怪異。 十六夜姫(いざよいひめ)もののけ集めの章
一葉(いちよう)
第1話 異変の始まり
体育館へ向かっているさなか何故か背中に頬を膨らませた座敷童が乗っかっている、、、違いました、
少し小柄で私との身長差は約30センチ私がデカすぎの170センチ、制服を着ていなかったら親子に、、、見えないか、全然似ていない。
ともかく可愛い、色白と言えなくもないけど大抵お風呂上りほどではないがほんのりピンク(あー)、顔の輪郭は基本野球のベースだけど下細りで尖った顎、目がぱっちり(うー)細い鼻に日本人形の様な小さなけれどぷくっと赤い唇(ひー)
(あー、うー、ひー、は羨ましーの表現でございます)
いっぽうこの私ひょろっと背が高く色白だけど「大丈夫?」と言われる血色の悪い顔色、ボーとした様に見えるのは一重の
少し前まではボサボサの髪のせいもあり柳の木の下にひっそりと立って居るのが一番似合っていた、、、ヒカル以外誰からも距離を置かれるこの私。
ただヒカルにしても入学当初は全く目立たなかった、何故か人の影に隠れて目立たない様にひたすら目立たない様にしていた彼女が気になってある日の放課後二人きりになった時に言ってみた。
「日輪さんて可愛いのに髪で顔が隠れて勿体無い少し髪を切れば」
「か、可愛いなんてと、とんでもございません」
「髪を切りたくなかったら、、、」
私は髪留めなんて洒落た物を持っていない、筆箱に入れていたカラフルなクリップの中から黄色を取って来る。
「この辺を留めてみたら」
と耳の少し上で髪を留めてみた。
「うん可愛い可愛い、惚れちゃいそう」
と余計な事まで言ってしまった私。
まあこの一言で私たちの運命の歯車が噛み合った、のかな。
今まで目立たない様に目立たない様に人の影に隠れてばかりいたこの子があの日から私に近づいてきて少しだけにっこり笑う。
本人には言わないけどめっちゃ可愛い、しかも私一人占め(そうよこの子の笑顔は私だけのものよ)
クラスの子は私もだけどこの
喜ぶ顔も意地悪して泣く顔も私だけのもの。
その日は何だかぱっとしない気分だった、放課後小動物の様に纏わりつくヒカル。
可愛いだけど苛めたい。
「ヒカル今からいじめるから今日は泣いて帰りなさい」
乱暴に髪の毛を掴み用意しておいた裁縫用のハサミで前髪を適当にバッサリ。
唖然とするヒカル、私の手に握られた髪の束を見て立ったまま硬直し目に涙を溜めた。
「泣きなさい泣かないともっとバッサリ切るわよ」
鋏を向けると下を向いて涙を一滴だけ床に落とした。
適当にきった前髪は眉の上で10度の角度で左上がりになっている。
でも髪で隠していた目が露になって暗い表情が消えた、泣いているのに。
仕方ない少しだけ修正。
「ダメね泣いた顔が見たいのもっと泣くのよ」
いじめられて髪を切られた感を残すため適当にサクサクッと角度が緩くなるように少しだけカット。
「これから毎日よ、週末にはどんなへんてこな頭になってるか楽しみ」
ちょっとかわいそうなのでハグして、
「ヒカルは私のものだから私の気に入る様にする、逃げたり逆らったら
次の日の放課後は諦めた表情だった、その次の日から少しづつ笑顔が戻り金曜日には大泣きさせてあげた。
眉の上2センチで切りそろえた前髪、耳がくっきり見えるサイド、自然なショートの後ろ髪。
(しまった可愛すぎる、私だけのヒカルなのに)
鏡の所へ連れて行ってカットした顔とご対面、驚きの顔が崩れ泣き顔に振り返って私に抱き着く。
「ばか、
と言っても悲しんでいるのではないきっと見た事もない自分の可愛い顔に驚いている筈だ髪を切った私も。
そして次の週事件は起こった。
私が見ていないときに可愛く変身したヒカルを妬んだ上級生の女子に連れていかれた。
そしてお金が無いので制服が買えなく姉が着ていた昔のセーラー服(許可はされている)と知らない上級生に特製のセーラー服と勘違いされボロボロの姿で帰って来た。
当然泣きながら。
仕返しに行くといったが相手の事を頑として言わないのでとりあえず先生には言ったけど、それでもヒカルは何も言わないので先生も対応のしようが無かった。
私は学校内の寮生なので親しくしている寮母さんからこんな事を言われた。
「制服を汚され困ってる子がいるんだって、要らなくなった制服が何着か押し入れに置いてあるのその子に着てもらえないかと思って」
寮母さんと仲良くしておくものだ、こんなことが有るなんて。
次の日の朝さっそくヒカルを寮に連れて行った、最近は朝早く来るようになってたから時間は十分。
そして試着して制服を頂いたらまた涙々、何とか教室まで連れて行ったけどその後はもう前より私にべったりの子になってしまった。
可愛くってもういじめたりなんかしない。
ヒカルは走るのが得意なんだけどマット運動や跳び箱は苦手、次の授業は体育で跳び箱なのでぷーとむくれている。
「跳び箱なんて誰が考えたのでございましょう、あんなもの飛び越えてしまえばよろしいのです」
「だから跳び箱なんだけど」
「手など付かなくていいのです」
「七段飛び越えられるの」
「高さ一メートル以上の障害物走など有りません、跳び箱も六段までと決まったのです」
「いつから」
「たった今で御座います」
「先生に言ってみれば」
「もちろんで御座います」
体育館に入ると休憩時間なのに男子達が先生にコキ使われ、跳び箱を倉庫から運び出していた。(ごくろうbyわたし)
「七段目はどうした」
「ありません」
「無いって事はないだろう倉庫の中良く探してみろ」
先生たちは倉庫の中へ入って行く。
私の背中では座敷童が(たびたびすいません)いやヒカルが飛び跳ねている。
ガッツポーズの連続技をやっているらしい。
時折背中に当たる柔らかい物が心地よい。(「ヒカルは私のものよ」と言いたくてたまらない)でも言葉は裏腹。
「降りなさいよ」
「あと三回勝利の踊りでございます」
「背中で踊らないでよ」
「勝利の舞は勝った事を皆に知らせなければならないのです高い所でなければなりません、はい降ろして下さいませ」
「やれやれ」
結局跳び箱は二組とも七段目が見つからず、ヒカルはハードル走の様に飛び越え、私は普通プラス先生の「集合」の時に前転跳びをやって終わった、この頃やけに目立っているのでこっそりと。
翌日の体育の授業の時には二組とも七段揃っていたそうだ。
これは誰かいや何モノかのいたずらではないのかな。
この跳び箱事件は直ぐに忘れ去られた、別の事が話題になったからだ。
でもこの跳び箱事件を解決しなくて良かったんだろうか。
どこの学校でも定番中の定番! 誰も居ない音楽室から聞こえるピアノの音、朝からこの噂でもちきりだった。(私に許可とりなさい!怪しいモノ)
って言うほどの事も無いか、「一年月組(普通に言えば一組)には毎日幽霊がでる」と言われている私なのだから、いやいや仲間が増えるのはとても良い事なのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます