「それはどうかなぁ」
「えっ!?」
望美の思考を遮るように、ココロはさらに手札から1枚のカードを場に出す。
次の瞬間、そのカードが光を放ち望美を包む。
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〈玉希 望美〉Lp1000→850
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「な、なんで!?」
光が消えると共に、望美のLpが減少する。
「ワタシは永続スペル《魂に
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《魂に響く歌声》
Lv2 永続スペル
タイプ:歌
●:「歌」スペルが詠唱されたターンの終わりに発動する。
非ターンプレイヤーは「歌」ユニットの合計Lv×50のLpを失う。
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「今日の特別ステージのチケット代は、ライフでお支払い願います、ってね☆」
そう言って、ココロはイタズラっぽく笑った。
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