友達想いな女の子
色々とありまして、微妙な雰囲気となってしまったお茶会は姫様に腕を引かれる形で強制終了。
続けられるような空気でも無かったし、仕方がない。
長い廊下を無言を貫き何処かへ連れて行こうとするスゥ様。
真っ直ぐ前を向いてどんどん進んでいくから表情が読めない。
俺が何か怒らせてしまう事をしたのかもしれない。
ここは大人しく黙って連れて行かれよう。
連行された先は一つの部屋。
以前、会談した場所とは違う。
スゥ様は誰か居るかも確認せず躊躇なく扉を開ける。
相変わらずどこの部屋も一つ一つ広いなぁ。
ここも広い。俺の与えて貰った部屋の何倍もある。
眠気を誘う分厚い本がいくつも並べられた本棚、談話用に設けられたと思われるソファとテーブル。
そして、ドドンと大きく設置されたベッド。
薄桃色の天幕でより豪華さが増している。
どうやら誰かの寝室。
普通に考えればスゥ様のお部屋か。
「こちらはスゥ様のお部屋ですくぅわっ!?」
部屋の壮大さに呆気に取られている俺を唐突に抱き締めてきた。
顔は俺のお腹に隠れるように埋めてよく分からない。
でも、小刻みに身体が震えている。嗚咽を我慢するように鼻をすする音も聴こえる。
泣いてる。
「スゥ様?」
「お姉様は‥どうして落ち着いていられるのですか?あんなに酷いことを言われて‥。私は悔しかったです、目の前で大切な方が馬鹿にされて。お姉様のことを何も知らない人がお姉様を勝手に語るなと思いました。なのに、どうしてお姉様は平気な顔で笑っていられるのですか?」
やっと顔を上げてくれたけど、お姫様なのに涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。
俺の為に泣いてくれる人がここにも居るなんて、堪らなく嬉しいね。
ちょっと笑ってしまった。
涙で目を腫らしたスゥ様は笑う俺を見て頬を大きく膨らませている。
「むー、なんで笑っているのですか!」
「ふふ、ごめんね、つい嬉しくって。スゥ様、私は確かにあの子達に散々な言われようで少しは思うところがありますよ。でもね、私の為に一生懸命に怒ってくれたスゥ様を見たら、どうでもよくなりました。だから平気です。私は大切で大事な人達にさえ私を知ってて貰えればそれで満足ですから。」
「お、お姉しゃまぁ‥」
まだその大きな瞳から涙が零れ落ちている。
俺はそっと指で拭ってあげ、その光沢のある白銀色の頭をお礼を告げる気持ちで撫でる。
姫様も涙をこれ以上溢れ出さないように閉じて、黙って受け入れている。
「私は‥お姉様の大切で大事な人の中に入っていますか?」
洪水は落ち着いてもまだうるうるの瞳で上目遣い。
俺はずっと懐に隠し持っていた物を取り出す。
青水晶のネックレス。
俺を見上げるスゥ様にそれを掛けてあげる。
「お、お姉様これは?」
「スゥ様とお茶会ってことでお土産をと思いまして。私と色違いのお揃いですが良ければ受け取って下さい。」
俺は自分の首に掛けていた緋色の水晶をドレスの中から見えるように出す。
「あ、ありがとうございます。嬉しいです‥。」
「ふふ、良かったです。なかなか渡す機会が掴めなかったのでどうしようかと思いました。‥‥スゥ様、貴方は私を守って下さる心強い騎士で私のとてもとても大切で大事な妹です。」
「お、お姉ざま‥。わだしもだいずきでず!!」
決壊、小さな二つの滝が誕生しました。
俺の真っ白だったドレスは、紅茶と涙と鼻水で彩られた。
「お姉様、今日はこのままお泊まりになりませんか?」
「え?」
「その‥ドレスも汚してしまいましたし‥」
「別にこれぐらい気にしませんよ。」
スゥ様らしくないもじもじと恥じらいつつ、俺のドレスの端を握る。
「あの、その‥まだお姉様と一緒にいたいです。もっとお話ししたいです‥。」
なんだこの可愛い生きものは。
頬を赤くして申し訳なさそうにおねだりされたら誰も断れる訳がない。
俺は軽く息を吐く。
「ふふ、甘えたがりの可愛い妹の為なら仕方ないですね。」
照れ臭そうに顔を真っ赤にさせる可愛い女の子をもう一撫で。
本日、はじめてのお泊りが決定。
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