お茶会へのお誘い
ちょっとはしゃぎ過ぎてしまい、この国の騎士団長を気絶させてしまった。
所々骨が折れ、変な方向に曲がって壁に磔状態。
観客の方々の反応からやり過ぎなのは明白。
あ、あっちも普通の女の子ならボロボロになる事してたんだよ。本当だよ。
俺は急いで近寄り、額を輝かせて温かな光で包み込む。
1.2.3‥はい治療完了です。
「よく頑張ったね、あとごめんなさい。」
すっかりあらぬ方向に向いていた足も腕も元通り。乱れていた呼吸も落ち着いている。
ひと仕事終えて観客に顔を向けるとアルフのジト目がやけに目に入りました。
な、何見てんだよ。
まだ起きないガルムさんが眼を覚ますまで待機。
その間、右隣からは聖女なんだしもうちょっとお淑やかになれないのかとこんこんと文句を言われ、左隣からは凄いですカッコ良かったです綺麗です!と興奮した信者から沢山の褒め言葉を貰いました。
やり過ぎた自覚があるので黙って聞くしかない。
ようやくガルムさんのお目覚め。鍛えているだけあって起床も早い。ついでにノートンもおはよう。
ガルムさん怒っているかな?
起きてぼーっとするも何かを探すように辺りを見回す。
そして、俺と目が合う。探し物は俺ですか。
まじまじと見つめるその顔からは怒りは感じられない。やがて苦笑しながら口を開く。
「まさかここまで手も足も出ないとはな。対峙した時点で厳しいと思ってたが、まだ聖女様を甘く見ていたらしいな。」
「申し訳ございません。少々楽しくてやり過ぎてしまいました。」
「なーに気にするな。こうやって聖女様の御力も体験出来たし、何よりこれほどの強者に相手をして貰えたんだ。むしろ御礼を言わせて頂きたい。良い経験になりました、ありがとうな。」
「いえ、こちらこそ楽しかったです。是非今度はご自身の得物をお持ちの上で御相手して下さいませ。」
「あぁ、次は油断も甘さも見せない。全身全霊を持って戦おう。」
茜色の夕陽が戦士2人の固い握手を暖かく迎えてくれる。
筋肉質な熊と友達になりました。
こうして、最終的に無事という形で終わった騎士達との顔合わせ。
ガルムさんとノートン以外の騎士達は俺を小さい女の子から怪物を見るような目に変わっていたけど。
怪物じゃなくて女神様ですよね。
スゥ様違います、ただの聖女です。
まだまだ加減のなってない力。今日の反省を糧に、より一層特訓に励むことを誓います。
騎士達との顔合わせからまた何日か経った。
最近は王都散策を少し控えめに特訓中心の生活で過ごしていた。
反省は大事だもんね。
ロコルお姉ちゃんも時々で相手をしてくれて非常に助かります。
ただあれから何度もガルムさんから一緒に楽しみませんか(友よ、戦おうぞ)とお誘いを貰うが、何であろうと治療を優先しているのでなかなか噛み合わない。
残念で仕方ない。
ふぅ、今日の特訓はこのぐらいにして治療に行きますか。
聖堂へ向かうと今日も患者さんで賑わっている。どんなに毎日治療をしても減ることは無い。王都の人の数を考えれば頷けるか。
高圧シスターが今日も列の整理を終えて、訪れた俺をチラチラと見ている。
昔みたいに嫌われている訳では無いと思う。でも、全然目を合わせてくれない。
う、また逸らされた。
「アンジェリカさん、今日も整理して頂きありがとうございます!」
「ふ、ふん。べ、別にこれも仕事の一つですから。あ、有り難く思いなさい。」
「うん、本当にありがとう。」
目線は合わないのでせめて手を握ってちゃんと感謝を伝える。
また発火、からの脱兎。
毎度の繰り返し。
一種の恒例行事化した所為か、周りのシスターや患者さんも微笑ましそうに見てるだけ。
‥‥‥‥治療をしますか。
患者さん一人一人にどんどん聖女の力を行使していく。
はいはい祈りを捧げないでね、よく頑張ったね。
女神様の後光?違うよ、聖女の力だよ。
残り1人となった‥‥って使者の方だ。
毎回この人が来る。連絡係にでも任命されたの?
「何処かお体悪いんですか?」
「あ、いえ治療ではなくまたお伝えに参りました。」
なんだ怪我とかじゃないんだね、良かった。
どうやら全員の治療を終えるまで律儀に待っていてくれたみたい。
さて伝言は何でしょうか?
お手紙を手渡される。
可愛らしい女の子の字。
スゥ様からだ。
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