第214話 人体改造オートマトン
俺は眼帯をつけ狼の姿のタウに跨がり、前線を駆け抜ける。
草陰から飛び出してくる鋭い太刀筋。
冒険者達が波状攻撃をしかけ、ロイスを足止めている。
ロイスは無表情でかつ最小限の動作で攻撃を去なしていた。
タウはしっかりと彼の後ろへ回り込む。
「いくぞ、イット!」
「ああ!」
草陰からタウの背中に乗り飛び出した。
「
俺は呪文を唱える。
すると魔法を完成させていた魔法元素を持つ左手から雷の弾丸がロイスの背中に向けて飛んでいく。
「ッ!!」
ロイスは振り向きざまに俺の魔法を叩き斬った。刀は電気を帯び、俺に向き直ると彼は少し驚いた表情を見せた。
「イット君……それは……」
彼が言い終わる前に俺は周囲の状況を確認しまた完成されている
「
魔法元素が地面へ落ちて溶けると、土を纏う鋭利な石がロイスへ向かって飛んでいく。刀で石を斬ると土や石に電気が持って行かれ元の状態へ戻る。
「
「……」
またも関した
先ほどの魔法と違い、着弾すると氷で拘束されことを察したのだ。彼はそのままの姿勢で俺へ向けて重心を傾ける。
だが、俺の方が速い。
「
「ウッ!?」
何も無い頭上から凄まじい風圧がロイスへ降り注ぐ。俺の奇襲に思わずバランスを崩し地面に膝をついた。タウに跨がり旋回しながら完成した
「
地面に押さえつけられるロイスに俺は落雷を落とす魔法を仕掛けた。
「……
ロイスも魔法を展開し、土の柱を屋根にして下降気流と雷を一度に防いだ。
「イット君……その身体――」
彼が俺に語りかけるその瞬間。
『ハァァアアアア!!』
「――ッ!?」
いつの間にか接近していたドラゴンフェイスフルプレートアーマーのロジャースさんが大剣で胴体を両断しようと横になぎ払う。
ロイスは咄嗟に剣で受け止めようとするが力にかかった重量が違いすぎる為、刀を擦らせ火花を散らしながら大剣を掻い潜る。
そのままロジャースさんの裏に回ったロイスがすぐさま後ろから斬りかかる。
「……クッ!」
しかし、彼等の間に割り込んできたリザードウーマンが持つ大盾に阻まれた。だが、刀を退かそうとせず盾を抑え続けると、徐々にリザードウーマンさんが後ろに後退りしていく。
「何だ? 急に身体が重い……」
ロジャースさんも自身の身体の異変に気づいた。
俺は完成している魔法元素を打ち消し、そのままに大盾から
手にスタッフを持ち直し、腕を指でなぞると青白い光の線が模様を作り浮き上がる。手が震えだし急いでエレメンタルスタッフを大盾に向けると凄まじい速度で魔法を展開した。
「
盾の表側から風が勢いよく吹き荒れる。リザードウーマンさんは持ちこたえるが、ロイスは吹き飛ばされた。
吹き飛ばされつつ刀を地面に突き刺し止まる。そのままロイスは未だ笑みを浮かべていた。
「イット君、それってまた禁術だよね。確か
「ああ……よくご存じで。さすが御曹司だな」
ロイスの言っていた通りこの禁術、
その効果は……
「魔法で自分の身体のパーツを組み替える魔法。よく使われていたのは背骨に脳の一部を直結させ、腕と背骨だけで身体を動かす。つまり脊髄反射だけで兵士を戦わせていた……ってどこかの歴史書に書いてあったね」
「そうだよ。
周りに隠れているであろう冒険者達にも見せるように手を開いてみせると、手の平に俺の目がある。この目は今俺の脳とはほぼ繋がっておらず、
背骨にも俺の脳が一部組み込まれそこで断面を完成させるアルゴリズムが形成されている。
手の視覚情報から断面完成指示へのやりとりが腕の区間だけでしか行われておらず、無自覚に魔法を完成させる。そしてスタッフの操作も同様に決められた手順でしか、今俺の片腕は動いていない。
ロイスは埃を払いながら刀を引き抜き土を払う。
「禁術の中でも、リスクが術者のみ。だから国家存亡のかかる時のみ使用することが許されている。でも、これは兵士と騎士に許された条件だから、ただの魔法使いであるイット君はアウトだと思うよ」
「そうだな……」
「そしてその魔法のデメリットは、君の身体自身の神経回路がぐちゃぐちゃになっている。転んだだけでも脳にダメージが入る状態と言うこと」
そう……この魔法は、術者の身体を改造し本来の神経系の位置は変わり軽い衝撃で、本来のその身体にないはずの神経を損傷する場合がある。
少しのかすり傷で、もし脳の神経細胞のある部分に攻撃を受ければ植物状態になる可能性も高い。
ロイスにこの魔法がばれいようが何だろうが、近づかれたら終わり。
「俺だってこんな欠陥みたいな魔法を使いたくなんてない。法律を破って投獄されるのも割に合わない」
ため息交じりに俺は呟く。
「でも、そんな法律を気にしてる状況なんて今までなかった。大切な物を守り、時には理不尽のあまりプライドを守る為に使ってしまった時もある。本当に哀れで浅はかだよ。俺という人間は」
俺はタウの身体をしっかりと足ではさみ、片手のスタッフをロイスに向けた。
「だから、俺が世界の理を犯してでも、他の誰かがちゃんと法律を守っていられる世界にしないとな。俺がこんなことをやってる意味がなくなるんだ」
「はは、そうだよねー」
馬鹿にしたようにロイスは刀を構える。
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