聖女アリスの個人レッスン2



ノートンを鍛えるべく始まったお稽古。

もう数日が経過した。

どうにかこうにか腕立て伏せが昼過ぎには終わるぐらいまでに成長した。

最初こそ指がへし折れる度に一旦休憩を入れていたけれど、もう一々折れても気にしなくなった。

遠い目をしてるけど一皮むけたね。



少しの成長のお陰で次の基礎を鍛えられる。

次は腹筋と思ったけどずっと同じ場所でじっと鍛えるのは辛いだろう。

なので、王都の外へとやってまいりました。

お外なのでロコルお姉ちゃんも同行しています。


外まで来た理由、そうそれは走り込みです。

巡礼時に見た限りだと連戦が続くと息切れや集中力に乱れが多々あった。

王都の外周でしっかり走って持久力をつけないとね。


外周は朝から歩いて夕方に一周。普通に走れば昼過ぎ。全力疾走なら2、3時間かな。

今から夕暮れまでだと2周が限界ってとこだね。



「じゃあノートン、夕暮れまでに最低2周してみようか。」


「は、はい!」


何故か目を逸らすノートンも全力で走らないと夜までに2周は難しいと思っているだろう。

かなり意気込んでいる。


「では、行ってきます!」


「あ、ちょっと待ってこれ背負ってってね。」


俺の隣にはちょびっと大きめの岩。

調査中に背負っていたものより倍近くある。


「………はい。」


ロコルお姉ちゃんと一緒に岩を縛ってあげる。女の子二人に囲まれているのに酷くげんなりとした表情。ちょっと失礼じゃね?


でも、お姉ちゃんが耳元で何か囁いたらすぐにシャキッとなった。おやおやこれはもしや二人はあれか恋ってやつか?


年も近そうだしめでたいね。


微笑ましい光景に思わずニマニマしつつ、逃げ出すようにノートンが出発した。


ちょっとこの間に一応乙女としてお姉ちゃんと恋話ってのをやってみようかな。

ノートンについてあからさまに聞いたら恥ずかしいだろうからそこはかとなく聞いちゃおう。


「ねぇねぇ、ロコルお姉ちゃんって好きな人とかいる?」


直球寄りになったけどノートンはぼかしたぞ。

少しだけ驚く様に目を見開くが真っ直ぐに答えてくれる。


「はい、いますよ。大好きです。愛しています。」


うひゃあ、聞いてて自分が赤くなっちゃう。

こんな熱い告白俺の乙女力じゃ耐えきれない。


「しょ、その大好きな人のどんなところが好きなの?」


「………そうですね、一言二言で伝えられないくらいありますが第一にその方の背中はとても大きく見えるほどに頼もしいです。私が悲しみの淵に落ちていた時にただ笑顔で女神のように救いの手を差し伸べて下さいました。その時からもう虜です。私は側にいることが出来るならどんなことでもしたいと思えるほどに。本当に好きです大好きです愛しています。全てを差し上げます。」


聞き終わって俺のお顔はより真っ赤っか。

今なら薪に火を付けれる。

ノートン愛されているなぁ。

ロコルお姉ちゃんの真剣な想いちゃんと伝わるといいね。


ん、なんで今寒気がしたんだろう?




女の子な会話でワイワイしているとノートンが激しい呼吸をしながら一周目を終えて2周目に突入していく。


「ノートンがんばれー!」


「ノートン様頑張ってください、じゃないと許しませんよ。」


ロコルお姉ちゃんの叱咤激励。

あえて冷たい言い方ながらも応援する。あれだね、大人の駆け引きってやつだね。


お姉ちゃんの声援に元気が湧いたのか、ノートンはまたシャキシャキビクビクと足に活力が戻った。

あー微笑ましいね。




夕暮れを過ぎてもうお空は真っ暗になる頃にようやくノートンが2周目を終えた。

死屍累々状態だけど愛の力で無事成し遂げた。



いいねいいね俺もいつかこんな恋をしたいものだ。



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