番外編 聖女の冒険4
いよいよ本格的な冒険者活動が始まり、現在移動中。
目的の薬草があるのは、平原を少し進んで左に見えてくる森林。お姉ちゃん情報では、なかなかの規模を誇る森で奥に行けば行くほど魔物も強くなるらしい。それは非常に楽しみな情報。
でも、今回の依頼はそこまで深く潜らない浅い場所で見つかる簡単なもの。そもそもロコルお姉ちゃんが許可してくれないだろう。
俺もいきなり奥へと行けるとは思っていない。段階を踏んであわよくばを狙っていこう。
小さい野望を秘めつつ平原を道なりに進んで行くと、ポヨンポヨンと跳ねているスライム以外に接敵する事無く直ぐに森を発見。
平原のように通行用の道は無く、何処が森の入り口か分からない。
特に周囲から魔物の気配を感じないのでそのまま侵入する。
久しい大自然の香りと風で木々が擦れ合う音が良い癒しとなって落ち着かせてくれる。
心配症なロコルお姉ちゃんと手分けしてとはいかないので、一緒に連なって薬草を探す。村時代は山で魔物の相手をしつつ薬草を採取してたから判別は用意。上手く群生地を見つければすぐ終わる。
問題は魔物。偶々運良く凶悪なのがひょっこり現れないかな。
薬草を探しつつ、気配を探るも感じるのは小物ばかり。一応、草むらから姿を出してもゴブリン。せめてオークぐらいは出てこいよ。そんなだとすぐにお姉ちゃんが屠ってしまうから。
その後も探索を続けて依頼完遂まであと少しとなった。群生する薬草は見つからないけどあちこち歩き回れば徐々に溜まっていくもんだね。ただ俺の戦闘欲の解消がまだだ。
接敵数は増えてるけどゴブリンばかりで弱い。今日はこのまま採取だけで終わりそうだなと溜息をつく俺とは別に、ロコルお姉ちゃんは首を傾げながら何か考えている。
「どうしたの?」
「いえ、その今日はやたらとゴブリンを見かけたような気がしまして‥。以前、ここを訪れた時はこんなに出現しなかったのですが。」
確かにあっさりと処理するもののゴブリンばかり。ほんの稀にウルフと遊んだくらい。俺はここが初めての森だから何とも思わなかったけど、お姉ちゃんには違和感だらけみたい。
念の為、気配の察知範囲を広げてみよう。
お、原因っぽいのを感じる。もう少し先に進んだ所に多数の気配。
ちょっと笑みが生まれたのは内緒だよ。
俺は指を指して説明する。
「お姉ちゃん、この先に沢山の気配を感じます。」
「よく分かりますね‥いえ、それよりも多数の気配。もしかしたら、ゴブリン達の巣があるかもしれません。」
へぇ、ゴブリンの巣。それは面白そう。
「ならすぐに向かいましょう!」
「き、危険です。上位種も居る可能性もございます。一旦、ギルドに戻り報告致しましょう。」
やっぱり渋られちゃうかぁ。
「でしたら、様子だけ確認しましょう。規模などを詳細に伝えた方が良いですよね?」
うーんとお姉ちゃんが悩み始めた。俺の安全やギルドへの情報と色々な葛藤が頭の中でぐるぐると駆け回っている様子。
考えがまとまったのか俺をじっと見つめる。
「確かにアリスさ‥ちゃんの言う通り、もう少しこの先の状況を確認する必要があります。ですが、絶対に無茶はしないで下さい。確認だけですからね。」
「はい、無茶はしません!」
小さい子供に言い聞かせるように忠告してきた。実際小さいけど。
ビシッと手を挙げ大きく返事をし、目的地へと慎重に警戒しつつ移動する。
木々を掻き分けた先が拓けてきた。
気配の手前の木陰からこっそりと様子を伺う。
大当たり、ここは巣だ。
ゴブリンやホブゴブリン、ゴブリンなナイトにメイジとうじゃうじゃ。これは下手したら王様も居るかも。
そして、妙にある一帯が騒がしい。ゴブリン共が集中して何かに攻撃している。
よーく目を凝らせば俺はもう動いていた。
「ちょ、アリス様!」
「ロコルお姉ちゃん、予定変更。人が戦っている!」
見えた限りだと6人。
内2人が地面に倒れ伏していた。
残りは倒れた者を守るように武器を構えている。
どうか無事であれ。
死んでさえいなければ必ず助けてやる。
俺は彼等に迫る死へ全力で抗いに行く。
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