第77話:逃亡戦線

「一度殺すと決めたやつは、絶対に死を見届けるまで殺欲が止まねぇっ!!!」

「リヌリラ……! 早く空圧の実を集めてっ……!!!」


 ガギィィィィン!!!!

 ゴギィィィィィィィィン!!!!!!!


「ふん、包丁なんて柔な道具使っていると、俺の爪で簡単に削れちまうぞ」

「出店で一番安い包丁を殺気買ったばかりなのですが……まだ削りきることは出来ないんですかねぇ……?」

「ちっ……クズが」

「黙れ、ゴミが」


 ガァァァァァァァン!!!!!!!!!

 ガギィィィィィィィィィン!!!!!!!


「…………」


 ルーミルがハナを露骨に煽っているおかげで、今は私に対する殺意が逸れている。

 この僅かな一瞬で……


 バシュッ……!


「空圧の実で素早く移動して、空圧の実が生えている木へと移動する。そしてたくさん集めて脱出する」


 ルーミルは三十粒ほどあれば、身体を数十メートルと吹き飛ばすことができ、ハナから完全に逃れることが出来ると言った。

 ……もちろん、生身の身体を吹き飛ばすことになるので、外傷内傷の重傷化は逃れられないだろうけど。


「……っと。大体、一つの枝に一個の実が生えている感じね。合計で一つの木から六粒程度集められるってとこ」


 先ほどハナが大地震を起こして倒れた木々を探している。

 完全に瓦礫に埋もれてしまった木もあるので、全てを回れるわけでもないが、それでも効率よく空圧の実を集められそうなイメージだ。


「お前の内蔵ぶっつぶぅぅぅぅす!!!!」「……っち、ハナが」


 ルーミルの攻撃を逃れたハナが、私目がけて爪を向けてくる。

 今殺そうとしているのは、ルーミルではなくて私。

 少しでも隙が生まれようものなら、ルーミルから私へと攻撃の目標を変えてくる。


「リヌリラ、防衛を!」

「分かってる。超循環素材……空圧の実を中指に注ぐ」

「ひゃはははははは!!!!!!!!!」


 ハナが爪を振り下ろす直前に。


「弾かれろ! フィンガーシールド!」

「……っ!!」


 ガァァァァァァァァァァン!!!!!!


「…………っってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「良いカウンターです、リヌリラ。後は私の任せて下さい」


 フィンガーシールドに弾かれたハナを追いかけ、ルーミルは空中かかと落としを入れる。


 ガァァァァァァン!!!

 ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!


「リヌリラ、空圧の実を集めて! 逃げてばかりだと、防御の為だけに空圧の実を使い果たしてしまいます!」

「わ、分かった……」


 ハナから逃げ切るために、大量の空圧の実を集める。

 空圧の実を素早く集める為には、空圧の実を使って移動する必要がある。

 そして、ハナが私に攻撃をしてきた場合、それを迎撃するために、空圧の実ではじき返す。


 流動的に空圧の実を運用しつつ、目標値までに達成する必要がある。


 しゅぅぅぅぅぅ……


「無駄だ。刺された左目の修復が、あと数分で終われば、お前は完全に逃げ切れない」

「リヌリラ……あと四分。その間に脱出を……! 私も長くは持ちません」


 状況は整理し尽くされただろうか。

 あとは、私がいかに効率よく脱出できるか。

 それにかかっていると言えよう。


 …………

 …………

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