注意 主人公はタバコ吸ってます







 下校途中、美姫と喧嘩をした。

 理由はつい先日、長谷川にキスされたことをまた聞きしたらしい。事実なので言葉を濁していたら、美姫は泣きながら帰っていった。

 まぁ美姫も俺のことが好きだから嫉妬か先に取られた! かの二択だな。

 付き合っているわけでもないのにそこまで制限されるのは違うと思うのは男の、いや雄の本能だろう。


 はて。どうやって事態の収拾を図るか……。美姫をなだめるの大変なんだよなぁ。思えば、美姫はいつから俺のことを好いていてくれたのだろう。中学まではオシドリ夫婦みたいな扱いだったのに、高校入学から激変したからな。

 

 ちなみに今の俺は、三股かけてるみたいな扱いだ。嫉妬からだろう、陰口が半端ない。女友達なんて一人もいないからな(泣)

 さらにちなみなんだが、クラスの男子で俺が誰と付き合うか賭け事が行われているらしい。

 一番票を集めているのは美姫だ。『幼馴染がかわいいとかラブコメにしかないと思ってた』に爆笑した記憶がある。


 めんどくさくなるとどうでもいいことを考えてしまうのが悪い癖だ。あと先延ばし。夏休みの宿題なんて毎回美姫に泣きついてる。


 ということで先延ばし。美姫のことは一日おいておくことにした。建前は、今は話を冷静に聞いてもらえない。本音はめんどくさい、だ。美姫に説明がめんどくさいとかではなく、不毛な争いが嫌いなのだ。水掛け論とかね。だから帰って寝るわ。

案の定、飯作りに来てくれなかったし。


 次の日の朝。いつも迎えに来る美姫の姿はなく、「ひとりって味気ねぇな」なんて考えながら登校したのだが。なぜか女子が鬼の敵のような目で睨みつけてくる。ひとりじゃない。ほぼ全員だ。

 訳わからずホームルームで担任の中身のない話を聞き流しながら考えてみる。

 俺は鈍感系ラブコメ主人公ではないので、心当たりが一つ。


 美姫が誰かに相談した、だ。


 これはやばいと美姫のところに行ってみる。

「ごめんなさい。私、こんなつもりじゃなかったの……」

 俺より先に美姫が謝ってきた。

「いや、俺も先延ばしにしてたのが悪いから……」


「もうこの話はやめようぜ」

「うん!」

 相変わらずヒマワリのように眩しくて、最後は俺の大好きな笑顔だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る