2018.10.5. 校舎裏、供養塔にて




学校だ。


中学校かなぁ。


冴えないテニス部のやつがいて、


なんかその学校には伝説みたいのがある。


塔がある。

何かの供養塔だったかも。

でもそれはとっても高い。


4階の校舎と同じぐらい高い。


ある時そのテニス部のやつが、

(この方を仮にAさんとしましょう)


昔何かの事件に巻き込まれてたんだ。


誘拐…………されたとか、そんな感じ。

死んだやつも、その事件にはいた。


Aは、生き残り。

もともとだけれども、

事件後も、ぼーっとしている。

テニスは下手だ。


何があったの?

ときく。


驚いたことにAは答えた。


「ぼくは攫われて、

そして 死んで(死んだ人がいて?)、

それでこっちに返されたんだ。

あの人(的な誰かの存在、おそらく犯人)が、

ぼくをこっちに寄こしたんだ」


みたいなことを言ってた。


「えーー、まじぃ?」

みたいに返事をすると、

そいつはいつもの感情が読めない、

にこぉーっとした顔になった。


「それでね、ぼくはね

あの塔にのぼったんだよ?

(上らさせられた?)」


Aが塔に上っていたというのは有名だ。

下から叫ぶ教諭たちの声に、

ようやく我に帰ると、

たよりない足がかりや今にも外れそうな取っ手、何よりその高さに恐怖していた。


「おりられないよーたすけてよー!」


と喚いていたのは、

わりと生徒も大勢見ていた。


Aは、無意識にその塔に上っていたらしい。



それから、

紆余曲折?

まぁ、ともかく、


私は仲間と勝手に盛り上がって、

あの塔に上ることにした。


一番乗りに、私がいく。


塔は、校舎裏にある。

北側だと思う。

日陰になってる。

校舎の窓から伸ばせば届きそうなところにある。

互い違いの位置に柵のような、

手摺のようなものをまとっていた。

根元こそ、墓碑のような、

なにかしらがあるのだけど、

そこから、柵もどきをたよりに上ると、

一定の太さ、、ギリギリひと抱えにできないかなぐらい、になる。


下を見ないように、降りる時のことを考えないように、

私は上っていく。

だんだんと手がかりが減っていく。

十字架ではないけれど、

どこか意味あり気な紋なんかを掴む。


上の方まで来た。

もう何かに掴まるというよりは、

塔に抱きついてるという感じだ。


下の連中が何か言っている。

とにかく私は、

上ったぞ!

もうおりるぞ!

みたいなことを言ったと思う。


でも、足がすくんで

おりるのはかなり難渋しそうだった。


そのあとはあまり覚えていない。

他の奴らが、上ったのかどうかも。



たぶん数日が経った。

トイレで会った、同じ部活の

なんとかは、どこかよそよそしかった。

というより、

恨みがましい・羨ましいという気持ちを

冷たいあしらいでどうにか抑えているように思えた。



私は、せっかく塔に上ったのに、

名前を書くのを忘れた!

と気がついて後悔していた。


ちっきしょー

と仲間にしつこいほど文句を言った。


「もう一回……のぼろうかな」


私は言ってみた。

でも仲間も私自身も、

それがいかに危険かわかっていた。


単なる高さがどうとかそういうのじゃなくて、

もっと、口に出すのもはばかれる、

呪い…………というような

不確かな理由から。


その塔は北校舎側にあるから、

私は下から上るのはやめて、

4階の教材室?

みたいなとこから飛び移ることにした。


それでてっぺんぐらいにしがみついて、

サインペンで裏っかわに名前を書こうとした。


そして驚愕。

(Aの名前が書いてあったか、

or

おびただしい数の名前……

たぶん誘拐された生徒たちの名前が

びっしりと書いてあったか)


とにかく私は身の危険を感じた。


おーこわ。


………………




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