〜夢〜
夢の中では現実ではあり得ないことでもなぜか当然のことのように受け入れてしまう。
疑問もなく過ごしたあと目が覚めて
「あれ?なんであんな風に思ってたんだろう?」といった感想を持つことはままある。
私もその日の夢には疑問もなかった。
私は実家の縁側で寝転がっていた。
心地の良い昼下がり。日差しも眩しくない程度に当たっていた。
日頃の疲れがスッと抜けるように肩から力が抜けていく。
ああ、気持ちいいな。
目を閉じこのまま寝てもいいし寝なくてもいいというどこか余裕に満ちた感覚を楽しみながらうとうとしていた。
ダッダッダッダ、バサッ
駆け足な足音ともに急にお腹に布が被さる。
目を開けるまでもない、娘が私に毛布をかけてくれたのだ。
もう私の意識は半分寝ていたのだろう、毛布についてはリアクションを取らずそのままいた。
すると、また
ダッダッダッダ
という足音が聞こえる。今度はさっきよりも小さい。気づかれないようにしているようだった。
ギュッ
娘は私のお腹の上に乗って抱きついてきた。
まだ小さい子どもの体重だ、苦しくもない。
むしろ幸せな気持ちに浸っていた。
娘は完全に私が寝ていると思ったのだろう。
毛布の中に潜り込んでくる。
私の腕の外側から少し力を込めて再度抱きしめてくる。
私は抱きしめ返そうと思ったがこれでは私は手が動かない。
可愛いもんだなと思っていよいよ寝ようと思っていた矢先
しだいに私を抱き締める娘の手にはどんどん力が入っていく、
疑問を持ったのはこのあたりからだ。
あれ、こんなに力強いものなのか?
さらには息苦しくなるほどまで抱き締められるが力は弱まることはない。
痛みを覚えるまでになり私はこれは娘なんかじゃないと気づいた。
そうわかったとき急に恐怖心がやってきた。
なんだ、誰だ、誰が私に抱きついているんだ、
目を開けてお腹付近を見るが毛布を被った"なにか"がすごい力で締めつけてくる。
振りほどくことは出来ない、
その毛布の中が怖くて怖くてたまらなくなったとき
バッと目が覚めた。
そこは私の寝室でいつものベッドの上だった。
少し息切れした。
とてつもなく汗をかいてはいたが毛布は足まですっぽり被っていた。
興奮が冷めてしだいに頭が冴えてくる。
嫌な夢を見た。と同時になぜあんな夢を見たのかとも思った。
暗い寝室でまたさっきの夢を思い返してまた怖くなる。
毛布の中の正体以前に、私に娘なんていない。
なぜ当然のようにいもしない娘の存在を許容していたのか。
なぜそこには疑問がなかったのだろうか。
やはり夢だからか。
変な夢を見たものだ。
そんなことを天井を見ながら考えていた瞬間だった。
ズッ
思いっきり足先のほうに引きづられた。
数センチしか動いてはいないが慌てて起き上がり毛布をめくる。
しかし、そこにはなにもいなかった。
いつもどおりのベッド。
見渡すがなにも変わらない1人暮らしの寝室。
ただ確実に誰かに足首を持たれた感覚だけはあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます