恋人達

彼女はアパートの窓の外から

キッチンの彼をのぞ

大根は 全てきれいに桂剥かつらむきにされ

鍋の中で ことこと音を立てる


見ると

彼は一向に調味料を入れない

彼女は心の中で何度も

さ・し・す・せ・そ を

唱える


突然、彼は鍋の中の大根を一つ鷲掴わしづかみにし

ぎゅっとてのひらで握り潰し

それをシンクに投げつけた


また、手掴みし

また投げつける


彼女は怯える

でも その場を立ち去ることができない

ただじっと見守る


彼女はつぶされた大根の痛みを背負い

彼は作業に集中する


二つの魂。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る