領主様も憤慨



そこそこ長めの旅路の末ようやくアムネスに到着。

でも、俺達の出現に随分と驚いている。


事情の分からないまま領主様のお抱え兵士のハイドンさんにお屋敷へと案内されることに。

馬車の窓から映るこの町の住人達はどこか表情が暗い。他の町であった盛大な歓迎が無いだけ気楽でいられるけれど、兵士達の慌て具合から推測すると何かが起きたのかもしれない。



そんな事を考えている内に屋敷へ到着。

俺達の訪問は急にもかかわらず、馬車の外にメイドや執事達が待機していた。

どこも徹底的に鍛えられているね。


ハイドンさんを先頭に領主様の所まで移動中。


案内されたのは客間。

中のソファで待っていたのは、あごひげが容姿により磨きをかけている素敵なおじさま。

ただ表情は俺を視界に捉えたら目を見開き少し驚いている。

なんでだろうと俺は首を傾げる。


「い、生きておられたのですか。よくご無事で…ございました。」


おっと、いきなり瞳を潤ませたかと思えば目頭を押さえ始めちゃった。

と、とりあえず挨拶しとこ。


「えーあの、初めまして聖女を承りましたアリスと申します。大丈夫ですか?」


「これは失礼致しました。 貴方様が亡くなられたとお聞きしましたので…。私は、ロンベルト領領主リード ロンベルトと申します。本当に良かったです。」



まだ感極まった様子で涙を浮かべるものの俺の手を握ってとても喜んでいらっしゃる。

さてさて誰が俺を死んだことにしたのかな?


「すみませんがいくつか質問をしても宜しいでしょうか?」


「あ、はいどうぞ。なんなりとお申しください。」


「私が亡くなったなど誰からお聞きになられたのですか?」


「はい、フリード殿下の兵士を名乗る者達から聞きました。殿下の兵士と示す紋章が本物でしたので信じてしまいました。」


別に悪くないのにちょっとしょんぼりするロンベルト様。

やっぱりあの馬鹿達かぁ。


「その者達によるとヤルタに魔物の軍勢が押し寄せて聖女様を含め住人達全て全滅してしまったと。聖女様が我々を伝令にと逃して頂いた。そして自分達は命からがら逃げ出しここまでやって来たと言っておりました。なので、私は魔物の群れに備えて準備をしてました。」


「なるほど…。」


随分と杜撰な言い訳でのこのことここまで逃げて来ていたのか。

嘘を述べている辺り全く悪気も反省もないみたいだね。

絶対ボッコボコにしてやる。


「よく分かりました。まずヤルタの町は無事でございます。町の方々と一致団結して魔物達は殲滅致しました。」


「そ、それは真ですか?」


「はい、本当です。」


安心してもらうためニコリと返す。

後ろでノートンもうんうんと頷く。

そこからは次々と事の顛末を説明していく。

まだ不確定だけれど魔物の軍勢は珍獣私兵が仕掛けたこと。

目的はおそらく俺の暗殺。


どんどんと説明するうちにロンベルト様の額に一本また一本と血管が浮き出てきた。

後ろに控えていたハイドンさんも血管がちょびっと弾けて血を垂らしている。


「よくも…よくも俺の治める町を…。絶対そいつらをボッコボコのメッタメタのギッチョンギチョにしてやる!!」


「そうです、殺って殺りましょう!」


体中から血液を流して怒りに燃える二人。

俺もあいつらに苛々していたけど冷静になっちゃう不思議だね。

少し嫌な予感がする。


俺は今回こそ殴れるのだろうか。



頭を振って不安をかき消す。

と、とりあえず体を本当に真っ赤に染めた二人を治療しましょう。




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