第76話:空圧の実
「この実を超循環で使うと、その場で風圧を発生させることが出来ます」
「風圧……」
「その場で空気爆発を発生させる。アメリカで希に発生するトルネードのようなものです」
トルネードは、多くの堅牢な建物を次々と破壊していく自然災害。
「戦いの中で少ししか集められませんでしたが、あと三十粒もあれば、超循環の力で巨大な空気爆発を発生させることが出来ます」
「その空気爆発でどうしろって?」
「自分を大砲の砲弾だと思って下さい……あとは、分かりますよね?」
「ま、まさか、自らを爆発で吹き飛ばして、イデンシゲートの内側へ移動しろと」
「ハナから瞬間的に距離を取るにはこれしかありません。選択肢を選ぶ猶予はないのです」
ルーミルは平然と選択肢を提案するが。
「生身の人間が、トルネード級の風圧で飛ばされて、数十メートル飛ばされて地面に叩きつけられるって……」
「内臓破裂、全身骨折を覚悟するレベルで重傷を負うでしょう。だけど、超循環士が死ぬことはありません。仲間たちがあなたを救いに来てくれるでしょうし、私もリヌリラが避難できたら、すぐに撤退します」
「そ、その……ハナのことは」
「今日は悪魔の機嫌が悪い日です。適当にあしらってしまうのが一番です」
ガァァァァァァァァンッ!!!!!!!!!!!!!!!!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ? なぁぁぁぁぁに俺との殺し合い放棄しようとしているのかなぁぁぁぁ? 今日は内蔵バラバラにするまで逃がさねえって約束だろうがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「息がくせえな。喉潰してやろうか? ん?」
ルーミルがハナに対して殺欲の煽り全開で迎え撃っている。
いつもの優しい言葉遣いは一切無く、ただ殺しだけを行おうとする様。
それは、ハナと同じくらいに恐怖を感じるような恐ろしい形相だった。
「さぁ、リヌリラ。残り三十粒。木に実っているアレを探して逃げて下さいっ!! こいつは私が相手していますから!」
「ひひひひひひ! 隙を見て殺しにかかっちゃう! こいつが死ねば、テメエも絶望する顔になるってもんだろ?」
すっ……
「ぐっ……! って、てめえ……」
「お前の利き目は左だったな? 包丁で刺されて痛かったか?」
「くくく……ハンデか? いいぞ。期待させてからの絶望の殺しっていうのは、最高にクールだからな」
目から血を流しながらハナは笑みを浮かべている。
同時に、目玉からは湯を沸かしたように大量の煙がもくもくと湧き上がっている。
「……ハナは他の悪魔と違って、身体の損傷を少しずつ回復させることが出来ます。今刺した右目も、五分とあれば完治するでしょう」
「そ、そんな……」
チートなんて言うレベルでは無い。
ハナという存在に、絶望しか感じない追加条件だ。
「だけど、逃げるだけに限れば好条件……リヌリラは、空圧の実を集めやすくなったと言えるでしょう」
「でも、ハナは私を殺しにかかってくる」
「その時は、空圧の実を数粒使ってでも、ハナを弾き飛ばして下さい。薬指のフィンガーシールドを使えば、ハナの攻撃を風圧をカウンターしてくれるでしょう」
空圧の実を集めながら、ハナの攻撃は避けていく。
空圧の実は木々に多めに生えている。
倒れた木々を探しながら、上手に集められそうだ。
「たらたら走っていては、ハナに捕まってしまいますので、移動も常に空圧の実を一粒ずつ使って移動して下さい。素材の力を純粋に発動させる小指のフィンガーパワーを使って、目先の危険を回避することが最優先です」
「わ、分かった……」
ルーミルは言うと、固めが潰れたハナ目がけて包丁を突き刺していく。
ハナもそれに爪で迎撃し、危害が加わることを回避している。
――私に強い殺意を向けながら。
なぜこのような状況になったのか。
色々と考えておきたいところだけど、今はひとまず逃げることだけに専念を。
逃げる――
それだけに力を。
…………
…………
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