DHARMA HEARTS -ダアマハアツ-

すがろき

信楽 雪慧

0% Prologue

 いままで全てがいい感じだった. 進学校に入ってある程度の学力をつけて大学院まで進んできた. 気づけば浪人も留年もせずにストレートに修士2年になっていた. しかしながら, 就職活動ではまるっきりだった. いわゆる自己分析というやつもろくにせずに, 妙な自信とへんてこな自身とカバンだけをもって人事とお話を繰り返す毎日が二ヶ月続いていた.


「なにが、足りないんだろう。」


 だめだ. 落ち込むばかりで何も浮かんでこない. 自信はあるけど無い. そんな心状だった.


信楽しがらき雪慧ゆきさとと申します。本日はよろしくお願いします。」


 何回言ったことだろう. 相手はどんな気持ちで聞いているんだろう. 特に教えられた勉強以外は何もしてこなかった僕に, 自己PRすることなんてなかった.


 実の所は, 就職はしたいのだがイマイチ身が入らない. はたから聞くと何を言っているんだと思われるだろう. でも, 本音はそう. どこか勝手に採ってくれ. そんな甘えた考えを自分の中の奥底へ沈めてある.


 またいつものようにスマホを見る. 不採用を告げるだけのお祈りメールに溢れているメールボックスはもう開かん. しかし, いつも見なれたホーム画面には, 見慣れないアプリアイコンが堂々と僕を迎えた.


「こんなん入れたっけ。。。-ハイフン?」


 研究室の片隅の席で僕はスマホの画面を目を細めて凝視した. インストールした覚えが全く身に覚えがない. とりあえず消そうとも思ったが, 何となく起動させてみた.


 すると, 真っ黒の画面を背に小さな白文字で,


 " Though there is no world after death, there is a world before life. Do you believe the universe really exists? The answer may be at the furthest part of the dungeon."


 と表示された. 英語はそこまで苦手じゃない上に簡単な文章なので読めた.


「死後の……世界はないけど、生前の世界はある……あなたは本当に……宇宙がることを……信じているか……その答えは……ダンジョン……の、最果てにあるかもしれない……??」


 ぼそぼそと声に出してしまったので周りの研究生の視線を感じる. 僕は気にしない.


 翻訳は大方合ってると思うが肝心の意味が謎めいていた. 画面タップをしてみた所, いつも見なれたカメラ許可のダイアログが表示された. 僕はいつも何も考えずに許可を出すタイプなので, ここでもそうした.

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