ままならない夢を見た
音菊
マトリョーシカ
恐竜に追われている。ティラノサウルス? アロサウルス? とやらに似た形の大型肉食恐竜が、今にも私を喰い殺そうとしている。勿論私は必死で逃げる。しかし、運動不足の脇腹は痛み、ヒューヒューと喉が鳴り、足は縺れる。停止は即ち死である。恐竜のおぞましい足音が近付いてくる。
嫌だ、死にたくない。確かに碌な人生は送って来なかったけれど、恐竜に食われて死ぬとかどれだけ罪深かったんだ。
最期の悔悟も虚しく、恐竜の巨大な口が背後に迫る。何を思ったか、私は振り向いてしまった。痛そうな牙が、唾液で糸を引いている。
ふと、恐竜の、体積率にしてはちっぽけなつぶらな瞳と目が合ってしまった。そこには何も、映っていない。私は観念して目を閉じる。
閉じた瞼の裏ではまた、同じような夢を見ている。同じような恐竜に追われ、同じような場所で動けなくなり、同じようなところで観念し、目を閉じる。そしてまた、同じような夢を見る。
だが、気付いてしまった。夢を経るごとに、あのおぞましい恐竜の口が徐々に近づいていることに!
この夢のハイエンドは、恐竜の臭くて暗い口の中かもしれない。
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