豚司教に殴打を捧げる
馬車で司教の屋敷に向かっている。
王都内は妙に騒がしい。
さっきロコルお姉ちゃんを抱き抱えて歩いたから、今頃になって騒ぎになっているのかもしれない。
結構あっちこっちで治療してたから、俺の顔を知ってる人は多い。
そんな俺が人を抱き抱えて鬼の形相で通ったら何事かと思うかもね。
司教の屋敷が見えてきた。
中央通りから広場を突っ切ったところにある。
ここらへんは貴族街と呼ばれ、その名の通り貴族の屋敷がいくつもあり、周辺のお店の嗜好も貴族向けで俺じゃあ一生縁のない場所だ。
やっと到着。
かなり長く塀に囲われた彼奴の根城。
正門の所には、守衛が2人いる。
馬車で入ろうとする俺達をもちろん止めてくる。
外に出る前に関係ない人には眠っててもらおう。
「トーラスさん、ありがとう。」
「え、いきなりなんっ‥です‥か」
俺は音もなくトーラスさんの顎をコツンと拳を当てる。
ギョッとした表情のまま、むなしく横たわる。脳の揺れはなかなか立て直せないよ。
ごめんなさい、このまま一緒に行ってもしもの事があっても嫌なのでおやすみしてて。
倒れたトーラスさんをそのままに馬車を降りる。
守衛2人に問い詰められてオロオロする御者さんの前に出る。
「お兄さんたち、こんにちわ。ちょっとそこを通らせて頂けますか?司教に用があるのでお願いします。」
「おいおい、なんだいきなり。お嬢さん、ピグオッグ様へ事前に面会を取り付けたのかい?」
「いえ、連絡も何もしてないですね。」
「なら、無理に決まっているだろう。さあ、帰った帰った。」
シッシッと追い払おうとする。
やっぱり馬鹿正直には通してもらえないよね。
「お兄さん達もお仕事ですもんね、しょうがないです。だから、ちゃんと謝っておきます。ごめんなさい。なるべく痛くないようにするからね。」
「「は?」」
少し身長差のある2人の守衛へふわりと跳び、トーラスさん同様の方法で動けなくする。
ただ回転蹴りで2人まとめて済ましたのは内緒だよ、御者さん。
もし俺が突撃した後、御者さん達に何かあっては申し訳ないので教会まで帰るように伝える。
このまま残ろうとする御者さん。
子供を置いていくのは忍びないのかな。
でも、そこらに落ちている石を目の前で握り割ったら、こくこくと頷いて帰っていった。
こんな俺だから大丈夫。
倒れた2人の守衛を邪魔にならないよう壁の方に寄せて、いざ侵入。
貴族の屋敷に無断侵入で晴れて犯罪者かな?まあ守衛を眠らせた時点で駄目なんだけどね。
屋敷の中に20人以上と外には4人の気配。外のは2人眠らせて残りは裏。静かに眠ってもらったから騒ぎには今のところなってない。
なので、堂々と屋敷の扉を開ける。
ちゃんとノックはしたからね。
玄関にいきなり現れた女の子。
近くで掃除をしていたメイドさんは突然の小さな侵入者に呆けたみたいに立ち尽くしている。
「こんにちはお姉さん。突然の訪問ごめんなさい。ピグオッグ司教はどこにいらっしゃいますか?良ければ案内して頂けると嬉しいです。」
「え?へ?あのお嬢様のご友人でしょうか?」
「いえいえ違いますよ。貴方の雇い主をぶん殴りに来ただけです。」
「あ、そうですか‥って!?し、侵入者ですか!お、大人しくして下さい。」
俺を侵入者と認識したメイドさんは、慌てて手に持ってた箒を構える。
なんか少し和んじゃった。
この人に案内してもーらおう。
目の前まで一気に移動してスッと箒を抜き取る。
突然と消えた自分の得物に慌てるメイドさん。
そんなお姉さんの首にそっと手刀を添えてもう一度お願いする。
「はい、喜んで案内します!この屋敷を知り尽くした私にお任せを、ですから命だけはご勘弁で!」
うん、清々しいほど潔い。
でも、ちょっと声を上げすぎだよ。警備の人達が何事かとぞろぞろ来ちゃった。
「おいおい何の騒ぎだ?」
「あ、警備長、この子可愛い顔して恐ろしいほど恐い侵入者です。助けて下さい!」
もう失礼な。これでも聖女なんだぞ。
訪れた救援で少し強気になったの?
「なに!嬢ちゃん、本当か?」
「はい、本当です。ちょっとこの方に司教の元まで案内をと。無用な争いは嫌ですのでここは見逃してもらえますか?」
「はいはいどうぞって言うとでも思いますか?この警備長たちは強いんですからね。」
なんでお姉さんが自慢気に喋ってるの?
「まあ、そうですか」
「ふふん、今更怖気づいても無駄ですよ。さあ、少し漏らされた私の恨みを晴らして下さい!」
「「お、おう‥」」
警備兵達が襲いかかってきた。
きゃあ、怖い。
数分後、山のように積み重ねられた男達の横で手をパンパンと鳴らす俺。
「この私が誠心誠意案内させて頂きます!さあ、ピグオッグの野郎はこちらですよへへへ。」
うん、お姉さんありがとう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます