マーキュリーと話術スキル・EX
「私、は……マーキュリー・ヘクトりゅ……ヘクトりゅん…………ヘクトルーン、です。ヴァンパイア族の……父親と、猫人族の、母親の間に……生まれた混血種、です。年は、136歳です……メイル、さんと同じ五大臣で…法務大臣、です。目は、見えません」
ルークの屋敷一階、応接室。
マーキュリーはフェアに抱きしめられながら自己紹介をした。いや、抱きしめられ、ツインテールの赤髪を弄られながらである。目が見えないと言った後、フェアによって目を両手で塞がれた。
マーキュリーがくすぐったいのでなんとか外そうとしていると、フェアがマーキュリーに質問した。
「なんで目が見えないの? ……あ、ごめんなさい……」
アランが発した、不躾に聞くんじゃないオーラを感じ取ったフェアは即座に謝った。それを見たオーラの発信源が主人に言う。
「お嬢様はもう少し、人の事を考えてから何かを言った方が良いですよ」
そんなアランの苦言を聞いたフェアは、顔を赤くして反論する。
「うるさいわね下僕! あなたの方が人の事考えてないじゃない!! メイルもそう思わない?」
「え!? あ、いえ。べ、別に私は!!」
急に話を振られたメイルも顔を真っ赤にして反論した。
(別にメイルやマーキュリーの好意はずっと前から気付いておるのだがなぁ……そして、この小娘……一時の気の迷いであれば良いが……)
アランはその反論の様子を見てひとり静かに悩む。
すると、マーキュリーの目を覆うのをやめたフェアがアランに向かって質問を投げかける。自身のことについて何やら考えているのを察してか否か、アランが考えごとを始めた瞬間に話かけている。
「ねぇ、下僕。五大臣ってなんなの?」
「あー……説明してませんでしたね。五大臣とは、司法の法務大臣。この司法の大臣がマーキュリーです。警務の警察最高長官。経済や財政管理の経済大臣。法律などを作る立法の首相。軍務の軍務大臣兼、魔族将軍。これはメイルのことです。」
「それで?」
真面目な面持ちでフェアはアランに説明の続きを促す。
「五大臣はそのついてる職によって個人では我に次ぐ決定権を持っています。例えば軍務ならば戦争のやり方などに関して我の反対か、五大臣の三人以上の反対、貴族院・衆議院で4分の3以上の反対が集まらなければ、そのままその戦争のやり方でいけるという事です。……理解できました?」
「……ええっと……?」
アランが一応フェアに理解のほどを窺うと、途端に真面目な表情が崩れ、曖昧な表情が姿を現した。
「……後でまた詳しく教えますよ」
骨折の痛みを堪えながら流暢に話したアランの説明が終わると、マーキュリーが口を開いた。
「私は、魔王様に……命を、救われた、んです」
「……良いのか? マーキュリー。」
マーキュリーはこくんとうなずいた。
「私の、父親は……ヴァンパイアの、貴族で……母親は、その使用人、だったらしい、です」
「……らしいって。どういうこと……?」
フェアの問いについて、アランは精神が荒ぶらぬように強く自制をしながら語った。
「マーキュリーは捨てられていたのだ。使用人との間に子どもが出来たことを噂されるのを恐れた、父親によってな」
その言葉にマーキュリーが続く。
「私は父親の、ヴァンパイア、の血を……多く継いでいた、から。幼児という弱い時に、日光にさらされた……私、は、赤ん坊…だったのもあって、死にそうに、なっていた……らしい、です」
「我はその時
「魔王様の、せいじゃ……無いです。その後…私は、魔王城で、育てて、いただきました。魔王様は、親のように、思ってます」
メイルは二人の語りを厳粛に聞いていたが、メイルの最後の言葉を聞いて深く溜息をついた。
フェアは紅茶を一口飲むと、澄ました表情で口を開いた。
「……つまり、今の話からすると」
「……どうしました?」
アランが不思議そうに言うと、フェアは新たに口を開いた。
「わかったことがあるわ。つまり、下僕はロリコンってことよね?」
「おい待てどうしてそうなる」
「……ロリコン……? なんなんですか?それは。」
普段から本をあまり読まないメイルが疑問の声をあげるとアランが全力で否定の声をあげる。マーキュリーも目が見えず本が読めない為、こちらも言葉の意味が解らずに首を傾げていた。
「誰がロリコンだ……ですか! 我はそんな気はさらさら無いわ……です!!」
「ロリコンってなんなんですか?」
「ロリコンっていうのはね「うわああぁぁぁぁ!! 何を教えようとしている! ……んですか!!」うっさいわね! 説明できないでしょ! 死ね!!」
「やめろ! そんな事を教えるな!」
アランは叫んだ直後に死んだ。アランの魔力が消えたことに驚いたマーキュリーはフェアに向かって怒気を放ったが、すぐに生き返らせることを教えたら納得がいかない表情ながらも機嫌を直した。
数時間後、生き返って屋敷に戻ったアランは、言葉巧みに都合良く教えられた情報を信じた気まずそうな部下二人の対応を見て泣き崩れた。のはまた別の話。
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