第3章 味方も敵も

第11話 合流

「むぅ……」

「あ、あのー⁈」

「…………」

 教師と親との三者面談のような緊張感に、アーサーは口のなかがカラカラに渇いていた。叱られるのを待つ子どものように正座して下を向く。反省しているように見せておいて、相棒に叱られるこの状況をどこか懐かしんでもいた。ほんの数日気を失っていたにすぎないのだが、もう歯車は転がってしまったから、引き返せないのである。ならば、せめて今この瞬間を楽しまなければ――って痛ッタァ⁈

「あー……。やっちゃいましたねー」

「ちょ、マーリン何やってんの? アーサーまだ病み上がりだよ?」

 マーリンの同僚のポポロとメトリスの言葉で俺は事態を把握する。おい我が嫁、今俺の身体に電撃走らせなかったか? アーサーはジト目で抗議するが、マーリンは虚空を見つめたまま心ここにあらずであった。

「ユルサナイ」

「いや、アーサー反省してるみたいだし?」

「うん、反省してます……」

 同僚のとりなしもむなしく、マーリンの怒りモードはますます沸騰して――あれ、沸騰はしてないみたい。なんか調子が狂うな。

「え? 何言ってんのポポロ。私はクソ相棒はもう許してるよ」

 酷い言われようだが、相棒に相談もなく無茶をしたアーサーに意義を申し立てする権限はない。

「え、だって」

「私が許せないのは、自分のこと。相棒にこんなことさせちゃうくらい、頼りなかったかなあ、って」

「そ、そんなことないって。俺はマーリンのことちゃんと信用してムグホゥ⁈」

 急にポポロに口をふさがれ、アーサーはむせ込んだ。

「何するんですかポポさん」

「ほら、マーリンまだ話したいことあるみたいだから」

 小声でそう言ったポポロの視線を追いかけるようにマーリンをみれば、確かに言いにくいことを舌の上で転がしているようだ。マーリンもアーサーと同じように、口が渇いているのかもしれない。

「――あのねアーサー」

「はい」

「アーサーのいうことが本当なのなら、王国が存在する限り魔王も存在し続けるってことよね」

「うん……残念ながら、王国と魔王が通じていることは確かみたいだし」

「そのことなんですがー」

 アーサーとマーリンとポポロが主にしゃべっており、話の行く先を見極めるように口を開くことがなかったメトリスが、いつもの間延びした、それでいていつもより格段に大きい声で話を遮った。

「それ、本当なんですか」

 マーリンとポポロはそれぞれメトリスと目を見合わせ、そしてその目をすぐに逸らした。アーサーだけが、気まずい沈黙の意味を知らない。

「アーサーは、嘘つかないと、思うから」

「私だって、アーサーのことを信じてる。けれど、アーサーのいう根拠は全部憶測だよ。国が、よりにもよって敵と通じてるなんて、信じられないよ」

 メトリスの父親は、政府高官だった。父親が語り聞かせてくれた誇るべき王国をメトリスは信じたいのだろう。

「証拠なら、もうすぐ来る」

「え……」

 アーサーが告げた。そしてそれはやってきた。

「禁忌魔法を行った者の家はこちらか」

「……誰?」

「今はなき王国――メタの王子様だよ」

 アーサー以外の全員が、信じがたい言葉を聞いたという風に眉をひそめた。大陸において最初に魔王軍の侵略を許したメタ王国に、いい感情を持つ者は少ない。

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