聖女のこっそり冒険活動
俺はアルフに頑張ってと声援を添えてあの生意気野郎の交渉へと送り出した。
その足取りは酷く重そう。ちょっと強引にお願いしちゃったかなと少し反省。もし失敗に終わっても温かく迎えてあげよう。
壁に手を当てて暫くの反省時間を終えて見事に復活。
よし、許可が下りてる街へと出発しますかね。一旦、お部屋へと戻ってフリフリなドレスを投げ捨てる。その様子を見掛けたシーナさんと目が合い青褪める。涙と鼻水を流しながら説教を受けて、その後ローブへとお着替え。
今回の街のお供は前回の巡礼でお世話になった護衛騎士の一人。彼の瞳は信者のそれと同じで俺を女神呼ばわりするけど仕方ない。街に出れるならこれぐらい許容範囲だよ。
それと信者といえばお姫様のスゥ様。
街に黙って行ったら後々寝込みを襲ってくる可能性があるので、一緒にどう?と誘いに行った。
けれども、なんとも珍しいことに用事があるということで断られた。
別に良いけども、別に良いけども。
お誘いを断られてちょっと寂しい気持ちになったけど、お城を出て改めて町並みを再確認したらすぐに吹き飛びました。
街に繰り出したらまずやる事はお肉。屋台巡りを行なわなくては観光とはいえない。
顔を赤らめる護衛の手を取り引っ張るように屋台群へと突撃。はしゃぐ子供の面倒は恥ずかしいかもだけど我慢してね。
「おっちゃん、肉串2つちょーだい!」
「お、元気な嬢ちゃんだな。おし、もう一つおまけしてやろう。」
「おっちゃんありがとー!」
勇者やお城に居た人達は面倒臭そうな人達ばっかりだったけど、この聖都で暮らす人々は明るく気前の良い人が多いなぁ。
お小遣いから支払ってとりあえず護衛の人に買った肉串を一本あげる。
「はいどうぞ、今日の護衛料だよ。熱いから気をつけてね」
「そ、そんな女神様、受け取れません。崇高なる護衛は私にとって褒美に等しくございます。むしろ、私がお金を払っ…むぐっ!?」
やめられない止まらない発言を続けるそんなお口には肉串を突っ込む。
「じゃあ、これは命令。一緒に食べよ。でも、最後の一本は半分こね。」
「あぁ…女神様…。」
「おぉう!?」
口に肉串を突っ込まれたまま目を大きく見開き驚いていた護衛は、いきなり膝から崩れ落ちてそのまま俺へと祈りを捧げ始めた。
ついでにいつの間にか現れたエルドさんも一緒に祈り始めた。
大の大人が二人、小さくか弱い女の子に対して膝をつけて祈る。観衆が注目するのは必然の出来事。
俺は慌てて立ち上がらせに入る。
護衛はなんとか声を掛けたら立ってくれたけどエルドバカはまだ止めてくれない。
なので、急いでエルドバカの顔をギュっと鷲掴んで立ち上げる。
顔をギュっとしたまま尋問開始。
「エルドさんはなんでいるのかなー?」
「聖女様がいらっしゃるところに我らあり!我らは女神と共にあり!」
ミシミシメキメキと顔を鳴らしているのにこの発言。
信者の耐久力恐るべし。
今日、これ以上余計な事をしてほしくないのでエルドさんも引き連れていく。またどこで懲りずに布教するか分からないからね。
さて、散策再開。
本日の屋台巡り以外での大きな目的が残っている。
そうそれは冒険。
ふっふっふ、本日の俺は聖女アリスちゃんじゃなくて冒険者アリスちゃんなのだ!
護衛と末期患者を後ろに従い、この聖都の冒険ギルドへと突っ走る。
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