第232話 今日の言葉

透明度の高い水より

藻も魚もいる深緑の湖沼


■解説■━━━━━━━━━━━━


中国四川省のユネスコ世界遺産

九寨溝(きゅうさいこう)には、

『奇跡のブルー』の呼び名も高い

『五光海』という池がある。


驚異の透明度は120%を誇り、

水底に沈む樹木の枝さえ

透けて見えるのだという。


まるで、

コバルトブルーの。


もしくは、

エメラルドグリーンの。


透き通るような絵具を

水面いっぱいに拡げたような。


自然に賜いし奇跡の絶景。


だがしかし。

そこには住むのは

高山冷水魚ただ一種なのだという。


あまりにも澄み渡り、

あまりにも冷たいこの水は、

生命の誕生には適さなかった。


美しさにおいて

唯一無二な存在は、

その姿だけを残した。



人の世でもきっとそう。


誰の代わりにもならない。

なれない。


“ひとつこと”を

不乱に打ち込む人ならば。


削ぎすまし、

誰がために、

己がために生きればいい。


人は、その姿を良しとし、

いつか弧人の価値に気づくだろう。



でももし、

あなたが迷い、傷つくのなら。


少し濁った水をたたえるといい。


池の底には藻が茂り、

やがて水温は上昇す。


温かな水と餌を求め、

新しい生命がやってくる。


池の上に顔を出す睡蓮の葉には、

飛び餌を求める蛙の姿。


また、池面に浮かぶ睡蓮の花姿は、

通りかかる者すべてをなぐさめる。


澄んだ水より

深緑の湖沼。


否、どちらを選んでも構わない。


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今日も1日、すこやかにおすごしください

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