正しい選択
先ほどから俺たちの方を見つめてくる子供2人を怖がらせないようゆっくりと近づく。
それでも、やっぱり警戒されたかな?
鋭い目つきをした男の子の方が一歩前に出てくる。
その背後では女の子が長く伸びた髪の隙間からこちらを覗くように見ている。
兄妹かな?
男の子は俺らを威嚇するように睨みつけてくる。
なるべく慎重に優しく接しないとね。
「な、なんだよ。お前らこっちに来るな!」
近づく俺たちにより警戒心むき出しになる少年。
「待って待って、私達は決して貴方達に酷いことしないよ。ただお腹空いてるみたいだし、一緒に屋台でもと誘いに来たの。」
そう、同じ釜の飯を食えば仲良くなれるはず。
「うるさい!俺たちは施しなんて受けない。どっか行け!」
だよね。
こんな同い年くらいの女の子から飯奢ったるって言われても君のプライドが一丁前に邪魔するよね。
でもね、そんなもん捨てろよ。
俺は強く少年を見つめて告げる。
「そんなつまらない強がりは捨てなさい。貴方に守るものがあるなら、目の前の選択に不必要なものを混ぜては駄目。生きる為に何が大切か間違えてはなりません。」
少年は顔を真っ赤にさせ怒気を膨らます。
「お前に、お前に何が分かる!屋台で呑気に食べれるほどぬくぬくと育ったお前達に何が分かるって言うんだ!」
そう言って、怒りに任せ俺に殴りかかってくる。
でも、俺には届かない。ロコルお姉ちゃんがしっかりと有言実行してくれたからね。
「今日初めてお会いした貴方達のことを知るはずがありません。でも、貴方が守ろうとしてる女の子がお腹を空かせていることは分かります。貴方のチンケなプライドのために彼女を飢え死にでもするんですか?」
「なっ‥」
言葉に詰まる少年。
俺は鼻と鼻が触れ合いそうな距離まで近づく。
「生きる為なら無様に足掻け!足掻いて足掻いて大切なものを守るために今、私達を利用しなさい!」
施しじゃなく利用してやると思えばいい。
君には大切な人がいるんだから、それくらい出来るでしょ?
少年はまるで雷に打たれたみたいに固まる。
そんな少年に後ろの女の子はおずおずと呟く。
「お兄ちゃん、このお姉ちゃん達悪い人じゃないと思う‥。ミーナね、お腹空いたよ‥たべたいよ。」
「ミーナ‥」
やっと冷静になれたかな。
妹さんの方がよほど現状を理解して受け入れてるわ。
俺はこの重い空気を変える意味でも手をパンと叩き合わせる。
「よし、一緒に屋台巡り決定ね。さあ、行きましょう!」
俺とロコルお姉ちゃんを先頭におずおずと後ろから兄妹がついてくる。
ロコルお姉ちゃんもう警戒しなくていいと思うよ。あのミーナって子のおかげであのお兄ちゃん毒気が抜かれたみたいだから。
そして、今日出会ったおすすめの屋台に到着。
「おーじさん、3つくださいな!」
「お、嬢ちゃんまた来てくれたのかい。嬉しいね、はい落とすなよ!」
お礼を言ってみんなのところへ。
私とロコルお姉ちゃんはそこそこお腹は膨れているので半分こ。
兄妹には一個ずつ渡す。
「ここのは食べ応えがあって美味しいよ。しっかり食べてね。」
「お、お姉ちゃん‥ありがとう。」
「ふん‥」
妹ちゃんは素直だねー。
座れる場所があったので、そこで食べよう。
2人はやっぱり相当お腹空いていたのかがむしゃらに食べている。
落ち着いたら、色々と話を聞こう。
出来ることなら、この兄妹や路地裏の住人達が良い方向に進めるようにしたい。
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