第263話 『赤い蜘蛛』のタトゥ

 ドアを開けた瞬間、隣りから出て来た不審な男と鉢合わせした。


「う……!!」

 一瞬、ボクは不審な男と顔を見合わせた。

 男はダークブルーのパーカーを着込んで、ニット帽にマスク、サングラスと全く人相は解らない。


 唯一、ドアノブを掴んだ右手の甲に特徴的な『赤い蜘蛛』のタトゥがあった。


「ン……!!」そのタトゥを見た瞬間、何かが脳裏をよぎった。

 逃げ出すように顔を隠した彼と擦れ違った時、甘い匂いが鼻孔をくすぐった。


 何処どこかで嗅いだ事のある『香水』だ。

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