見習い探求者は明日を視る。

狂ってるひと@crt0816_

第0話 前日談

 首都から外れた丘にその建物はある。

 その外観は『ボロボロ』というのに相応しく、柱がところどころ欠けており、色も黄土色に似た何かに染まっている。

 だが、内装は案外綺麗にまとまっていた。

 埃などが全く見当たらない大理石の床。

 色褪せることのないカーテン。

 見上げると、目眩さえ感じる程の蛍光灯が、煌々と光っていた。

 その時、よく分からない異音が、廃ビル(自称)の中に響いた。

 それはすぐに、異音ではなく、物が崩れ落ちる音だと自覚する。

 だが、それを悟ったところで目的は変わることもなく。

 上階へ、足を進める。


 〜30分前〜


「君は夕ヶ丘支部に配属だ。頑張りたまえ。」

「あ、はい。分かりました。」

 ツ────。

 1本の電話が切れると共に、謎のガッツポーズをかまし、その反動で転びそうになる。が、それをギリギリのところで堪え、何とか持ち直す。

 だが、その直後、たまたま近くを通っていたであろう、不良に当たってしまう。

「あ、すみません!」

「ア゙ア゙ァン?!なんだお前!」

「ぎゃぁぁ!!まってタンマ!」

 必死の制止をものともせず、不良の右手が加速する。

 直後、鈍い音と同時に、自分の頬に強い衝撃が伝わったのを感じた。

「イッッッッテェェェェェ!!!!!」

 だが、顎を強く噛み締め、痛みを堪える。

 そしてそのままスクーターに乗り、すぐさま逃げる。

「逃げんじゃねぇぇぇええぇえぇ!!」

 遠くから不良の声が耳に響くが、今更止まる勇気などなく、スクーターのハンドルを捻り、一気に加速。

 すぐさま、振り返るが、不良の姿は見えず、心の中で安堵する。


「やべぇよアイツ。」


 本音を静かに呟いた。


 続く

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