初めてのお泊まり会 中編
哀しい現実とかち合ってしまい、哀愁を漂わせて入浴開始。可能ならこのまま消えて無くなりたかったけど。
浴室は限られた人しか入れないのに馬鹿でかい。
一度に二十人以上は確実に入れる。
何処からともなく花の香りもする。
どこまでも豪勢だ。
ここで哀愁纏う俺は庶民力を発揮して少しオロオロ中。
スゥ様は日常の一部と化しているようですぐにメイド達に身を任せて体を洗ってもらい始めている。
もう如何にもな高級石鹸によって泡だらけとなり姿が消え始めている。
俺も後に続けと横に座り、恐る恐る石鹸を手にする。
しかし、ニコニコと笑うメイドによって掴まれた手から石鹸を取り上げられる。
あ、洗えるよ。
「「聖女様、これは私達の仕事でございます。」」
「はい‥お願いします。」
いつの間にか増殖を遂げていたメイド達によってなす術なく洗浄をされていく。
悔しいけど気持ちいい。
優しい手つきで労わるように隈なく洗われる。これは癖になりそう。
決して屈したくなのに、気持ち良くて声が漏れ出てしまう。
ようやくお湯に浸かる頃には、身体は力無く緩みきっている。
大変気持ち良かったです。
まあこの後、更にお湯で顔がだらしなくなったとこをニマニマと血走った目で見るスゥ様に笑われたけどね。
こうして、快楽に溺れた入浴は終わりお着替え。
メイドが用意してくれた服は、どこから調達したのか分からないドレス。
あの、ローブとかで充分ですが‥はい、着ます。
このライトブルー主体のドレスは王妃様のお下がりらしい。
俺の宿泊が決定し着替えが必要と知って、すぐさま持って来て頂いたとの事。
む、これは無下には出来ない。
着方はもちろん知らないのでメイドの方にお任せ。
うん、サイズは一部を除いて丁度良い。一部を除いてね。はは、すかすかだ‥。
着替え後、闇堕ちした俺に腕を絡め先導するように引っ張っていく姫様。
しばらく放心状態の俺は気づけば扉の前まで着いていた。
スゥ様の部屋とは違う。
「あれ?ここは?」
「お姉様、やっと帰って来ましたね。今からご飯の時間ですよ。」
ご飯‥ご飯!
意気消沈の俺は、お腹の音と共に息を吹き返す。
暗い気分を晴らすのはいつだって飯だ。
スゥ様は俺の元気が戻ってきた事に一安心している。
復活した俺は揚々と晩御飯の場へと入っていく。
大きな長テーブルの上には、俺が今まで見たことも味わったことも無い料理達がいらっしゃいと出迎えてくれている。
それに王様や王妃、アルフといった王族組も席について待ち構えていた。
一瞬ぎょっとしたけど、ここは王城。
居て当たり前。
空いてる席はいくつもあるけど、どこに座れば良いだろうか?
とりあえずスゥ様について行こう。
スゥ様はアルフと向かい合う王妃様の隣に座る。
俺もスゥ様の隣に行こうとするも、メイドの有無を言わせない誘導によりアルフの隣へ。
座る前に軽く挨拶した方がいいかな。
俺が何か発する前に王族組の先制攻撃。
「はっはっは聖女殿、そのドレスよく似合っているな。沢山の者から婚姻を申し込まれるかもしれんぞ。」
「なっ‥」
「アリスちゃん、とっても可愛いわ。私の娘にしたいぐらい素敵よ。あとでぎゅっとさせてちょうだい。」
「な、なっ‥」
「真っ白なドレスも似合ってたが、そのドレスもまたおま‥貴方をより美しく映し出してくれているな。貴方の可憐な姿にこの食事の場がより彩りを増したようにさえ感じるよ。」
「な、な、なにを‥」
顔が下から上へと赤みと熱が昇っていく。
全く予測も防ぐことも出来ない甘言の飛礫にどこに目線を送ればいいか分からなくなる。
なんで自然体でそんなこと言えるの?
俺がこの手の攻めに慣れてないの知っているでしょう。
羞恥心が頭の中にぎゅうぎゅう、多分ちゃんとお礼は言えたと思う。早口で伝えてすぐに座ったのは覚えている。
あと、隣の面白がっていたアルフを小突いた気もする。
せっかくの食事なのに思うように喉を通ってくれないよ。
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