第22話 「何でもいいから書け」の間違い

SNSの発達によって、誰しも自分の考えていることを、気楽に発表できるようになった。これは、一面ではいいことだろう。しかし、物事は一面からだけ見ることはできず、裏に回って見ると、一面でいいことにも、悪いところがあるということに必ずなっている。


気楽に発表できるようになったことで、言葉を惜しむという気持ちがなくなった。思っていることを糞尿のように垂れ流すことを恥ずかしいと思わなくなった。作家やライター志望の人へ、「とにかく何でもいいから文章にして発表し続けなさい」というアドバイスをしているのを、SNS上で散見する。


何でもいいから!? 


あなたは子どもの頃、お母さん、あるいは、お父さんからの、「今日の晩ご飯、何にする?」という問いかけに、「何でもいい」と答えたことは無いだろうか? 「何でもいい」というのは、「どうでもいい」ということである。晩ご飯がどうでもいいから、何でもいいと言うのである。同じように、何でもいいから文章にするというのは、文章なんてどうでもいいと思っているのである。そんな人が、どうして作家やライターになれるだろうか。あるいは、今時の作家やライターというのはそういう存在なのか。少なくとも、わたしは、そんな人の書いたものなど読む気にならない。


あなたは、ラブレターを書いたことはあるだろうか。ラブレターでなくともよい、大事な人に手紙を書いたことは? 大事な人に手紙を書くとき、誤解が無いようにと、いやただそれだけではなく、自分の気持ちをしっかりと分かってもらえるように、あるいは、気持ち以上が伝わるように、慎重に書くことだろう。そのような文章こそ、その相手だけではない、万人にとって読む価値があるものとなる。


あなたが書こうとしていることは、果たして書くべきことなのか、書く前にちらとでも考えてみよう。それがあなたの書くものの価値を確実に押し上げる。

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