第25話:メルボルン拡張計画(後半)
「作戦や人員ごとに状況は変動しますから、常に最良の選択ができるよう、タコ壺の大きさを分けています」
「そのタコ壺は一体誰が制作をしているの?」
「とある研究員たちが作っています。研究員がタコ壺を制作し、超循環士がタコ壺の中に力を注ぎ込み完成させます」
「イデンシのタコ壺って手作りなんだね。じゃあ、あまり大量生産できないでしょ?」
「ええ……あまり作戦の失敗を繰り返すのは私たちにとっては不利益。長い目で見れば、研究員や私たちが生涯に生産できるタコ壺の数も限られますし」
作戦を行うなら確実にということか。
考えさせられるな。
「いずれの悪魔も私たちのエリア拡張に対して優先的に妨害を仕掛けてきます。中には、普段見かけないような強力な悪魔も」
「……ということは」
「ハナが来る可能性もゼロではない」
「…………」
この時代のハナはどんな顔をしているんだろう。
昔みたいに、ニコニコしながら人を殺しているのだろうか。
それとも……
「少なくともハナが来てしまえば作戦は中断。彼を相手にしたところで、こちらの戦力が削がれるだけ。見つけたら即座にタコ壺を見放し撤退してください」
「……ハナは今どこにいるんだろう?」
「さぁ、彼は随分と気まぐれです。私たちの開拓に興味を示さないこともあれば、気晴らしに人を殺しに来ることもあります」
「それって、開拓の際に随分と計画を立てにくくない?」
「全くです。半年かけて練った作戦がパーにされたときには、家にあった酒が全部無くなりましたよ」
といいつつ、今の思い出しイライラでルーミルはテーブルに残っていたお酒を取ろうとするが、それを静かに私が阻止する。
先程の悲劇の第二ラウンドを、真面目な話をしている最中に引き起こすものでもない。
「私は、その開拓戦というのを通じて強くなれということだよね?」
「一度、命を狙われるという体験をした方が良いです。自身への殺気は感覚でしか覚えられません」
あまり覚えたくはない感覚だろうが、最終的にハナを止めるには必要になるステータスだろう。
少なくともルーミルより強くならなければ、スタートラインには立てない。
「まあ、もし悪魔に殺されかかったとしても、私がいい感じに始末をしておきますので、安心して訓練に励んてください」
「……ああ、まあ。どうも」
少なくとも完全に殺される心配はない安心感を感じるが、ルーミルの悪魔に対する殺意力に不安を感じるなんとも絶妙な心地。
しかし、私には引き下がるという選択肢がなくなった以上、この状況を正面から受け止められるだけの度量を持ち合わせなくてはいけない。
「やるか……」
習うより慣れろ、とりあえず行けばわかる。
それに、スースーとするスカートに慣れなくてはいけないという微妙な悩みも解決しないといけないからね。
ただ、悪魔と戦うには一つ準備が必要なことがある。
「ルーミル」
「……はい、何でしょう?」
「刃物を取り扱うお店を紹介してほしいんだけど」
……
……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます