帰還と末路
暴力系聖女を巡っての一連の事件は一応終了した。
あとはお家に帰るだけ。
アムネスを出てもう一週間。
ロコルお姉ちゃん達の待つ王都には明日の昼に到着予定。
この間も小さな村をいくつか渡ったけど着実に信者が増えた。というかエルドさんの布教範囲が広過ぎる。
あの人は本格的に俺を女神にでもさせたいらしい。今度会ったら殴っちゃおう。
そして次の日がやってきました。
もう王都が視界に映り始めた。久々に皆と再会出来るのは嬉しいけど、俺に刺客を送り込んできた元凶もいるんだよなぁ。
とりあえず一発くらい殴る権利あるよね?
この長い旅の間はほとんど戦闘にありつけなかった。魔物をちょこっとと護衛達との模擬戦のみで欲求が不満だらけだよ。
ずっと身体が疼いてたまらなかったもん。
でも、帰ったら楽しみな事が増えた。
なんとあの説教ノートンが俺に特訓を依頼してきた。今回の巡礼で思うところがあるらしい。
帰還したら何処かで大岩を用意しないといけないね。
特訓内容を思案してると気付けば王都の入口。
行きのように大事な出迎えは嫌なのでもうすぐ帰りますと知らせを送っただけ。
明確な日時は伝えてない、なのに入口を抜けると跪いて待機してここを通れと言わんばかりの人の道が出来ていた。
信者って怖い…。
目を凝らせば重度の感染者であるエルドさんの姿も。
あ、殴ろう。
俺が殴り込むために馬車から降りようとするもシーナさんが羽交い締めして降ろさせてくれない。
ここで降りたら大混乱が待ってますって。
大混乱?
関係ねぇ殴らせて、絶対あいつが信者を大集合させたんだ!
俺の願いも虚しく馬車は動き出す。
それと連動するように聖女コール。
聖女様に栄光あれと書かれた旗を掲げ並走するエルドの一味。
俺の溜息は王城に着くまで止まらなかった。
王城に到着して待ち構えていたのはいつものメイドと執事達の他にアルフとスゥ様、それとなんとロコルお姉ちゃんとミーナちゃんも居た。
へへ、頬が緩んじゃう。
思ってたよりみんなとの再会は嬉しい。
「みんなーただいぐふぅ!?」
「「「お姉様(アリス様)!!!」」」
俺が大きく手を振ってロコルお姉ちゃん達に近づこうとするよりも速く三人が突撃してきた。いやぶっ飛んできた。
思わず衝撃に息を吐き出し地面を削るも無事耐えました。
スゥ様とミーナちゃんは俺の胸に抱きつき顔を埋めたまま、そこで深呼吸しても空気入って来ないよ。
ロコルお姉ちゃんは目の端に涙を溜めて泣きながら笑っていた。
「改めてただいま。」
「「「おかえりなさい!!!」」」
こうして色々あった聖女アリスのはじめての巡礼は終了した。
それと最後に報告。
客間で待っていた国王から教えてもらった。
なんとあの珍獣ことフリードをついに捕まえたそうだ。やらかしまくったし仕方ない。自室からはいくつもの証拠も見つかり残りは本人から自供してもらうらしい。
あの液体の出所とか気になるもんね。
ただ当の本人は喚いてばかりで話にならない。しばらくは牢屋で幽閉してしっかりと反省してもらう予定。
今までの豪勢な生活から一変するんだからすぐに参って全てを吐いてくれるでしょう。
数日後、教会に戻っていた俺に報せが届いた。
もう元王子となったフリードが逃亡したと。
看守を務めていた者達は何かされたのか眠り伏していたらしい。
もしかしたら、アムネスで出会った真っ黒に身を包めた男達が助けたのかもしれない。
珍獣はめでたく賞金首へと昇格した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます