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「まあ、お兄様ったら……」
クスクスと可愛らしく笑うミーシャ姫。
「笑い事じゃないんですよ!?」
私は大きな声でそう言いながら、目の前のテーブルをバンバンと叩いた。
日課となったミーシャ姫の浄化と回復を行いながら、あの朝チュン事件(ジルの悪戯)を目の前の12歳の少女に暴露した。
「でも、お兄様の気持ちは分かりますわ。唯様、お兄様は年下とはいえ異性なのですからね?安心しきるのは良くないですわよ」
「うっ……」
一回り以上も下の少女にやんわりと嗜められるアラサーの聖獣(私)……。
あの時は…弟の様であり、男友達の様なジルに不覚にもときめいてしまった。
鍛え上げられた六つに分かれた腹筋……。
ジルは着痩せするタイプみたいだ。細身のスッとした身体つきからは想像出来なかった。所謂、細マッチョ系。
因みに私は腕フェチだ。プニプニで柔らかな二の腕も好きだが、適度に筋肉の付いた二の腕も捨てがたい。
ジルは、腕フェチな私の理想をそのまま体現した様な腕をしていた。
って……私は痴女か!!
聖獣が痴女として捕まったら大問題である。
……気を付けよう。目元に修正が入った聖獣の絵なんて洒落にもならない。
「それよりも、体調はどうかな?」
「唯様のお陰で絶好調ですわ」
微笑むミーシャ姫の顔色は、ほんのり赤みがさしており元気そうに見える。
地道な特訓の成果も出ていて、一人でもゆっくりならよろけずに歩ける様になったそうだ。
……本当に頑張り屋さんの偉い子だ。
「浄化はまだ続けるけど……明日、ミーシャ姫の体力を全回復させてみようね」
「………明日ですか?」
「うん。走れる様になるよ」
「えっ……、本当ですか!?」
パーっと表情を明るくさせるミーシャ姫。
身体と心のバランスが整って来た今なら、もう大丈夫だろう。
「で・も・!無理は駄目だからね?」
「はい、分かりました!」
心の底から嬉しそうな笑みを浮かべるミーシャ姫を見ていると……救われる気がする。
こうして頼って貰える事で、この世界での私の存在が認められたと思えるから……。
浄化を続けなければ、また穢れが身の内に溜まり…ミーシャ姫の命は危うくなるだろう。私はソレを利用しているのだ。
タヨラレタイ……。ワタシヲミテ……。ドウシテワタシガコンナメニ!!
私の心の中の蓋を開けてみれば、そんな黒い感情が蠢いているのだ……。
私はそんな心に鍵をかけた。
決して外に出て来ない様に……。誰にも知られない様に……。
そして、そんな罪悪感から逃れる為にこんな事を考えた。
『神子達の身体に穢れが溜まらない様にする方法は無いのだろうか?』と。
この世界の穢れを身の内に溜めるならば、
チートのお陰で、穢れが溜まっても自分で浄化が出来るだろうし。
一度、神殿に行ってみよう!
もしかしたら何か手がかりがあるかもしれない。
そうと決まれば、即行動だ!!
「ちょっと神殿に行って来るよ!」
ソファーの上からピョンと飛び降りて、扉の所までパタパタと走る。
「……え?唯様!?」
「じゃあ、また後でね!」
突然の私の行動に驚いた顔をしているミーシャ姫を置いて、私は大きくバイバイと手を振りながらミーシャ姫の部屋から飛び出した。
……結論から言えば、私はこの日、神殿に辿り着く事が出来なかった。
何故ならば……。
「きゃー!!フワフワッ!!毛並みも最高ー!」
「いやーん。ずっと撫でていたぁーい!」
「私にも抱かせてよぉー!」
色とりどりのドレスを来た、お
……どうしてこうなった。
私は自らの身体を弄ばれながら、宙を仰いだ。
******
神殿に向かっていた私は、その途中にリーリアさんの所に寄って、双子ちゃん達の様子を見させてもらった。
聖獣の手は万能です!エコーにもなります!!
その結果、母子共に健康そのもので何にも異常なし。
『明日も来るので絶対に無理しないで下さいね』
と言って、リーリアさんと別れたその後……。
ふわっと立ち込めた甘い香りにフラフラと釣られたのがいけなかった。
「んまぁ!!迷子の可愛いモフモフちゃんよー!」
一人の筋肉ムキムキのお
……モフ?!
これは………まずいかも………。
回れ右をして逃げようとした私の小さな身体をガッシリと抱き上げ、その堅いお胸にホールドする逞しい腕……。
あぁぁぁぁぁぁ!!
逃げられなかったぁぁぁぁぁ!!
……そして、現在に至る。
頭を撫でられ、頬擦りされ、肉球をプニプニされ…etc.
え?状況が分からない?
それは私にも分からないのだよ……。
どうしてこうなった。
甘い匂いを辿っていたら、この部屋に着いた。
入り口で三人のお
……そんな状況だ。
ここはどこ?
このお
ていうか………そろそろ離して欲しいんだけど!
愛らしいモフモフの姿をしていても、中身は妙齢の女性なのだ!!
許可無く身体に触る子は、聖獣様が許しません!!
「皆さん、正座!!」
はい。チート力を使って、強制的に正座をさせました。
そして同じくチート力で作った眼鏡をかけ、右手には指示棒を出し、ペチペチと自分の左手の平を叩く。
指示棒って、学校の先生が黒板とか指す時によく使うあの棒の事だよ!
「さて、この状況を説明してもらいましょうか?」
女教師の如く仕草で、眼鏡をクイッと上げながら、三人のお
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