20
モフモフ+モフモフ=??
モフモフ×2=??
あなたなら、この問いに何と答えますか?
私は……
『幸せです!!!』と、そう答えます!
……それがどうした?って?
吸い付くような上質な毛並みと癖になるモフモフ感……!
昨日、神が私の元に残して行ったカーバンクルは最高にモフモフな子でした!
という話です。……すみません。
寝るのが大好きな子なのか……はたまた体力を温存しているのか……。
カーバンクルは眠ったまま目覚めない。
お陰でこの子とは会話すらまだ出来ていなかった。
今日はこの子と一緒に図書館に行って調べ物を開始しようと思ったのだが……。
諦める事にする。寝ている理由が分からないのに起こすのは可哀想だ。
一歩前進かと思いきや……その場で足踏み状態である。
そこに神が関わっているだけにイライラも募るが……。
私一人がやきもきしても良い結果にはならないだろう。
さて。予定していた予定が無くなった今日は何をしようか……?
私は、ベットの上でスヤスヤと眠るカーバンクルをチラリと見た。
そっと頭を撫でると、嬉しそうに口角が上がった。
……可愛い。
はあ……モフモフは癒やされるー……。
私はカーバンクルの隣にそっと横になった。
カーバンクル……か。
カーバンクルのカーちゃん?
いやいやいや。なんて安易な。というか『オカン』感が強いな……。
カーバンクル……バンクルー……バンク……ルクンバ…………
あ!『ルーカ』!!ルーカはどうだろうか?!
本人の了承が無ければ実際には呼べないが、なかなか良いのではないだろうか?
うん!この子が起きたら聞いてみよう!!
ふむ……。
このままここでルーカとまったりゴロゴロしながらお昼寝をするのも良いが……。
何か落ち着かないな。
ミーシャ姫の様子を見に行く?
あ!リーリアさんの出産もそろそろだよね!
それともアインさんとドライさんのお仕置きに行く?
シーカの所にお菓子を貰いに行くのもありだな。
よし!私はそっとベットから起き上がった。
私が向かった先は…………。
*****
「あ、ジル発見!」
この人の所だった。
「どうした?」
騎士達に混じって汗を流していたらしいジルフォードは手元のタオルで汗を拭きながら尋ねてきた。
……特に深い理由はない。
何となく彼の顔が見たくなったのだ。
朝昼晩とほとんど顔を合わせているはずなのに不思議ではあるが……。
弟の様な良き話し相手にただ会いたくなった。それだけだ。
「えーと。何となく?」
自分で言っていて思わず苦笑いになってしまった。
「何だそれは」
ジルは一瞬だけ瞳を丸くしたが、爽やかに笑った。
「あ……ミーガルド様」
「ミーガルド様……こんにちは」
おっと。飛んで火に入る夏の虫の如くアインさんとドライさんが現れた。
そうだよねー。騎士だもんここに居るよねー?
よっしゃ!一石二鳥!!
「唯。彼等がどうかしたのか?」
「あー……。ジルには話してなかったか。実は……」
「ミーガルド様!!」
「王子の前で勘弁して下さい!!」
私の言葉を焦った様に遮った二人。
「どうして話したら駄目なの?」
私は首を傾げた。
「だって、王子ですよ!?」
「いや……それは分かっているよ」
「王子ですよ!?」
「いや、だから分かっているって!」
「いえ、全然分かっていません!!」
「……どういう事?」
近い……近いから!!
相変わらずというか……何というか。
ジルが王子なのはこの国の者なら誰でも分かるじゃないか。
何を言っているのだ。
キョトン顔+怪訝な顔をした私をジルから見えないようにクルリと反転させた二人は、コソコソと私達にだけ聞こえる大きさの声で話し始めた。
「ミーガルド様。ジルフォード殿下は容姿の整った『王子様』ですよ」
……だから、そんなに何回も『王子』なんて言わなくても…………
って、そうか。
「そうです」
納得の顔になった私に気付いたアインさんとドライさんが大きく頷く。
ジルは顔が良い上に、この国の王子様……つまりはモテないわけがないのだ。
女性ならば誰しもがジルと結婚したいと思っている。
ジルからアピールしなくてもよりどりみどり。ハーレムだって作れるだろう。
そんなジルには知られたくないという、ちっぽけなプライドだ。
「なるほど。なるほど」
うんうんと大きく頷くと
「そうなんですよ!」
「モテ男の殿下に相談をしても無意味なのですよ!!」
まるで私の頷きに賛同するかの様に二人が笑った。
「ジルー。この二人にモテる秘訣を教えてあげてー」
クルリと振り返った私はジルにそう告げた。
そんなちっぽけなプライドなんぞへし折ってやるわ!!
「ミーガルド様!裏切りましたね!?」
「何て事を……!!」
アインさんとドライさんが非難の声をあげる。
「だまらっしゃい!」
私は二人を一喝した。
「お二人はこの一ヶ月間何をしていたのですか?私からの課題はどうなりました?……筋肉が恋人だったと噂で聞きましたが?」
「くっそー!ツヴァイの奴だな……!!」
「あいつ……自分に好きな相手が出来たからって!!」
「ツヴァイさんを非難するのは筋違いですよ?彼はきちんと課題をクリアしただけなのですから。それに比べて……」
私はわざと大きな大きな溜息を吐いた。
それから……
「私は良いですよ?アインさんとドライさんが一生独身でも」
満面の笑みを浮かべながらニッコリと笑った。
「お二人は真剣に結婚したいと思っていたわけじゃなかったんですよね。それなら納得です。無理強いしようとした私の方が……悪かったです。すみませんでした」
ペコリと素直に頭を下げる。
……『押して駄目なら引いてみる』作戦に私は切り替えた。
人の良い二人ならば、これに釣られないはずがない。
因みに、先程ジルに暴露したのもお仕置きの一環である。
「「ミ、ミーガルド様!」」
ほらね?食い付いてきた。
私は内心でほくそ笑んだ。
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