閑話 3.14 SS

医師ドクター、これ、なんですか?」

 私は、机に置かれたつつみを指さした。

「今日は、三月十四日だから」

「……私、バレンタイン、差し上げてませんよ」

 だから受け取れない、と、つき返そうすると「ダメダメ」と、デュークは首を振る。

「洋子くんのプライスレスな愛はきちんともらっているし、これはそう言う意味じゃないから、遠慮しなくていい」

「……何か企んでます?」

「別に。とりあえず、開けるだけ、開けてよ。絶対、洋子くん好みだから」

 自信たっぷりなデュークに促され、私はしぶしぶ、つつみを開ける。

 和菓子だ。

 もなかの真ん中にたっぷりと小豆の入った、和菓子だ。

「こ、これは……」

 驚きを隠せない私に、デュークが自信たっぷりに微笑む。

「そう。切腹最中だよ。今日は、切腹最中の日だからね」

 三月十四日は、浅野内匠頭が腹を切ったことで有名な日である。

 切腹最中の日とは、それにちなんで東京の和菓子店が、制定した記念日らしい。

「……どう? 気にいってくれた?」

 にこにことデュークが笑う。

お茶の時間ティータイムにしましょう」

「うん。そう言うと思った」

 なんとなく、見透かされているのが気に入らないが、美味しいお菓子に罪はない。

 そもそも、忠臣蔵好きとして、このお菓子を食べないわけにはいかない。

 私は、立ち上がって、お茶の用意を始めたのだった。

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<厨二病専門医>デューク・藤原 秋月忍 @kotatumuri-akituki

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