現在から三時間半前! 幸薄の始まり
問題の少女は地上界にて、復活の台座に片手を添えて一人言をつぶやいた。復活させるための台詞である。
「私の呼びかけに応じ、魔王アラン・ドゥ・ナイトメアよ、復活しなさい」
すると、こういった復活とかにありがちな、台座がまばゆいばかりにパァーッと光り、なにか上の方からも謎の光がバーッと降りてきて、その光の中でアランがゆっくり降りて来る。
なんて事を想像した誰かがいるみたいだが、そんなめんどうくさいことを怠惰な閻魔がするわけがなかった。
台座が光ったりはしたものの、それは台座の奥に置いてある棺に向かって台座から光線が向かって言っているだけであり、棺がガタっと動いた瞬間には中には何もいなかった。
覗きこんでいた少女は首をかしげる。
「……失敗したのかしら」と、少し不満そうにつぶやきつつ。そして手順をまちがえたのかと思い、少女が手順の書いてある石碑を振り向き見ると、そこに“魔王”がいた。
狼の骸骨に鹿の角が生えたような頭の(鹿の角を入れずに)三メートルほどの身長の人物がドス黒いローブを身にまとい、鋭そうな爪の生えた右手で杖を持ちながら、石碑に腰かけていた。オーラからして魔王って感じを少女は感じた。
何故かその人物の登場の仕方に、えも言われぬ苛立ちを覚えながら少女は黙る。
アランは少女が黙った事に何故か漠然とした何とも言えない謎の恐怖感を覚えつつも、ありがちな言葉を口にした。
「感謝するぞ、人間よ。できる限りの事なら願いを3つ叶えてやろう。なにが望みなのだ?」
「…………」
「どんな物好きな娘かと思ったが、何とも可憐な娘ではないか。望むなら我の妃にしてやってもよいぞ?」
これはアランの本心からの賞賛の言葉であった。少女の容姿はアマテラスやリリスなど、天界でも屈指の美女たちにも負けるとも劣らないほどの美貌だったからである。
その言葉の大部分は冗談で構成されてはいたが。
少女は表情を変えず、重々しく口を開いた。
「……第一の願いよ。一度死んで、セクハラ発言をしたことを後悔しなさい」
「は?」
魔王は思考が停止した。それはそうである。復活したすぐあとに、復活させた本人に死ねと言われたのだから。数十秒間何もしなかったためか、閻魔の命令どおりアランは“死んだ”。
アランはあの世に来て、すぐに閻魔に連絡を取った。
「閻魔!どういうことだ?何が起きた!」
天界の電話の向こうの閻魔の声は完全にひきつっていた。
「え、えーっと。君が彼女にセクハラ発言をしたから、死ねと言われたんじゃないかなぁ・・・。」
「妃にしてやろうかといtt
ただけ、ってクオォッラ!!」
謎の雄叫びをあげて、目の前にあった棺桶のふたをブッ飛ばすアラン。石造りの棺に蓋が洞窟の天井に当たり、粉々に砕け散る。キョロキョロとまわりを見、左を向くとあの少女がいたため、数秒間キョトンとした顔で見た。
アランは狼の頭骨のような頭をしているが、顎関節のように見える部分が笑顔を表現すると吊り上ったりするため、アンデット等よりもはるかに表情がわかりやすい。無論、口元で感情が表現できるようなものだけであるが。
そして数秒後。アランはハッとした後に怒った顔になり、魔王らしい怒気と覇気を孕んだ声で元凶に怒る。
「何がしたいのだ! 小娘ぇ! 何かそれ相応の理由があるのであろうなぁ!!」
その言葉を聞いた少女は笑みをこぼし、
「クスクスッさっきの間抜け面、最高ね。ゾクゾクしちゃうわ。しかし、小娘なんてひどいわね。もう一度反省しなさい。第一の願いよ。……死んで」
アランは我って復活運が無いなぁと静かに思う。死ねと言われたため、自分に魔法をかけて死んでも良かったが、天下の魔王の一人の死因が自殺。というのが、かなり嫌だったため閻魔に殺されるのを待った。
アランはまた死ぬことが無いように冷静になろうと深呼吸をした。ただ怒りの為か、まるで興奮した牛のようになっていたが。
そんなアランを見て、少女は「フフフフフッ」と笑っていた。
「……そなたは何がしたいのだ。それ以前に何者だ」
「あら、そういえば名を名乗っていなかったわね。私は性をハートレス、名をフェアと言うわ。とりあえず、第一の願いよ。」
少女、フェアは気品あふれる声で自己紹介をした。
フェアは黒を基調として仕立てられたドレスを着て、魔族特有の白い髪を長く伸ばしていた。
アランはハートレスと言う名を聞いた時、何か聞いたことのある性だなと思ったが。ぱっと思い出せなかったのでどうでもいいかと思い出すのをやめた。
「何をいうつもりだ。まさか、また死ねと言うのではあるまいな? そんな無益なことを繰り返すだけならば……殺すぞ」
「血気盛んねぇ。そういうの嫌いじゃないけれど……。一つ目の願いは……私が“老衰”で死ぬまで、魔王アラン・ドゥ・ナイトメア。貴方は私の下僕になりなさい!!」
「は?」
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