お家へ帰ろう
王城でのお泊まりした次の朝、目を覚ますと俺をうっとりと見つめる姫様の顔が。鼻と鼻が触れるくらいの距離にギョッとする。
そういえば、スゥ様と一緒のベッドで眠ってたんだっけ。
「スゥ様起きるのお早いですね。」
「はい、ぐっすりと寝たらばっちりと目覚めました。」
その割に大きな瞳は赤く充血しているような。
でも、顔色は良くむしろ生き生きしているから大丈夫かな。
「起きたらお姉様の美しい寝顔がありましたのでついつい眺めておりましたわ。」
「もう見ていないで起こしてくださいよ。なんか恥ずかしいじゃないですか。」
「ふふ、申し訳ございません。次の機会ではちゃんと起こしますね。」
どうやら姫様の中では次のお泊まり会は決定事項のようだ。
まあいっか。
俺達2人がベッドから起き上がると共に軽いノックからのメイド達の侵入。
外からでも気配を感じ取るなんてこの人達は只者ではない。
そして、例の如く全自動お着替え時間。
昨日寝巻きに着替えさせられた時も一々着替えるのかと驚愕したけど、また朝もか。
これまだ丸一日も着ていないよ?
念のため、駄目元で全然汚れてないからこのままでも大丈夫ですよと伝えてみる。
当然だめ。
女の子が人前で寝巻き姿は礼節に反しますとニコニコと言われた。
はい、分かりました。
スッポンポンから新たなドレスを装着。
今度は真っ赤なドレス。花をモチーフにした飾りが要所要所に付いていて女の子っぽい。
まあもちろんスカスカだよ。腰に付いてる飾りを詰め込もうかな。
着替えたら朝ご飯。
王様は執務で忙しいようで席にいたのはアルフと王妃様のみ。
そういえば昨日から妙な違和感が‥なんだろう?
分からないってことは大したことじゃないのだろう。朝食を食べましょう。
今日もアルフの隣。
それはいい、けどその後の流れは断ち切る。
スゥ様は着替えた時には言われたから仕方ないけどこの2人だけでもなんとかする。
まずは王妃様か。
「まあアリスちゃん、やっぱりそのドレスも‥」
「れ、レオラ様の方が綺麗です可愛いです!」
「そんなこ‥」
「美しいです綺麗です大きいです!」
何が何でも言葉を途切らす。
「わ、分かったから落ち着いて。もう言わないわアリスちゃん。」
よし成功。
ふぅーと呼吸を整えて次。
「今日もうつぐぅっ!?」
面白がって口を開く一国の第二王子のお腹にトントンと2発入れる。
トントンは実際の衝撃音とは異なります。
任務完了。
何度も同じ手は通用しないよ。
1人がテーブルにうつ伏せたまま、無事朝食を終えられた。
優秀な従者の方々は今日もお腹を押さえるアルフをそっと放置しておいてくれた。
もう後は教会に帰るだけ。
患者さんも待っているだろうし帰りますか。
このドレスどうしよう‥。
元々着て来ていた白のドレスはまだ乾いていない。
俺は別に半乾きでも構わないと主張するも、王妃様と姫様と愉快なメイド達の強い反対が入る。
結局、この赤いドレスを着たまま帰ることに、でもこんな高価なもの‥はい着て帰ります。
いくら鍛えても王妃様達の有無を言わせない雰囲気には勝てそうにない。
もういつもの場所にいつもの使者と馬車が用意されている。
寂しそうに姫様が見送ってくれる。
「お姉様、またお泊まりしてくださいね。」
「はい、今度は2人っきりでお茶会しましょうね。」
馬車へ乗り込む前に、一度お互いぎゅっと抱き合いちゃんとお別れ。
大きく手を振るスゥ様に窓から俺も振り返し、王城を後にする。
お茶会は結局楽しめなかったけれど、スゥ様と沢山お話し出来たのは良かった。
これからもお世話になるだろうお城に向けて一礼をする。
教会に着いた時、やっと違和感の原因を思い出した。
昨日の晩飯にも今日の朝飯にも珍獣が居なかった。
でも、あれでも王族だし色々と努めがあったのかもしれない。俺も会わなくて済んだし問題ない。
そんな事も笑顔で出迎えてくれるロコルお姉ちゃんですぐに霞み消えていった。
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