番外編 反省ノートンと本番は次回から
ぐすんぐすん、もうお婿に行けません。
癒やしなんて存在しない。
今日、それが証明されました。
見上げた私にいくつもの小さな拳の雨が降りました。
おかげさまで私の瞳はびしょびしょに濡れました。
だって、身体を丸めて完全防御の構えをしたのに横腹を蹴ってくるんですよ。
「まおうをやっつけろー!」
「おらぁ、いてもうたるでぇ!」
「おうどうだ、どうだ痛えか?」
無邪気な子供達はお家へ帰ったようです。
盗賊もびびるくらいのドスの効いた子供しかいません。
さながら院長先生は微笑ましく見守る親分かな。
何十分もの時間を掛けて打ちひしがれて泣くしか出来ない存在へとなりました。
先生が終わりの合図に手拍子をしてくださらなければまだ続いてたでしょう。
うぅ痛い。身体全体はもちろん痛むけどなにより心が痛い。
「はいはい、騎士様にたくさん遊んでもらいましたね。もう終わりましょうね。」
「「「はーい!!!」」」
子供達はしっかりと楽しんだご様子でもう私に興味を無くしさっさと院の中へと帰っていきました。
はは、子供って元気だなぁ。
「あらあら、ごめんなさいね。子供達ったら元気一杯で。」
そうですね、ずっと微笑ましそうに大人がタコ殴りに遭うのを見ていた院長先生。
「い、いえ子供が元気なのは良い事ですから。それよりこの体制で申し訳無いですが色々お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「あらあらどうぞ。私は椅子に座りますね。」
執拗な足責めからまだ復帰出来ない。うつ伏せの形で優雅に座り足を組む院長先生を見上げる。
今お手と言われたら素直に手を差し出しそうです。
「現在、元シェアローズ王国第一王子のフリードが牢より逃亡致しました。ただいまその行方を追っております。目撃情報などあれば教えて頂けますか?」
もう何度目かの定型文。
院長先生は少しの間顎に手を当て考え込んだ後に口を開く。
「そうですね今日まで頑張りましたからご褒美です。これは大した情報ではないかもしれませんが、糞豚野郎が逃亡した夜に王都から何人か出て行ったのを目撃したと聞きましたよ。方角で言えば北の方ですね。残念ながら途中で撒かれてしまったようですが…。」
「ぶふぅっ!?」
めちゃくちゃ貴重な情報。
思わず地面に向かって息吹を放ってしまった。
「とても有り難い情報です!どこでその情報を?」
当然の疑問。
一介の孤児院の先生がなんで詳細な情報を?
「我々、アリス教の目の広さを舐めないで頂きたい。信愛なる女神様に忠誠を誓った時から我々のこの目はアリス様の為にございます。貴方方の失態も全て映ります。精進しなさい。」
「は、はい。」
凄い怖かったです。
心の底から凍てつかせるその瞳が二度目はないと言っているようでした。
こ、こうして楽しい楽しい調査は一旦終了となりました。
今日は家まで上を向いて歩こう。
下を向いたら靴に水滴が落ちてしまいますからね。
地獄のような一週間だった。
これで準備運動ですって、はは笑えない。
これからアリス様の付きっきりでの特訓が始まります。
生きたい
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