俺の処遇
騒々しい足音と共にやってきたのは、ブラッドさんとアルフとノートンのさっき別れた3人。
それとその後ろから兵士達も一緒に来ている。
この屋敷の警備兵は殆ど眠らせたから、ブラッドさん達が連れてきたのかな?
凄惨な風貌に遂げた部屋に、来た人達全員が驚いている。
天井は大きな穴があるし、壁には沢山の芸術作品となった男達。
おまけにこの屋敷の家主は葡萄酒まみれでぶっ倒れている。
そんな中平然と立っている俺。
驚く要素てんこ盛り。
アルフなんか驚きすぎて口をパクパクさせてる。整った顔立ちが残念になってるよ。
「じょ、嬢ちゃんがこれを?」
「はい、そうです。私の大切な人を傷つけたのです。当然でしょう?」
でも、貴族である豚をぶん殴ったから、分が悪いのは俺の方。
確固たる証拠があれば問題ないだろうけど、豚が漏らした発言では弱い。
捕まるかな?捕まるよな。
ちょっと猪突猛進しすぎたけど、間違った事はしてないし堂々としてりゃいいか。
死刑になるなら死刑でいい。
人間いつかは死ぬ。早いか遅いかそれだけだ。
「ブラッドさん達はどうしてこちらに?」
「そりゃお前が1人で突っ走ったから急いで来たんだよ。俺らがちょっと待てって言っても聞いてなかっただろ?」
そういえば、ロコルお姉ちゃんを抱き抱えて教会に行く時、後ろが騒がしかったな。頭の中を怒りが密集してて全然聴こえてなかったよ。
「まさか1人で屋敷に乗りこむとはな。しかも、全滅してるし。嬢ちゃん強すぎだろ。」
「ふふ、少々鍛えてますので。」
「少し鍛えただけでここまでの事が出来るかよ。でも、無事で良かったぜ。」
とても心配させたみたい。
こんなちっこい女の子が一人で特攻したなんて知ったら無理もないか。
「ご心配おかけしてごめんなさい。」
ちゃんと頭を下げる。
下げた頭をブラッドさんが少し雑にわしゃわしゃと撫でてくる。
ちらっと見えたブラッドさんの表情がなんだが懐かしくてちょっと泣きそうになったのは秘密。
さて、ようやく皆さん状況把握したようなので俺の処遇を聞こうかな。
「ブラッドさん、私は貴族を殴ったので捕まりますか?」
平民が貴族を殴るのは御法度。
証拠もないこの状況では現行犯逮捕。
「それなら問題ないぞ。」
なんかアルフが答えてくれた。
一応、ブラッドさんにも目線を向けるとうんうんと頷いている。
問題がないってボロボロの貴族がそこにいますけど。
「えーと、貴族を暴行したのに問題ないんですか?」
「ああ、そいつは犯罪者だからな。俺はブラッドと連携して司教のことを調べ上げたからな。まあ色々と証拠が集まったものだ。」
「嬢ちゃんが俺を治してくれた次の日にこいつからお願いされてな。嬢ちゃんの為ならって協力したんだよ。」
俺の為?
まだその時はロコルお姉ちゃんの事件は無かったよ。
「あなたが聖女様だからです。」
俺がなんでと疑問を持ってる顔を察したノートンが答えてくれる。
さすが表情読み取り人。
教えた覚えは無いから司教同様に調べたのかな。
でも、俺が聖女だからってどうして?
教えて、ノートン先生。
「私共には聖女様が顔にある傷を原因に教会に篭っていると教えられてました。しかし、こうやって聖女様の御力で多くの王都中の人々を救うあなたを見て、あの情報が嘘だと分かりました。そして、その嘘を陛下にお伝えしてたのはあの者です。」
ノートンは未だ気絶から覚めない豚を指差す。
「そこからは色々と情報集めをしました。貴方を表舞台にすくい上げるために。その過程でより密な情報を得るためブラッドさんにも協力をお願いしたのです。」
「そうだ。嬢ちゃんへの恩返しのためだぜ。」
なるほどそうだったのね。
裏社会に精通しているブラッドさんならあの緩い司教がこそこそやってた事なんてすぐに調べがつくか。
「じゃあ私は‥」
「はい、あの者が言い逃れ出来ない証拠も見つかりましたので何のお咎めもございませんよ。」
「どっちにしろこいつは国王に虚偽の報告をしているんだ。罪に問われる。だから、嬢ちゃんは問題なし。むしろ、犯罪者を一斉逮捕出来て良かったぐらいだ。」
良かった。
向こう見ずに行動してしまったけど、周りの人達が助けてくれた。
「ただトーラスっていう奴にはちゃんと謝っといた方がいいぞ。俺達が教会に行った時、泣きそうな顔でお前の助けを求めていたからな。」
う、そういえば迷惑かけたくないから気絶して帰らせたんだった。
どうしよう、怒られちゃう。
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