序章【黎明篇】

第1話『西暦2022年・新日本神話概略』

 時に、西暦二〇一一年── 

 東京湾巨大生物上陸災害が発生。未曾有の激甚災害、ついに民衆党政権主要幹部は逃亡する。

 日本は滅亡するかと思われた……だが、荒垣健あらがきたける防衛大臣が若冠四二歳にして内閣総理大臣臨時代理に就任、『ヤマタノオロチ討伐作戦』を発動し、巨大生物を撃退した。

 決断力にあふれる荒垣政権に国民の期待が高まるものの、復興の道筋を立てると彼は潔く首相の座を退いた。

 自主憲政党と公民党は、これを好機と捉え民衆党から政権を奪還、阿部あべ内閣が発足する。


 後退するアメリカの軍事プレゼンスに、阿部政権は平和安全法制の成立、護衛艦『やまと』の建造をはじめ、国防力の強化を図った。

 この頃、荒垣を本部長とする、内閣府特定事案対策統括本部『特事対とくじたい』が発足。……特事対は後の異世界との交流を担うこととなる……


 ……二〇一五年。

 無人宇宙船『ベテルギウス』の暴走事故が発生する。外部からのハッキングにより関東地方へ降下しつつあった。

 日本国政府は新造護衛艦『やまと』の出撃を決断。

 レールガンにてベテルギウスを撃墜する。


 ……後に政府は、恐るべき事実を知ることとなる。

 これは火之神カグツチの、復讐の嚆矢に過ぎなかったのだ──


 そして、時は流れた……


   

 ──二〇二二年。

 突如、西ノ島に多数の人工物体が出現。

 精霊魔法の根幹『太陽因子』を日本と同じくする異世界『方舟』が、邪神『デューゴス』からの侵攻を逃れ転移したのだった。

 ……太陽因子を宿す先王アリスは崩れゆく世界から臣民を方舟に転移させ崩御。以来、方舟の精霊魔法は衰退しつつある……

 大公『バシス』は、日本国政府と日方友好条約を締結。

 異世界文明とのファーストコンタクトは成功した……かに見えた。


 日本神話の炎の破壊神、火之神が、先代異世界『箱庭』を滅ぼした邪神『デューゴス』に憑依し、日本国と方舟に迫りつつあった。


 日本はまだ、この事実を知らない──

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