豚司教に殴打を捧げる3



やっとここまで来れた。

侵入や貴族に対して殴り込みとかで犯罪者になってしまっただろうけど、気にしない気にしない。


「き、貴様、貴族である儂にこのような事をしてタダで済むと思っておるのか!聖女といえどし死刑だ、死刑じゃぞ!」


だからなに?

貴方を一発も殴り潰さないで、ぬくぬく生きる道を俺が選ぶ訳無いでしょう。


「死刑でも何でも結構。貴方の犯した罪を放置したままで生きるくらいなら死んだ方が余程ましでしょう?」


罪には罰を。

これは世界の常識だよ、ぶたさん。


「貴方はこれまでロコルさんだけでなく他の人にも絶望を届けていたのでしょう。だから、私も届けます。あいにく絶望は持ち合わせていないのでこの拳を届けます。」


「ぶひぃっ!」


拳を眼前に突き出す。

安心してね、例えこの身が滅びようとも必ずお届けいたします。


「い、良いのか‥儂の後ろには王族もいる。いや、貴族に手を出すのだ。貴族全員を敵にまわすぞ。」


しつこいなぁ、関係ないっての。


「構いませんよ。私は一つ決めている事があります。大切なものを守るためなら誰だろうと相手になります。王族?貴族?私は神様だって相手になる覚悟ですよ。」


「ぐっ‥生意気な小娘がぁ!」


隠し持ってたつもりの短剣を手に俺の顔目掛けて突っ込んでくる。

そんな太った体で来ても黒装束の人達よりも数倍は劣る動きだよ。


一応、刃が迫って来ているので短剣を握る手を蹴り上げる。

激痛と衝撃で司教の手から短剣が離れていく。

そのまま痛みで床を転げ回っている。

加減はしたつもりだけど折れたかな。


「き、貴様‥そんな貧相な体にどうしてこれほどの力が‥」


うわ、レディーに対して失礼。

これから成長予定なんだぞ。


「ふふ、今時の女の子はよく鍛えているものですよ。」


「ぐっ‥野蛮な平民めが‥」


この状況でも強気なのはある意味賞賛に値するよ。

はい、パチパチパチパチ。



じゃあ、もう終わろうね。


「くっ、こっち来るな!」


近づく俺に天井の欠片を投げてくる。

避ける気も起きないよ。


「ぶひっ、来るな来るな!」


欠片が頬や肩、腕に当たって血が流れるけどそれだけだ。

傷を負う姿を見て余裕が出てきたところ悪いけど、俺を止めるには全然足りない。


一歩、また一歩と近づく。



流石に司教は一向に歩みが止まることないことに焦っている。

無駄に流れる汗が飛び散ってますよ。



終了の時がやってきた。

本来の身長差なら俺が見上げるけど、今回は立場逆転だね。

貴方のおかげで血塗れの笑顔を見せることになっちゃった。


はいはい、怖いね。



額にある聖女の証が輝き出し俺を包み込む。

ほい元通り。



「ゆ、許してくれ。悪かった。そ、そうだお前に金をやろう。うむ、地位も与える。お前が望むもの全てやろう。だから、ゆ許すのだ。」



それは貴方には無理でしょう。

俺が幼い頃から欲しかったものは金でも地位でもない。

本当に欲しいものはもう手の届かないところにある。


でも‥


「私が望むものはこの王都、いえ聖女になった日から多くの人達に頂いております。とても大切で暖かいものを。」


俺はこれまでに出会った人達を思い出す。

みんな俺に懐かしい何かを与えてくれた。


「でも、貴方はそんな人達に悲しみを絶望を与えた。だから、許さない。私は決して貴方を許さない!」


「ぶひぃっ!?」


恐ろしく部屋に充満する威圧が司教に重くのしかかる。

強く握りしめる拳と息を合わすように額も輝く。

今は聖女の力使ってないんだけどなぁ。



「しっかり歯を喰いしばりなさい。そして、今までの悪行をしっかりと懺悔するようにね。」


がちがちと歯を鳴らす司教の葡萄酒でたっぷりと肥えたお腹に、振りかぶった拳が深々と突き刺さる。

よほど脂肪を蓄えていたのか拳が埋まったよ。


とても鈍い衝撃音と腹から湧き出る激痛を側に添えて見事に飛んでいく。



そのまま大好きな葡萄酒が沢山備えられた棚と熱い抱擁。

そして一緒に崩れ落ちる。


司教はピクリとも動かなくなった。

殺してはないよ、ちゃんと生きて悔い改めて貰わないといけないからね。

しばらくはまともな食事は出来なくなるだろうけど。

おおう、いくつか割れた葡萄酒が司教にぶっかかってる。

ほ、本望かな?

はい、ごめんなさい。



終了の合図にけたたましく鳴り響く足音が扉のあった場所まで訪れた。




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