高圧な再戦


昨日は聖女の力を使ってしまった。

なので、反省も兼ねて今日は散策に行かない。まだ見てないところがいっぱいあるけど我慢。


とりあえずローブを着て、何かする事が無いかトーラスさんに聞きに行こう。


前にトーラスさんが居た部屋へ行ったけど居なかった。

どこだろう?

無駄にでかいと迷うよ。


そんな事を考えていると、目の前を高圧シスターが通る。

妙に縁があるね。


「あのー聞きたいことがあるんですが‥」


「はい、なんでしょ‥げっ!」


俺を見た瞬間、露骨に嫌そうな顔。


「ふん!」


そのまま無視して立ち去ろうとする。

はいはい、ちょっと待てよ。

場所を聞きたいから、腕を掴んで離さない。


「あのー聞きたいことがあるんですが‥」


「は、離しなさい‥て、なんて強さよ!」


必死に腕を振りほどこうと頑張っている。そんな顔真っ赤にして踏ん張っても無理だよ。

鍛え方が違うよ。


「ふんふんふーん!」


司教の息のかかった子だろうから貴族だと思うけど、その力む姿は淑女の欠片も無いよ。


「あのー聞きたいことがあるんですが‥」


「ふ、ふっ、はぁ‥なによ?」


良かった、諦めてくれた。


「トーラスさんはどこにいらっしゃいますか?」


「それなら聖堂よ。お祈りしてらっしゃるんじゃないの。もう離してよ。」


「そうですか。教えて頂きありがとうございます。」


「くっ‥」


そんな親の仇みたいな目で睨まないでほしい。


ちゃんとお礼をして、聖堂に向かう。

トーラスさんはどこかな?あ、いたいた。


ちょうど膝をついて祈りを捧げている。

終わるの待っとこう。



俺も祈った方が良いのかなと葛藤することしばらく、トーラスさんが目を開け立ち上がる。

終わったみたいだから近づこう。


「トーラスさんおはようございます。」


「これはこれは聖女様、おはようございます。聖女様もお祈りですか?」


「え?あ、はい。」


結局、やりました。

見よう見まねだけど良かったかな。背後にいるトーラスさんに確認がてら見る。

何故か驚いた表情をしている。


これはやらかしたかな。


「もしかして、お祈りの仕方間違えていましたか?」


「い、いえ聖女様がお祈りの最中、天から光が降り注いでいたので‥」


え?なにその演出。

もしかしたら、聖女が祈ると謎の光を降らす仕様なのかもしれない。


「そ、そうですか。私には全く分かりませんでした。」


「さすが聖女様なのですね。」


なんでトーラスさんはちょっと感動しているのかな。

もういいや、何かする事ないか聞こう。


「あの、トーラスさん。今日、私は何かすることはございますか?」


感動の表情から一変、苦い顔をする。

はい、無いんですな。


「あー特にする事は無いのですね?」


「も、申し訳ございません。」


「いえいえ、トーラスさんは何も悪くありませんよ。でしたら、どこか運動出来る場所はございますか?」


「運動ですか?」


「はい、私、家ではよく体力をつけるため運動をしていました。ずっと篭って体が鈍るのも嫌ですので。」


多分、己の身体を鍛えるためといっても信じないだろうからこんな理由で良いよね。


「そうですね、分かりました。ご案内いたしましょう。」



恐らくトーラスさんはエルドさんが話した俺が魔物を倒したことを信じてない。

ただの子供の体力作りという名の遊びぐらいにしか思ってないだろうな。


教会の裏口を出て、左隅の一角に庭がある。

その周りを花壇で囲ってある。

ここいいね。



「こちらをお使い下さい。作ってみたもののほとんど訪れる者もいないので自由にどうぞ。」


一応、花壇の手入れはされているっぽい。

訪れるのってトーラスさんぐらいなのかも。


「ありがとうございます。使わせて頂きます。もし、私に手伝えることがあれば遠慮なく言ってくださいね。」


「お気遣い頂きありがとうございます。聖女様も怪我の無いようお気を付け下さいませ。」


そう言うと、トーラスさんは裏口から教会に入っていく。



よっしゃ、やりますかい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る