第33話:メルボルン開拓戦06
状況を簡単に説明する。
悪魔のパンチによる衝撃と土煙で壺付近の状況がよく見えなかったのだけれども、土煙が晴れ視界が良好になったところで、細かな状況が見えてきた。
悪魔は右手の拳を振り下ろしている。
地面にそれをおいているのか。
いや、残念ながら地面の方まで届いていない。
届かせられることができなかった。
なぜか。
それは――
「衝撃を跳ね返す反射板。敵の攻撃が強ければ強いほど、強烈なカウンターを繰り出せる素材。守りにも攻撃にも使えるスグレモノ」
「る、ルーミル」
拳の下にはルーミルがいる。
右手を掲げ、透明に反射する超循環の力を駆使して、悪魔の攻撃を守り抜いたのだ。
地面においてあるタコ壺は、ルーミルが守り抜いたおかげで、一切の無傷である。
地面に亀裂が入ったのは、ルーミルが拳を抑えた際に受け流した衝撃が地面に流れた影響なのだろう。
痛くないのか気になるところだが、平然としている辺り、何か超循環の素材を使ってカバーしているのだろう。
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!!!!!」
悪魔は悲鳴を殺すように苦痛の声を上げながら、右手を抑えている。
ルーミルの言う、攻撃を反射するという能力を受けてしまったのなら、その激痛は相当なものになるだろう。
人なら普通に骨折しそう。粉砕骨折で、完治に時間が掛かるほう。
「体を鍛える悪魔は、自分の力を過信する。少し煽れば脳筋攻撃。私の相手ではありませんね」
「き、貴様……」
ルーミルは悪魔を更に煽って攻撃を仕掛けてもらおうと仕向ける。
しかし、自慢の右手は変な方向に曲がり、ぐちゃぐちゃになっているので、もう使うことはできないだろう。
冷徹な目で見下すルーミルの風格は、まるで悪魔のような風貌だ。
「リヌリラ、この悪魔を四分で殺してみてください。右手を潰して難易度を下げておきました。素のままだとレベルが上ってしまいますからね」
「そ、その……」
激痛と怒りに感情をむき出している悪魔を見てしまうと、どうにもビビリを感じてしまう。
「大丈夫、もし失敗しても、私はこいつを五秒で殺せます。だから、安心して訓練してください」
「ご、五秒って……」
どんな力を駆使すれば、あんなでかい悪魔を数秒で殺せるのだろうか。
ルーミルの潜在的力に疑問と恐怖を感じつつも、今は自身が強くなることが先決だ。
最終的には、ルーミルよりも強くならなければいけない。
ならせめて、ミッションとして課された四分という時間の中で、あいつを始末することに専念しよう。
「……俺の右手の恨みは、貴様にぶつければ良いのか?」
デモディアは真っ赤な目を睨みつかせて私を見る。
既に怒りはピークを迎え、右手のハンデがあったとしても、私にとっては不利益な状況だ。
「やっぱり殺す。痛めつけて殺す。爪のノコギリでゆっくりと首を切り落として絶望を与えてやる……」
「うぇ、えげつない……」
生かして殺してを繰り返し、超循環士が銅像化するまで拷問するという話だけある。
本能の部分では、やはり猟奇的思考が悪魔にとっての基本なのだろう。
恐ろしいったらありゃしない。
「私は狩人。私も動物はすぐに殺してあげる主義。苦しむのは辛いから、脳か心臓を確実に突いて殺すのが礼儀だと思ってる」
「動物扱いすると、後で後悔することになるぞ」
「私はお前を知った。煽れば思考が混乱する。だから言うぞ」
私は超循環の力で生成した藻を弾丸として生成し、それをデモディアの右手に当てて。
「ば~~~か」
と、デモディアを煽った。
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