第27話 世界が滅亡する前に考えておくべきこと
少し前のことだが、世界が滅ぶという予言があったらしい。詳しいことはわたしは知らない。家人がそういう類に興味があるようで、話していたことを小耳にはさんだだけである。
こういう世界滅亡の予言に関して、それを信じている人がどういう態度を取るかと言えば、まあ、「当たらないでほしい」というものだろう(中には、「当たってほしい」と思うへそ曲がりもいるだろうが)。
そんなに心配しなくてもいい。
なんとなれば、世界はいつか滅ぶからである。それは、もしかしたら今日かもしれないし、十年後かもしれないし、千年後かもしれない。その予言は外れたようだけれど、いずれ世界が滅ぶことに変わりはない。
「そのいずれが『いつ』なのかが大事なんでしょう?」
という反論があることは想像に難くない。そのいずれが自分が生きている今日なのか、自分が生きていない千年後なのかでは、話が変わってくるということだろう。
気持ちは分かるが、あなたが世界を創造したわけではないのだから、いつ世界が滅亡するかをあなたが選ぶことはできない。そうして、これは、何も世界滅亡などという大それた話でなくても、あなた一個の生死に関しても同じことである。あなたが生まれてくることを意志したわけではないのだから、あなたが死ぬことを意志することもできない。
あなたは今日死ぬかもしれない。世界が滅亡しなくてよかったと思っていたら、交通事故に遭ってポックリ逝くかもしれない。自殺を別にすれば、死ぬときを選ぶことはできない。今日でなくても、あなたはいずれ必ず死にます。何も心配する必要は無い。
「世界が滅亡するかも」なんてことを考えて騒ぐ前に、自分一個の生死を考えてみた方が良いのではないか。生死という形式が動かしがたいものだということを知れば、世界が滅亡しようがしまいが関係ないという気持ちになることができる。
自分の死なんて考えたくないという人もいるだろうが、それを考えずに、世界の滅亡、すなわち、世界の死を考えるのは、順序としてはやはりあべこべなのではないかと思う。
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